本格的に事業を始めるその前に、株式会社の設立について知っておきましょう。事業を有利に進められるように、事前にしっかりと勉強して本当に株式会社化するほうがよいのか、じっくり考えておきましょう。失敗しない、成功する、好スタートを切りましょう。
目次
株式会社の基本
株式を発行して資金を集める
株式会社とは、事業などを行う法人の形態のひとつで、最も一般的に知られている形であるといえるでしょう。株式会社は、株式を発行するといった方式で資金を集めます。そして集めた資金をもとに、事業を行うのです。
株式は発行できる上限が定款などで定められていますので、さらに資金が必要になり、それを株式発行によってまかなう場合には、定款の変更などが必要になります。また、株式の払い戻しは出来ない仕組みになっています。株式を現金に変えたい時は、売却という方法をとることになります。
この株式の売買の差額によって利益を得ることもできるため、投資家などは、今後値上がりしそうな株式を購入し、値上がりした時点で売るなどといった手法で、利益を得ています。また逆に、購入した株式が値下がりすることもあります。
株主には配当がある
株式会社の株式を取得すると、株主になります。そして、その株式会社に利益が出た際には、配当がある場合があります。配当の金額は、所有している株式の数によって異なります。これが、株式を取得するメリットのひとつです。投資家の目的のひとつは、この配当が多く出そうな、利益を多く出しそうな会社の株式を購入し、配当によって利益を得ることです。
もちろん十分な利益を出せなかった年には配当はありませんので、こういった点も見極めて、投資家は株式を購入します。また、配当以外にも、株主優待でものやチケットを送っている会社もあります。このような付加価値をつけることで、株式を購入してもらいやすくするのも、会社経営のテクニックのひとつです。
もちろん株式会社であっても、親族などで経営をしている小さな会社であれば、株は身内で所有していることも少なくありません。この場合は、投資というよりも、相続や財産分与的な意味合いが強くなっているでしょう。
会社を所有する株主
株主は、株式を取得することで、その会社の経営に関わる権利を持つことができます。株式会社は株主総会を開かねばならず、多くの株式を所有する株主であれば、会社の経営に深く関わる事柄を決定することもできます。
株主は会社を所持している株式の分だけ所有しているといえるでしょう。このため、小さな会社で、ほぼ親族が株式を所有している場合などは、相続時の株式の売却などが問題になることが多々あります。こういったことを防ぐために、あらかじめ定款で、相続時の株式について定め、被相続人の売却を制限しておくこともできます。
会社経営の取締役
株式会社には取締役を置くことができます。会社を所有しているのは株主ですが、経営を行うのは取締役です。取締役が複数いる場合もあり、代表取締役が、一般的に社長と呼ばれるものにあたります。会社の所有と経営の分離をするために、このような方式をとることになっています。
取締役であっても、株主によって罷免されることもありますし、取締役が多くの株式を所有しているケースもあります。その会社の事業形態によって、大きく変えていける部分です。会社を所有しつつ経営を行っていきたい場合は、自身で多くの株式を所有し、同時に代表取締役になるという方法もあります。
事業活動を行う従業員
会社の中で、実際に事業活動を行うのは、従業員である場合が多いです。役員も事業の規模によっては、事業活動の大部分を行うこともありますが、会社規模が大きくなるにつれ、従業員の数も増えていくのが普通でしょう。
従業員の仕事は、事業の実務部分から、総務部分、営業活動など多岐にわたります。事業規模が大きくなるにつれ、従業員の数が増加、業務も細分化していくでしょう。規模が小さいうちは、ひとりで多くの役割を担うことも考えられますが、大きな会社になるにつれ、広報部門・人事部門など、内部を固めるための従業員が必要になってきます。会社設立時には、規模に見合った人員をあらかじめ確保しておく必要があります。
会社設立のための準備
会社の内容を決める
会社を設立するためには、いくつか決めることがあります。まずは事業内容を決める必要があります。事業内容は定款などに入れる必要がありますので、なるべくしっかりと決めておきましょう。事業の内容によっては、免許が必要な場合もありますので、あまり事業内容がぶれてしまうようでは後々困ることもあるでしょう。
