給与計算は間違えてはいけないものです。ソフトを使うことで間違いを無くすことが出来、業務も効率よく楽に早く進めることができるようになります。どのようなソフトが合うのかを把握し、正しい給与計算を行うためにこれから学んでいきましょう。
目次
円滑な給与計算をするためのポイント
就業規定は厚生労働省のHPで確認する
就業規定とは、休日や給料の支払い日など、従業員が働くための労働条件を定めた社内規定です。給与計算を始める前に就業規定を決めましょう。就業規定は、労働基準法に基づいて作成します。10人以上の従業員を雇用している場合は、就業規定を作り、労働基準監督署長に届け出を出さなくてはいけません。しかし、繁忙期などのような一時的に10人以上となる場合は、当てはまりません。従業員が頻繁に入社、退社したりしても常に10人以上いる場合は当てはまります。
従業員には正社員以外の契約社員、アルバイト、パートも含まれますが、派遣社員は含まれません。(派遣元の労働者として数えられます)就業規定は、本社や支店、工場といった事業所単位で行います。就業規定の作成、変更を届けなかった場合は、30万円以下の罰金になり、就業規定を作成した場合や、変更したときは、遅滞なく所轄の労働基準監督署長に届け出ることが必要です。何日以内に届け出る、という決まりはありませんが、施行したらすみやかに届け出ることが大切です。
従業員情報は毎月忘れずに更新する
登録してある従業員の情報は、いつでも変更できるので住所や振込先、勤務地の変更や扶養家族の増減などがあった時は、登録情報を修正しておきましょう。
勤務地が変わると通勤手当が変わり、家族の増減があると家族手当や所得の控除額が変わります。毎月の給与計算の前に確認しておくとスムーズに仕事ができます。給与計算には、従業員の情報が必要になり、情報が変わると基本給や所得の控除額、通勤手当などが変わる場合があります。
年間の繁忙期を意識しておくといいでしょう。給与計算の担当の方は繁忙期になる前に、マニュアルを確認したり情報の入手などの整理を行っておくことが大切です。
法律に基づいた保険の加入
社会保険とは一定の条件を満たした事業所と従業員が加入する公的保険のことです。社会保険は国の制度の一つなので、条件に当てはまれば必ず加入しなくてはなりません。社会保険とは、健康保険、厚生年金保険、介護保険、雇用保険、労災保険の5つです。
社会保険の対象となる従業員
従業員を採用すると、社会保険に加入させるかどうか、しっかりと理解をしなくてはいけません。もし、加入すべきものを非加入にしておくと、従業員側にかなりの不利益が起こってしまう場合があります。制度内容をきちんと把握しておきましょう。
☑社会保険が適用されている事業所の従業員
☑1週間の労働時間と1ヶ月の所定労働日数が一般社員の3/4以上の従業員
上記に加え、以下のすべての条件に該当する従業員が対象となります。
1.所定労働時間が週20時間を超えている
2.月給が88,000円(年収106万円)以上である
3.1年以上勤務又は、見込み
4.学生ではない
5.社会保険の対象になる従業員が501人以上の事業所に勤務している
社会保険の種類
社会保険は、働けなくなった時に金銭的に補助してくれるものです。各保険の意味を知って加入漏れの内容に気を付けましょう。
健康保険
保険料率というものがあり、収入が多い人ほど保険料は高くなります。病院で治療を受けたときに健康保険料を払っていれば3割の医療費で済みます。すべての従業員が加入対象です。
厚生年金保険
会社で働く従業員が加入する公的年金です。高齢者が自立した老後の生活を送るために必要な保険です。
介護保険
40歳〜60歳の従業員が加入対象です。健康保険料に上乗せする形で支払います。
雇用保険
31日以上続けて雇用される予定の従業員と、1週間の労働時間が20時間以上の予定の従業員が加入対象になります。
労災保険
従業員全ての人が加入対象ですが、保険料は会社が支払います。
勤怠管理の実地
勤怠管理とは、企業や事業所などが従業員の就業状況を正確に把握することです。タイムカードやICカードなどのシステムを利用し、始業から終業までの時間、時間外労働、有給休暇取得の状況などを記録しチェックを行います。
勤怠管理をするうえで大切なのは、労働時間と休憩時間の見極めや長時間労働の防止、従業員の健康を守ることにもなるのでとても重要になります。情報の回収が遅れると、給与の支給日までの作業を圧迫し、計算ミスのもとになる場合があります。従業員の理解、協力を得ながら進めていくことが大切です。
従業員の出退勤の時間を管理する勤怠管理システム、というものがあります。コストを抑えて簡単に導入できるクラウド型勤怠管理システムが普及してきているので、担当者の負担を軽減するために取り入れるのも良い方法ではないでしょうか。
効率的な給与計算のやり方
支給額から控除を差し引いて算出
給与明細は、支給額、控除額、差引支給額の項目で構成されています。支給額の項目には、基本給と残業代、手当てが記載されています。手当は住宅手当、通勤手当、役職手当など会社によって決められている手当てのことです。
控除額の項目には、社会保険、雇用保険などの各種保険の他に、所得税や住民税、その他会社によって決められた控除などがあります。社会保険は、会社と従業員で半分ずつ負担することになっています。差引支給額には、支給額から控除額を引いた金額が記載されています。
変動的な給与支給額を算出
残業代、深夜手当、休日手当などの変動する給与の計算方法です。各手当は給料のプラスになる金額なので、とても重要なものです。計算が異なるので間違えないようにしましょう。残業代、深夜手当、休日手当などの変動する給与の計算方法は、時間外労働の時間数×1時間当たりの賃金×割増率です。
1時間当たりの賃金の計算方法は、月給÷1ヶ月あたりの平均所定労働時間になります。
