合同会社とは。特徴やメリットや定款のことを知って働き方を考えよう

合同会社は、新しい会社の形態として認知度が上がっています。しかし詳しいことについて知っているという方はまだ少ないです。合同会社には個人事業主や株式会社とは違う特徴やメリットがあります。さらに定款のことも知って会社の働き方を考えてみましょう。

目次

合成会社の仕組み

出資者全員が有限責任社員

合同会社は、出資者全員が有限責任社員です。合同会社を設立する際には、社員は必ず出資をします。社員とは従業員のことではなく株式会社でいうと株主みたいなものです。

有限責任社員は、会社が債務を負って倒産、会社の財産だけで弁済できなかった場合は、出資した範囲内で会社の負債を弁済する義務があります。例えば10万円出資して会社の債務が100万円だったとしても、有限責任社員が弁済する額は10万円のみ。出資した以上に弁済する義務はありません。責任に限りがあるという意味で有限責任社員といわれています。

株式会社と同じ間接有限責任

合同会社と株式会社は同じ関節有限責任(有限責任社員)です。出資者(株主)が出資した範囲内限定で責任を負うにとどまるという意味。会社が倒産したら、会社の債権者などに対して発行済みの株式や会社が保有する資産の範囲内で責任を負うだけで済むので、一定のリスクを負うことを回避できます。

上場企業が倒産した際に、個人投資家が保有する株式の価値が0円になってしまいますが、責任としてはそれだけで済むということです。会社が成長すれば株価が上昇して配当の儲けが出て、もし倒産しても出資したお金を失う限定的なリスクで済むということが分かっていれば、出資者の出資意欲が高くなるので会社としては出資者からの資金調達がしやすくなります。

2006年に会社法改正によってできた新しい形態

合同会社というのは、2006年の会社法改正によってできた新しい形態です。株式会社は出資者と経営機関が分離していますが、合同会社は出資者が社員として経営にも関わるという特徴を持っています。

株式会社との違いは他にもいろいろあります。特に設立費用や維持するコストが安く済むというのは特徴的で、個人事業主からの法人成り(法人化)やベンチャー企業の場合は合同会社を選択するケースが多いです。

合同会社の略し

頭文字(合)ではなく(同)

株式会社の略しは「(株)」と記されますが、合同会社の場合は「(同)」と略して記されます。「(合)」という略しではないので間違えないように気をつけましょう。

頭文字なので「(合)」としたいところですが、そうすると合同会社以外に合から始まる合名会社や合資会社もあるため問題が起きてしまうというのが「(合)」と略さない理由です。ちなみに合名会社の場合は「(名)」と略し、合資会社は「(資)」と略します。

銀行での略も(ゴ)ではなく(ド)

銀行での送金の際などには、金融機関ではカタカナ表記になります。その場合の着も合同の頭文字の「(ゴ)」ではなく「(ド)」という表記です。

略すときに前に(同)がくる場合は「ド)」という表記。後に(同)がくる場合は「(ド」という表記になります。

合同会社のメリット

会社設立費用が安い

株式会社と比べると合同会社のほうが会社設立費用が安いです。株式会社を設立する際にかかる費用は約20万円〜25万円くらいですが、合同会社の設立費用は約6万円〜11万円くらい。専門家に相談した場合は顧問料がプラスになったりと、場合によってはもっと費用がかかることもありますが、どちらにしても合同会社のほうが安くなります。

ちなみに会社設立の際の複雑な手続きを代行してくれるサービスもあります。ただし行政書士単独の事務所は登記申請の代行は認められておらず、税理士事務所も会社設立の手続きを代行することは認められていないので注意しましょう。

株式会社の設立費用

☑ 1.定款認証手数料:50,000円
☑ 2.定款印紙代:40,000円(電子認証対応の場合は不要・0円)
☑ 3.定款謄本代:約2,000円(250円×枚数)
☑ 4.登録免許税:資本金の1,000分の7もしくは15万円のいずれか高い金額
☑ 5.登記事項証明書代:1通600円
☑ 6.印鑑証明書代:1通450円

合同会社の設立費用

☑ 1.定款認証手数料:不要・0円
☑ 2.定款印紙代:40,000円(電子認証対応の場合は不要・0円)
☑ 3.定款謄本代:不要・0円
☑ 4.登録免許税:資本金の1,000分の7もしくは60,000円のいずれか高い金額
☑ 5.登記事項証明書代:1通600円
☑ 6.印鑑証明書代:1通450円

