国民健康保険は、確定申告をすることで調整することができます。制度や仕組みを理解し、正しく支払いをしましょう。
目次
確定申告での国民健康保険の扱い
控除を受けられる期間
確定申告をすることで、前年分の1月1日から12月31日の、場合によってはそれ以前の数年分を遡っても控除を受けることができます。対して年末調整の場合は、「その年の」1月1日から12月31日が適応されるという違いがあります。
確定申告は一年中行えるわけではなく、原則は2月中旬〜3月中旬の間に税務署で行います。この期間を過ぎた場合は「期限後申告」という扱いになります。期限後申告になったことにより税金が払い足りなかった場合は、延滞税などが上乗せされることがあります。(払いすぎていた税金を還付する分に関しては、そのような額は発生しません。)
確定申告が必要な場合
一般的に、「確定申告をすると税金の面で得をする」というイメージが広まっていますが、本来、確定申告は「お得な節税法」ではなく、給与を受け取っている人の全員に「義務づけられているもの」です。しかし、そのうち多くの人は所属先の担当職員の年末調整によって、代行してもらう形で申告が行えています。個人事業主など年末調整をされない人はこの例に当てはまらないので、事業主本人が行う必要があります。その他にも、所得が年金関係の雑所得のみの人、退職金を受け取った人は申告が必要と決められています。
また、年末調整をされる、されないに関わらず、納め過ぎた税金やもらえていない控除について申告すことができます。これを、「還付申告」といいます。還付できるものは以下の通りです。
☑1.税金(源泉徴収されたり、すでに納めたりした税金と、実際の所得を照らし合わせてズレを調整します。払いすぎた分が戻ってきます。)
☑2.住宅ローン控除
☑3.医療費控除
☑4.雑損控除(災害や盗難で、資産に損が生まれてしまった場合)
これらは決まった期間はなく、通年受け付けています。また、過去5年分に遡って申告することも可能です。
確定申告が不要な場合
年末調整には、所得税の調整のみならず、国民健康保険料を社会保険料として控除するということも含まれています。
会社などの組織に所属していて、年末調整を担当者が行う場合や、もうすでに自分で年末調整を済ませている場合は、確定申告が不要となります。
支払った保険料は全額控除出来る
社会保険料控除は、給与や年金といった収入のうち、差し引かれた金額に適応されます。ですので、国民健康保険料を払った場合は、全額がその控除の対象となります。
反対に、生命保険はその種類や保険期間が5年以下のものなど、年数によっては控除外になるものもあります。
家族分の保険料も控除出来る
配偶者や子どもなど、生計をともにする家族の分の国民保険料を自分がまとめて支払っている場合においても、確定申告によって家族分も控除を受けることができます。申告の際は家族分も払っていることを伝える必要があります。
申告の方法と必要書類
国民健康保険の控除証明書
申告の手続きの際は、控除証明書が求められます。この書類は、各自治体から送付されます。この書類が発行される自治体にいるような場合には、スムーズな手続きを行うためには、届いたらしっかりと保管することがよいと言えます。
控除証明書を紛失した場合
ただし、全国的には国民健康保険においてはこの控除証明書の添付義務はないので、申告書に紛失した旨を記入するだけでよいこととなっています。確定申告のために再発行を頼む、といったことも特に必要ありません。
国民「年金」保険料の場合は同じく控除証明書の添付が義務になっているので非常に混同しやすい部分です。
申告時に領収書の添付は不要
国民健康保険の確定申告を申し込むときは、領収書の添付は特に必要ありません。一般の生命保険に加入していると、領収書などは保管し提出する必要がありますが、国民健康保険の場合、その限りではありません。
また、一般的にいう「確定申告」は医療明細を保管するというイメージを持たれていることが多いですが、それとはまた異なります。
勿論、家計を管理する際には領収書が大きな目安となりますが、領収書は無くても、国民健康保険の確定申告をすることは可能です。
国民健康保険料控除額の計算方法
国民健康保険控除額の算出方を計算式に表すと、以下のようになります。
(所得ー基礎控除33万円)×所得割額+均等割額
