合同会社の代表社員になる方法。ルールや手続きについて確認しよう

合同会社の代表社員とは、株式会社でいう代表取締役に相当する役職のこと。しかし株式会社の代表取締役とは違い、合同会社の代表社員ならではのルールや手続きがあります。代表社員になる方法を知る前に、ルールや手続きについて確認しておきましょう。

合同会社の代表社員を決めるルール

代表社員は2名以上でもよい

合同会社の代表社員とは、株式会社に例えると代表取締役社長に相当する役職です。合同会社はすべての社員が代表権を持っていますが、それでは対外的に混乱を招くので、会社を代表する社員を代表社員として選出します。

代表社員は1名でもいいですし、2名以上の複数でもいいです。互いにノウハウを持っていたり経営能力が高い場合は、どちらの立場が上とは決めにくいということもあり、2名以上代表社員を置くケースがあります。

代表社員が2名以上のケース

代表社員を2名以上置くケースを複数代表制といいます。複数代表制は、社員同士が公平な立場で意思決定ができるということがメリットです。

早く意思決定を行うために、事業領域もしくは業務区分ごとに代表権を分けることもあります。海外にも拠点を設ける場合もしくは海外在住者が合同会社を設立する場合は、契約や調印等を円滑に行うために海外と国内で代表社員を1名ずつ置くケースも珍しくありません。

代表社員が1名のケース

複数代表社員がいると、意見が分かれたときに意思決定に時間がかかるというデメリットがあります。対外的にも、それぞれが代表社員を名乗ることで混乱を生じる可能性も否定できません。

また、それぞれが代表印として印鑑の届け出をしている場合、お互いが知らない間に契約が締結している可能性もあるため注意する必要があります。それらの問題を回避するために代表社員を1名にするケースが多いです。

代表社員は法人にしてもよい

合同会社の代表社員は個人に限らず法人にすることも可能です。その場合は、実際に業務を遂行する職務執行者を選出する必要があります。

合同会社の代表社員は、自動的に代表社員としても職務を執行する権限を持つということはありません。職務執行者は、法人の役員、従業員、第三者などから選出でき、1名に限らず2名以上の複数にすることも可能です。

職務執行者の選任について

法人が株式会社の場合、取締役会が設置されていたら職務執行者の選任を取締役会の決議にて行います。取締役会が設置されていない場合は、株主総会にて議決し議事録に記録。法人が合同会社の場合の職務執行者の選任については、社員の過半数一致が必要条件です。

代表社員が法人の場合の役員報酬について

合同会社の代表社員が法人の場合の役員報酬は、代表社員である法人に支払う方法と直接職務執行者に支払う方法のどちらを選択してもいいです。法人に対して役員報酬を支払う場合は、所得税の源泉徴収は不要となります。

代表社員は業務執行社員からのみ選出できる

業務執行社員が1名の場合は、その方が代表社員です。業務執行社員が2名以上の複数設定されている場合は、業務執行社員から代表社員を選出します。つまり、業務執行社員が定められている場合は、代表社員は業務執行社員以外からは選ぶことができないという点に注意しましょう。

複数の社員がいて業務執行社員が定められていない場合、代表社員を選出したら代表社員以外は業務執行社員となります。業務執行社員や代表社員を決めることで、責任と権限が明確になり、業務が円滑に進みやすくなるのです。

合同会社の代表社員の定め方

定款に代表社員の住所氏名を記載する

代表社員は住所と氏名が登記されます。そのため代表社員は住所と氏名を定款に記載する必要があり、この住所と氏名は印鑑証明書通りに記載することが望ましいです。

ちなみに社員は原則として業務執行社員となり氏名が登記されます。そのため社員は氏名及び住所を定款に記載しますが、こちらも印鑑証明書通りの記載が望ましいです。定款を作成する際に必要になる代表社員及び社員の記名押印の印鑑については特に決まりはないので、実印でも認印でもかまいませんが、実印のほうが信用性が上がります。

代表社員が法人の場合は職務執行者も記載する

代表社員が法人の場合は、職務執行者の氏名や住所も登記する必要があります。その理由は、職務執行者を明確にして責任の所在を明らかにすることで、取引先の保護を図ることができるからです。