株式会社と合同会社の設立費用の比較

株式会社と比較して、合同会社のほうが設立費用が安くなるポイントは、定款認証手数料がかからないこと、定款謄本代がかからないこと、登録免許税に違いが出ることです。

株式会社のほうが信用面では上ですが、合同会社はなるべく安く会社を設立したいと考えている方に向いている形態です。会社設立費用だけで見るとおよそ14万円前後、合同会社のほうが安くなります。

法人格を所得できる

合同会社を設立すると、株式会社と同じように法人格を取得することができます。法人格とは法律上の人格のことで、わかりやすくいうと登記を行うなどの法律上の行為を行うことができる資格があるということです。

法人格が取得できるメリットは、対外的な信用が高くなること。事業を成功させるためには信用と信頼は大切です。それでもまだ株式会社ほどの信用は得られませんが、個人事業主と比べると法人格があるということだけで信用度は上がります。

損益配分が自由にできる

会社は事業に成功すると利益が出ますが、この利益をどのように配分するかは会社の形態によって異なります。合同会社の場合はこの損益配分が自由にできるということが特徴です。株式会社の場合は原則として出資した割合によって配当される金額は決まっています。

合同会社の場合、出資した金額がいくらだったかは関係なく、能力や技術を持った方に対して、定款により多くの利益が配当されるという仕組みです。例えば100円しか出資していないという方でも、100万円出資した方でも損益分配においては関係なく、配当を自由に決めることができます。

役員の任期が無期限にできる

代表社員(株式会社の場合でいうと代表取締役のこと)、取締役などの役員の任期が無期限にできます。株式会社の場合、代表取締役などの人気は原則2年間と会社法に定められています。

一方で合同会社は、代表社員などの役員の任期が定められていません。そのため変更の手続きは不要でお金もかからないということは大きなメリットになります。

資金調達の幅が広がる

個人事業主と比べると合同会社を設立したほうが資金調達がしやすくなり、調達する方法の幅も広がります。資金調達の一般的な方法として銀行などの金融機関からの融資がありますが、合同会社にするとそれ以外にもさまざまな資金調達の方法があるのです。

例えば、「社債の発行」も資金調達方法の1つ。2006年の会社法改正で合同会社ができるまでは株式会社だけが社債の発行ができましたが、合同会社などの持ち分会社(合資会社と合名会社も含む)も発行できるようになりました。個人事業主は会社ではないので「社債の発行」はできませんが、似たような制度で「私募債の発行」があります。私募債は会社も発行が可能です。

社債とは

社債とは会社が発行する債券のこと。会社が資金調達を目的に投資家などから資金の振込と引き換えに発行する債券です。

会社が発行できる社債にはいくつかの種類があります。それぞれに特徴や条件があるので、よく理解してから検討しましょう。

☑ 1.普通社債(一般的に社債といえば普通社債。満期が設定されていて、満期までの間に保有している投資家に利子が支払われる。)
☑ 2.劣後債(投資家に対する元利子の支払い順位が一番低く、金利の設定は高い。)
☑ 3.永久債(元本の償還の規定がなく満期がない。会社が存続する限りは投資家に対して永久に利子が支払われる。)
☑ 4.新株予約権付社債(一定の条件があれば株式に転換できる新株予約権付きの社債。)

公募債・私募債について

社債には公募債と私募債があり、発行を行うためには条件があります。公募債は不特定多数の投資家に対して発行する債券で、募集人数は50人以上が対象です。

私募債は少数の投資家に対して発行する債券で、公募債と比べると手続きは簡単。私募債の中にも種類があり、金融機関などの適格機関投資家を相手にする「プロ私募債」と、50人未満の投資家に発行する「少人数私募債」があります。

決算公告の義務がない

会社を設立すると、1年に1回決算を行わなくてはいけません。決算とは、1年間の収入と支出を計算して利益や損失をまとめ、その数字を税務署に報告する手続きのことです。決算は株式会社でも合同会社でも行います。

しかし株式会社と合同会社の決算では違う点もあります。それは、合同会社の場合は決算公告の義務がないということ。株式会社の場合は、毎年の決算の内容を官報などで発表する義務が課されていますが、合同会社にはその義務がありません。

決算公告の義務がない場合のメリット

株式会社には決算公告の義務があり、通常は官報に掲載するという方法で決算内容を報告します。官報に掲載するには最低で6万円ほどの費用が必要です。

一方で合同会社には決算公告の義務がないので、その費用である最低6万円の費用がかかりません。つまり株式会社と比べると年間6万円ほど経費が安くなるということがメリットです。ちなみに個人事業主の場合も決算(確定申告)は1年に1回行わなくてはいけませんが、決算公告の義務はありません。

税制の違いがある

決算をして利益が出ると、その利益に対して一定の割合で税金がかかります。税金については株式会社も合同会社も同じ割合で税金がかかるので税金についての違いはありません。しかし会社と個人事業主では税金について大きな違いがあります。