☑1.所得:個人事業主は年間の収入から必要経費を引いた額となり、雇用されている場合は年間の収入から給与所得控除額を引いた額となります。
☑2.基礎控除:この場合基礎控除額は住民税計算となるので、33万円です。
☑3.所得割額:所得が高いほど割合も高くなる額です。自治体によって割合には多少の差が出ます。
☑4.均等割額:国民健康保険に加入するその自治体の住人が、みな平等に負担する金額です。自治体の財政状況や人口によるので、地域事情によって左右されやすい部分です。
このような仕組みで国民健康保険料は算出されています。
算出すること自体は税務署の職員が行うので、納税者自身が完璧にこの計算をする必要はありませんが、この仕組みを理解することが、国民健康保険料の管理につながっていきます。
国民健康保険料は確定申告で決定される
申告することで税金を抑えられる
国民健康保険においては、確定申告することで税金を抑えることができます。上記のように、この保険は所得や個人事業主の場合は経費によって左右される面があるので、請求された金額と実際に払うべき金額との間にズレが生じてしまう場合もあります。
このズレを少なくする手段が、確定申告です。個人事業主など自身が事業を行うと、所得や経費の揺れ動きはつきもの。税金を集める側にも把握しづらいところなので、納税者本人による正確な申告が必要となってきます。
確定申告をしなかった場合
国民健康保険は様々な場合において、税金の軽減措置がとられることがあります。所得が低い場合など、自治体が把握しているはずで申告が不要なケースもあります。
しかし、全てのときにおいて自治体が完璧にそのニーズを把握しているわけではありません。会社の倒産など自発的でない理由により失業した場合や、災害を受けた場合、後期高齢者制度が適用される前に扶養されていた高齢者の場合などは、本人からの申告が必要です。これがないと、保険料は高額となります。
このようなケースは、周知されにくい点なので、もしかしたら自分が知らない、減税措置を受けられる部分はあるかもしれません。
国民健康保険の面だけでなくても、本来申告の義務があった人が申告せずにいると、加算税がかかったり、本人が支払いをしていなかった税金の延滞税が出るという大きなリスクがあるので、非常に注意が必要です。
個人事業主の申告時のポイント
国民健康保険料の仕訳と記帳
個人事業主は、自分の事業の帳簿に国民健康保険料の額を正しく記載することで、節税につながります。
個人事業主の場合は帳簿の記帳を行いますが、帳簿の中には「事業主借」「事業主貸」という勘定科目があります。事業主の個人的な資金と、事業の公的な資金との間に行き来があったときに使われます。「プライベートの自分」が「個人事業主の自分」から資金を借りて支払った、という扱いになります。
国民健康保険料を支払うには、「事業主貸」の項目に保険料の金額を、「事業主借」の項目に事業用の口座を記入するということができます。事業主としての帳簿に、内容を詳しく記載する必要はなく、金額を書くのみです。気をつけたいのが、これはあくまでも個人的な支出であって、「健康保険料」と直接事業の経費には計上できない点です。
国民健康保険料を抑える方法
保険料の負担を抑えるために、会社を設立して法人になるという方法があります。会社になると、個人の健康保険でなく福利厚生の手厚い社会保険に入ることになるので、国民健康保険よりも負担が減らしやすい仕組みになっています。
勿論、法人化することにはその他の税制の面で手間とリスクがあるので、事業の状態や規模によって、どちらにメリットがあるかが異なります。また、単純に法人化すれば負担が減るというものではなく、制度をよく理解した上での調整が必要です。
国民健康保険を安くしたいがために安易に法人を設立すると、その他の面でつまづくケースがあります。
このため、多くの企業家や経営者、法人の事業主は、闇雲に法人化をしてかえって不利になることを避けようと、コンサルタントなどの有料の専門家と連携をとっています。
国民健康保険料の取り扱いを知り正しく確定申告する
国民健康保険料はこのように、所得や経費といったその時の状態に左右されやすいものなので、本来必要な額とズレが発生しがちです。
個人事業主なら、なおのこと申告しないと税を徴収する側に状況は伝わりづらいものです。国民健康保険料の取り扱いをしっかりと知り、正しく確定申告することが大切です。