定められた事業内容に合わない内容であると、経費計上に差支えが出るなどといったこともありますので、十分注意したほうがいいです。
会社の事業内容は、根幹に関わることですので、会社設立時にしっかりと定めておきましょう。もちろん、今後事業が拡大していくうちに、事業内容は変わったり増えたりすることはあるでしょう。その時は、定款などを変更追加することで、事業を変えたり増やしたりすることができます。
会社の名称を決定する
会社の名称を決めることは事業を円滑に進めていくうえで重要です。名称は長すぎても覚えてもらいにくくなりますし、同業他社と同じ名前であったり、事業をイメージしにくい名前であったりすると、不利になりやすいです。不正競争防止法にも注意を払う必要があるなど、注意すべき点はたくさんあります。
会社の名称は、慎重に決めましょう。従業員間で案を出し合って決めてもよいですし、クラウドサービスなどで募集してもよいでしょう。自分では思いつかなかったようなアイデアが上がってくることもあるので、ひとりで考えるよりは、アイデアを募集してみることもよいでしょう。
会社の名称は一度決めてしまうと簡単には変えることはできません。また、会社のブランディングにとっても重要なものです。よい名称をじっくりと考えるようにしましょう。
会社の代表印を作成
会社の代表印などを作成しておきましょう。社印と代表者印など、劣化しにくい素材でしっかりとしたものをつくりましょう。欠けてしまったりして、字が判別できなくなると、新たに作る必要が生じます。長く使うものですので、しっかりした素材を選びましょう。また、代表印は、契約書など会社運営や事業において重要な書類に使用することになります。作成には時間がかかるので早めに作っておくとよいでしょう。
会社の代表社員は出来上がったら、鍵のかかる金庫のようなところで大切に保管しましょう。また、使用できる人間を限るようにするなど、セキュリティ対策を行っておくとよいでしょう。代表者印を使って、重要な取引や貸し付けなどが行われます。紛失・盗難には十分に注意が必要です。
会社の定款を作成
会社設立が決まったら定款の作成が必要になります。定款は、インターネット上にひな形があるので、まずは見てみるとよいでしょう。絶対的記載事項を忘れずに、できれば戦略的に使えるように、定款を作成しましょう。
会社の定款は、会社がどういったものかあらわすものですが、株式会社の場合は、株式発行上限を定めることができるなど、戦略的に使うこともできます。とくに、会社の状況によっては、株主が死亡し、相続が行われた際に、相続人による株式の売却は非常に大きな影響を与えます。定款でこれを制限し、相続時には会社が買い取れるようにしておくこともできます。
このように、定款は単に作ればよいといったものではなく、戦略的に使うこともできるものなのです。定款の作成手順は、すべて自分で行うこともできますが、プロの手を借りたり、クラウドサービスを利用することもできます。もっとも手間が少なく、合った方法を選びましょう。
株式会社設立の主な流れ
公証役場で行う定款認証
定款は作成した場合、第三者に証明してもらう必要があります。これを定款認証と呼び、公証役場で行うことができます。公証役場は各々の地域にありますので、自分で定款をつくって、認証をもらうこともできます。
また、定款は、紙で作成するか、電磁的に作成するかを選ぶことができます。紙で作成すると課税文書扱いとなり、収入印紙が必要となります。一方、電磁的に作成することで、非課税扱いになり、収入印紙代を節約することができます。このことから、近年は電磁的定款作成が人気です。
定款は電磁的に作っておくことで、後で変更することも容易になりますので、データで残しておくとよいでしょう。また、作成にはひな形などの使用が便利です。
資本金を払い込む
会社設立には資本金が必要です。会社法の改正により、資本金はなくても会社設立は可能になりました。ですが、多くの場合は、最初に資本金を用意しての会社設立となることでしょう。資本金の名義は出資者本人となります。
会社が設立されるまでは、まだ会社の銀行口座ができていないので、会社設立発起人個人の銀行口座を用意する必要があります。資本金はそこに振り込み、振り込みの記録がわかる通帳のコピーをとっておきましょう。これを使用して、振り込み証明書を作成し、後日登記の際に使用します。