違いが出る理由は、税制上、会社と個人事業主では支払う税金の種類が違うということ、個人事業主は儲けが増えるほど税率が上がる累進課税だということ、会社のほうが経費に計上できる項目が多いので確定申告で控除を受けられる金額が多くなることなどが主な理由です。事業の規模によっては個人事業主よりも法人(合同会社や株式会社)のほうが納める税金は少なくなります。

個人事業主が納める税金の種類

☑ 1.所得税(所得金額195万円以下の税率は5%、195万円〜330万円は10%、330万円〜695万円は20%、695万円〜900万円は23%、900万円〜1,800万円は33%、1,800万円〜4,000万円は40%、4,000万円以上は45%の累進課税)
☑ 2.住民税
☑ 3.消費税
☑ 4.個人事業税

法人(合同会社や株式会社)が納める税金の種類

☑ 1.法人税(所得金額800万円以下の税率は15%、所得金額800万円以上の税率は23.9%)
☑ 2.法人住民税
☑ 3.法人事業税
☑ 4.地方法人特別税
☑ 5.消費税
☑ 6.固定資産税
☑ 7.その他(会社によって利子や配当金に対して払う所得税や自動車関連税がある。)

法人(合同会社や株式会社)のほうが税率が低くなる場合とは

個人事業部氏の所得税と法人の法人税の税率の特徴により、事業の規模によっては法人のほうが税率が低くなります。課税対象が330万円以上は法人のほうが税率が低いです。ただし一部例外があり、所得が800万円〜900万円の場合のみ個人事業主のほうが税率が低くなるので注意しましょう。

また、法人は経費に計上できる項目が多く、確定申告では給与所得までも控除されるので、最終的に課税対象になる所得額が個人事業主よりも低くなり、納める税金が少なくなるということもあります。

合同会社に向いている業種

企業との取引に法人格が必要な医療関連会社

医療関連会社は、企業との取引に法人格が必要となります。合同会社も株式会社同様に法人格を取得できるので、医療関連会社は合同会社に向いている業種です。

個人もしくは少人数の社員で医療関連会社を設立したいのであれば、株式会社ではなく合同会社を選ぶということも検討してみましょう。信用面では株式会社に劣りますが、合同会社のほうが設立コストが低くなるなどのメリットがあります。

許認可要件に法人格が必要な介護事業

介護事業は許認可要件に法人格が必要です。つまり介護事業を始めたいのであれば個人事業主ではなく株式会社あるいは合同会社を設立して法人格を取得することが必須になります。

少人数で運営するのであれば株式会社ではなく合同会社にするというのも1つの方法です。最初は設立コストが低い合同会社で法人を立ち上げ、事業が軌道に乗ったら株式会社に変更するという方法もあります。

節税メリットを享受できる不動産投資会社

不動産投資会社は、法人化したほうが節税メリットを享受できます。個人事業で行う場合との税率の違いは大きいです。家賃収入の合計にもよりますが、個人と法人との税率の違いは30%以上にもなります。さらに法人の場合は所得を給料にして経費化することも可能です。

法人には株式会社や合同会社などの形態がありますが、それらは税制上の違いはほぼありません。しかし設立コストは株式会社と比べると合同会社のほうが安くなるため、不動産投資会社を合同会社で設立するケースが増えています。

節税メリットを享受できるFX運営会社

2012年1月に店頭FX税制が変わり、FXの個人取引の場合20%の税率となったため個人取引のほうが法人よりも得なのでは?と考える方もいますが、FX運営会社を設立して法人にした方が節税メリットを享受できます。法人税率は株式会社でも合同会社でも同じ税制なので、小規模事業あるいはFX取引がメインということであれば安く設立できる合同会社で十分です。

税率は所得やFX収益にもよりますが、個人取引と法人とではそれほど大きな差はありません。しかし法人になると経費算入余地が広いということと、繰越欠損にも違いがあるため(個人は損失が3年しか繰り越せないが、法人は9年繰り越せる)節税対策にもなり、法人化するメリットは大きいです。

合同会社の定款

合同会社の基本事項を決定する

定款を作成するにあたり、まずは合同会社の基本事項を決定します。定款に記載する基本事項とは「商号、事業目的、本店住所、公告の方法、社員及び出資、社員の責任、業務執行社員、代表社員、社員の加入、任意退社、決定退社及びそれについての特則、計算、損益の分配と分配の割合、決算月(事業年度)、資本金」です。