代表社員が法人の場合に必要な書類は、登記事項証明書に加え、職務執行者の選任に関する書面、職務執行者の就任承諾書を添付します。

職務執行者の選任に関する書面とは

代表社員になる法人が株式会社の場合は、取締役会議事録もしくは株主総会の議事録が必要。代表社員になる法人が合同会社の場合は、社員が選任したことを証明する書面が必要です。

もし職務執行者を交代する場合、職務執行者が退任したことによる空白期間を防ぐため、新しい職務執行者の就任の登記と同時でないと退任の登記はできないので注意しましょう。

変更があった場合は2週間以内に登記変更する

合同会社の代表社員に変更があった場合は、この変更について登記が必要です。変更の登記は、変更があってから2週間以内に行わなくてはいけません。2週間を経過しても登記の申請は受理されますが、過料が科せられる恐れがあるので、早めに登記するようにしましょう。

変更登記が必要なケース

☑ 1.代表社員の住所が変わった場合
☑ 2.代表社員を新しく追加する場合
☑ 3.代表社員を社員へ変更する場合及び社員を代表社員に変更する場合

代表社員の変更手続きの方法

代表社員の変更手続きの方法は、「総社員の同意」か「業務執行社員の互選」のいずれかの方法をとります。代表社員を定款で定めている場合、総社員の同意によって定款を変更し、代表社員を決定。ただし定款で総社員の同意以外の方法で代表社員を定めるとした合同会社はそれに従います。定款に業務執行社員の互選で代表社員を定めるとあれば、それに従うということです。

代表社員の変更登記に必要になる書類

☑ 1.総社員の同意書もしくは業務執行社員の互選書
☑ 2.定款
☑ 3.代表社員の印鑑証明書

代表社員の就任承諾書が必要なパターン

定款で代表社員を定めた場合、原則として代表社員の就任承諾書は不要です。しかし代理人により合同会社の定款を作成した場合、定款で代表社員を定めていたとしても、代表社員の就任承諾書が必要となります。

例えば司法書士などの代理人が定款を作成している場合、代表社員が就任を承諾していることを証明する書面が別途必要。また、電子定款の場合も司法書士などの代理人によって行われることが通常なので、電子定款にする場合は代表社員の定め方に関係なく代表社員の就任承諾書が必要です。

代表社員の肩書きの書き方

代表取締役と名乗ってはいけない

株式会社の役職には「代表取締役」「取締役」「監査役」などがありますが、合同会社の役職は「代表社員」と「業務執行社員」。合同会社の代表社員は株式会社でいう代表取締役に相当する役職ですが、法律上では合同会社に代表取締役という役職が存在しないため、肩書きとして代表取締役と名乗ることはできません。

名刺にも代表取締役と記載できないので本来であれば代表社員と記載する必要があります。しかし「社員」という言葉が入っていると従業員と勘違いされることを敬遠される方も多いです。その場合は、「社長」や「代表」などの法律では定められていない名称に置きかえることもできます。

定款に定めれば社長という肩書も使える

合同会社の代表社員は株式会社でいう代表取締役を名乗ることができません。しかし定款で「当会社の代表社員は社長とする」という旨の記載をすれば、社長という肩書も使うことができます。

定款に定めておくと、名刺にも社長と記載することが可能です。社長に限らず、代表やCEOなどとする場合も、定款に記載しておきましょう。

英語表記の場合はCEOやCOOが多い

合同会社は法律上「代表取締役」という役職がなく「代表社員」となるため、その「代表社員」の肩書の代わりに「社長」「代表」「最高経営責任者」「最高執行責任者」などの肩書を使用する方も多いです。さらには英語表記を使用する場合もあります。

英語表記では「CEO」や「COO」の肩書を使用する方が多いです。「CEO」は「Chief Executive Officer」の略で、最高経営責任者のことをいいます。「COO」は「Chief?Operating Officer」の略で、最高執行責任者のことです。

業態に合わせて代表者を限定しスムーズな経営を

合同会社の代表社員は、定められているルールに従って決める必要があります。代表社員の定め方や必要な手続きもいろいろあるので、合同会社の代表者を選ぶ際にはルールや定め方や手続きについてを事前に確認しておきましょう。

合同会社の代表社員は、株式会社でいう代表取締役ですが、法律上「代表取締役」という肩書を名乗ることはできないという点も注意が必要です。代表社員になる方法やルールを知ったうえで、業態に合わせて代表者を限定しスムーズな経営を行いましょう。

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