1ヶ月あたりの平均所定労働時間の計算方法は、[(365日−年間所定休日数)×1日の所定労働時間数]÷12(ヶ月)です。
月給は、基本給の他、役職手当や資格手当なども含める必要がありますが、家族手当や通勤手当、住宅手当などは、月給に含めなくてもよいとされています。
割増率は法律に基づいて計算
割増率は、種類によりそれぞれ異なります。全部で4種類あるので、どれに当てはまるのか間違えないようにすることが大切です。
☑時間外の場合 1日8時間、週40時間を超えた労働時間、割増率は25%以上
☑深夜の場合は、22時〜5時までの間の労働時間、割増率は25%以上
☑休日(法定)の場合は、法定休日(週1日)における労働時間、割増率は35%以上
☑休日(法定外)の場合は、会社で定めた休日(所定)における労働時間、割増率は0%以上
時間外労働と、深夜労働の2つがあてはまる場合の割増率は、50%以上になります。時間外、深夜、休日の労働時間は、1分単位から計算に含める必要があるので、15分未満は切り捨て等すると違法になるので気をつけましょう。
保険料の控除額の計算
各保険料の計算式は似ている部分があるので、よく見て間違えないようにすることが大切です。計算を間違えてしまうと給料の金額が変わってしまいますので、内容をよく理解して慎重に行いましょう。
☑健康保険料、厚生年金保険料は、会社と従業員で半分ずつ支払う
従業員が負担する保険料の計算は、標準報酬日額×保険料率÷2、です。標準報酬月額はおおよその賃金です。
☑介護保険料は会社と従業員で半分ずつ支払う
40歳以上65歳未満の保険料の計算は、標準報酬月額×保険料率÷2、です。介護保険料の計算は加入している医療保険によって利率が変わってきます。
☑雇用保険は会社と従業員で支払う
従業員が負担する雇用保険料の計算は、賃金×1000分の3(一般の事業の場合、平成29年4月1日〜平成30年3月31日までの利率)です。賃金には基本給、残業手当や家族手当、住宅手当なども含みます。
個人にかかる税金を計算
所得税や住民税は払わなければいけない大切な税金です。従業員が働いた中から発生するものなので、慎重に計算して間違いなく支払うようにしましょう。
従業員の所得にかかる税金の所得税の計算は、課税所得×税率です。課税給与所得の計算は、支給額(基本給、残業代、課税対象の手当)−(社会保険料や労働保険料)です。所得税は会社が給与から差し引いて徴収し、税務署に支払います。従業員が直接支払うものではありません。
従業員が市区町村に支払う税金が住民税です。住民税は、所得税と同様に会社が給与から差し引いて徴収し、市区町村に支払います。住民税は、従業員の前年の給与を元に計算し、12回に分けて毎月支払います。住民税も従業員が直接払いません。
給与計算の上で起こりうるリスク
残業代未払いなどの労務リスク
残業代を含む賃金の時効は2年、退職金は5年となっています。未払い分がある場合は、2年前まで遡ってまとめて請求される場合があります。従業員から残業代を請求された場合に支払うべきケースとして、年棒制があります。年俸制は残業代を含む賃金体系ではないので、法定労働時間を超えて働いてる場合は、残業代を支払わなくてはいけません。
残業代の元となる労働時間の算出は、30分単位で計算し、30分に満たない時間は切り捨てられる場合があります。残業代の未払いによるリスクにはさまざまあり、悪質と判断されると懲役や罰金の可能性があったり、未払い分の残業代の支払いと遅延利息の発生、企業イメージの低下などがあります。残業代の未払いの問題は、労務リスクだけでなく、企業イメージにもよくありません。未払いの残業代が発生することがないようにすることが大切です。
個人情報などの漏えいリスク
個人情報の漏えいリスクは、個人、会社等誰にでも起こる可能性があります。個人情報が外部に出てしまうと拡散して大きな被害を引き起こす可能性があり、会社の社会的な信用が下がってしまう事が考えられます。個人情報は特に気を付けて管理をしなくてはいけません。
万が一、マイナンバーを漏えいさせてしまうと、処罰の対象になり、最も重い刑で「4年以下の懲役、又は200万円以下の罰金」となっています。個人情報とは、氏名や性別、住所、電話番号、メールアドレス、写真など個人を特定できる情報のことです。個人情報を取り扱う限り漏えいの事実があれば処罰の対象になります。また、給与計算をアウトソーシングすると、従業員に社長や役員の給料の額を知られることを防ぐことができます。
メールやFAXの誤送信の事故で、個人情報が漏えいされることがあります。電子メールやFAXを送る時には、あて先をきちんと確認しなくてはいけません。個人情報は、別ファイルで添付し、パスワードを設定するなどの工夫をすることが大切です。
所得税の計算ミスによる税務リスク
所得税に計算ミスがあった場合や、支払い漏れがあった時は、税務リスクを起こしていると思われます。会社が行う税務業務は毎年のように改正される税法に対応するために、大変複雑になっているので会社にとっては税務リスクが高くなっているでしょう。特に中小企業の場合は、専門のスタッフを抱えることが簡単ではありません。正確な税務申告を行うためには、税制全般に迅速に対応することが重要になります。
給与計算におすすめの計算ソフト
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ソフトを利用して確実な給与計算を行おう
給与計算できるソフトはいろいろあります。自分には何が合っているのか迷ったときは、無料のものを試して、検討してみるのがいいのではないでしょうか。一度計算を間違えてしまうと、そこからすべて変わってきてしまう可能性があります。間違いのない確実な税務をするために適切なソフトを選び、正しい給与計算を行いましょう。