ウェブ上では穴埋めするだけで定款が作成できる雛形があり、無料でダウンロードできます。合同会社は、株式会社とは違い定款の認証を受ける必要はありません。

類似商号を調査する

同一住所に同一商号の社名があると登記ができません。可能性は低いとしても、もしそのようなことがあると収入印紙代などの実費をかけて会社設立の準備を進めていたとしたら、出費したそのすべてが無駄になってしまいます。

しかし同じ名前がないだけでは安心できません。同じ市町村で同じような名前で同じような事業をしている会社があった場合、不正競争防止法などの法律により商号の使用差し止めの請求がきたり、損害賠償を求められてしまうこともあります。安心して事業を行いたいのであれば、類似商号の調査をしましょう。

類似商号の調査方法

本店の所在地を管轄する法務局にて類似商号の調査を行うことが可能です。法務局にある(商号調査簿)閲覧申請書を記入して提出すると、商号が載っているファイルを閲覧することができます。

事業内容が複数ある場合は、その1つ1つを個別に調べるようにしてください。また、閲覧申請書には印鑑が必要になるので、法務局に行く際には印鑑も忘れないように持っていきましょう。

印鑑と許認可と定款を作成する

合同会社は設立時に印鑑証明を提出する必要はありませんが、定款には社員全員の住所と氏名を記入するため、結果として社員全員の個人の印鑑証明を用意することになります。また、定款には事業目的の記入がありますが、そこに記入しただけでは行えない事業もあり、別に営業許認可を受けないといけない場合があるので注意しましょう。

準備が整ったら定款を作成します。ちなみに定款には記名押印をする場所がありますが、電子定款を採用する場合は「以上、合同会社○○〇を設立するため、発起人○○〇は、電磁的記録である本定款を作成し、電子署名をする」と記入。そして最後に各社員の記名押印をし、空白部分に修正に備えて社員(出資者)全員の個人実印の捨印を押しましょう。

資本金の払い込みをする

定款の作成と認証が終了したら、次は資本金の払い込みをします。合同会社名義の銀行口座は開設できないので、代表社員の銀行口座を用意しましょう。

払い込みは、定款認証日とその日以降でなければいけません。そして払込金額が資本金の額でなくてはいけないということも気をつけるポイント。例えば資本金が500万円の場合、もし銀行口座に元々100万円の残高があったとしても、400万円を入金するのではなく、資本金額である500万円を入金する必要があります。(残高の100万円を一旦引き出して、再度500万円を払い込むという方法であれば大丈夫です。)

登記申請の手続きをする

払い込みが終了したら、合同会社設立登記申請書を作成します。そして登記申請に必要ないくつかの書類と、登録免許税で収入印紙約6万円を揃えて法務局にまとめて提出するという流れです。

合同会社設立登記申請に必要な書類

☑ 1.合同会社設立登記申請書
☑ 2.登記用紙と同一の用紙
☑ 3.定款(会社保存用と法務局に提出する用に2部用意する)
☑ 4.代表社員の印鑑証明書
☑ 5.払込証明書
☑ 6.印鑑届書
☑ 7.代表社員就任承諾書(場合によって必要になる)
☑ 8.本店所在地と資本金決定書(場合によって必要になる)

諸官庁に届け出をする

会社設立の登記申請が終了したら、諸官庁に届け出をします。諸官庁への届け出まで終了したら、法的な手続きはこれで終了となり、ここから会社がスタートします。

届け出を出す諸官庁とは

☑ 1.税務署
☑ 2.税務事務所など
☑ 3.労働基準監督署
☑ 4.公共職業安定所(ハローワーク)
☑ 5.社会保険事務所

銀行口座を開設する

合同会社の設立登記後は、会社の登記簿謄本(登記事項証明書)や印鑑証明書が取得できるようになっていれば、法人の銀行口座を開設することができます。取り扱いは各銀行口座により異なるため、事前確認をすることが大切です。

最近では法人名義の口座を使用した振込詐欺が増えていることも影響して、法人の銀行口座の開設がスムーズにいかないこともあります。資本金の額が少なすぎる場合、事業内容や目的が不明確な場合、事務所の実態がない場合は法人口座の開設が難しくなる可能性があるので、事前によく確認しましょう。

自分にあった会社と働き方を見つける

合同会社は2006年からできた新しい会社の形態ではありますが、会社の設立費用が安いなどのいろいろなメリットが注目されており、合同会社を選択する企業は徐々に増加中です。

関節有限責任であるということや税制についてなどは、株式会社と同じ特徴を持っているところもありますが、信用面で差が出るなどの違いもあります。個人事業主と比べた場合は節税メリットなどに違いがあるなど、形態によって特徴やメリットはそれぞれ違うので、自分に合った会社と働き方を見つけることが大切です。

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