資本金は、会社が持っている事業に使えるお金のことで、この金額がその会社のパワーをあらわしているとされています。このため、資本金が多ければ多いほど、事業に使うことができるお金が多いことになり、パワーのある会社ということになります。
法務局に登記申請
会社設立には法務局に登記申請を行う必要があります。この登記申請は、代表取締役が行うこととなっています。もちろんこれは名義上のことで、実際の事務は従業員が行ってかまいません。この時点で、代表者印などが必要になってきますので、用意しておきましょう。
登記を行うことで、会社は正式に会社として認められるということになります。これで、今後、事業のために多くのことが可能となります。取引や借り入れも、スムーズに行えるようになるでしょう。
登記申請は、書類の作成などに時間がかかりますので、早めに取り掛かるとよいでしょう。会社設立のためには、多くの事務作業や時間がかかりますので、これらを行ってでも、事業のために必要なことであるか、よく考えてから行うようにしましょう。
株式会社設立後は税務署へ
2ヶ月以内に法人設立届出書
首尾よく株式会社を設立できた後も、まだやらねばならないことは残っています。会社は設立後、利益が生じた際は税金が課せられます。この税金を支払うために、あらかじめ税務署に届け出をしておく必要があります。
株式会社を設立したら、税務署に法人設立届出書を提出します。これは、税務署に会社ができましたと知らせるための書類で、これが受理されることで、税務署に会部式貨車の設立を認められたことになります。法人設立届出書は、会社設立から2ヵ月以内に提出しなくてはいけません。
また、このときに添付書類を忘れないようにしましょう。添付書類は定款のコピー、登記事項証明書、設立時貸借対照表、株主名簿です。これらをあらかじめ用意しておきましょう。
もともと、個人事業で行っていた事業を法人化した場合は、個人事業の廃業届も同時に出すようにしましょう。また、会社によっては、源泉所得税の納金の特例を受けることができる場合もありますので、該当した場合は出しておくとよいでしょう。この特例を受けることで、本来であれば毎月納税せねばならない源泉所得税の納税の回数を減らすことができます。その結果、振り込みの手間や経費を減らすことができるようになります。
青色申告の承認申請書
青色申告の承認申請書を提出しましょう。これは、該当法人のみ必要となります。申請書の書式は国税庁のホームページからダウンロードすることが可能です。法人税の申告は、白色申告と青色申告があり、白色申告の方が簡略化されたものとなっていて、作業としては楽になります。ですが、青色申告の方が、経費として計上できる幅が広く、節税効果が高いことから、青色申告を選択するメリットは大きいものとなっています。
法人の経理は複雑で、いちからすべてをひとりで行うことは非常に大変です。経理のために従業員を雇ったり、税理士を顧問につけたりする必要性が出てくることが想定されます。こういったことも踏まえて、白色申告にするか、青色申告にするか決めるとよいでしょう。
青色申告にする場合は、申請には期限がありますので、期限内に申請をするようにしましょう。基本的には会社設立の日から3カ月以内が期限とされています。これに間に合わなかった場合は、その年の申告は、青色申告で行うことはできません。設立時に青色申告を選択すると決めているのであれば、ほかの申請を行うときに、同時に申請してしまうとよいでしょう。
準備をしっかりして添付書類を忘れないようにしよう
会社設立は煩雑な作業が必要となり、多くの人にとって初めての作業となるはずです。事前にしっかりと準備をし、申請をスムーズに行えるようにしましょう。添付書類などを忘れたことによって、設立や認証が遅くなり、事業に影響が出ないように注意しましょう。
また、会社設立後も、株主総会や、必要に応じての定款の変更など、行わねばならない事務作業は多く、会社設立のデメリットとされています。メリット、デメリット両方をよく検討したうえで、事業にとって本当に会社設立が必要か、よく考えましょう。
事業にとって、よりよい形は何か、しっかり勉強して判断してからでも、会社設立は遅くないはずです。場合によっては、個人事業主として事業を行う方がやりやすいこともあるでしょう。自分のケースに当てはめて、有利に事業が展開できるように、会社設立と向き合いましょう。よい答えを出せるといいですね。