個人事業主から法人化へのステップ。メリットを知ってしっかり判断

事業を始めて、「収入が増えてきた。」「そろそろ節税を検討したい。」このような理由で、法人化を考えることもあるでしょう。ですが、法人化にはメリットもデメリットもあります。事務量の増大や法人税のことをよく知り、賢く選択しましょう。

目次

個人事業主が法人化すると有利なポイント

税負担を軽減できる


個人事業主が法人化することで、税負担を軽減できる可能性があります。一定以上の所得がある場合、累進課税といって、年収や利益水準が高い人ほど税は高くなります。この高くなった税を軽減する方法として、課税額を減らす方法があるのです。

課税額を減らすためには、かかった経費を計上し、税控除額にあてる方法があります。青色申告でもある程度の経費計上は可能で、税の特別控除最高65万円もありますが、法人化することでさらに経費計上できるものを増やすことができるのです。経費計上するものを増やすことで節税につながることは多く、法人化する際の大きなメリットのひとつとされています。

法人は信用度が高い

法人化するメリットのひとつとして、信用度が上がることがあります。取引先や金融機関の中には法人のみと取引をするところもあり、個人事業主ではこういったところとの取引ができず、チャンスを逃してしまうこともあり得ます。法人化することで、事業の幅が広がる可能性があるのです。

とくに金融機関からの貸し付けは、個人でも借りることはできますが、法人化することでさらに高額な貸し付けを受けることができるかもしれません。また利率なども信用が上がることによって、有利になることもあります。期間も長期間になるなど、多くの優遇が見込めます。

個人事業主が増え、かつてよりは不利な要素が減ってきてはいますが、それでも法人の方が信用されやすい場面は、確実にあると言えるでしょう。

赤字の際の繰越期間が長く有利

法人化のメリットのひとつに、赤字を繰り越せることがあります。青色申告をしている個人事業主であっても、最長3年は赤字繰越が可能です。これだけでも十分なメリットがあるといえますが、法人化することでさらに長く、最長9年間の赤字の繰り越しが可能になります。

赤字が繰り越せることで、今後黒字が出た際に計上することができ、その分の課税額を減らすことができるようになります。その結果節税につながることがあり、金額によっては非常に大きなメリットとなります。赤字が出ることが多い、または経費が突出してかかる年がある場合は、うまく利用することができるかもしれません。逆に黒字が突出して多い年に、過去の赤字をぶつけることで課税額をうまく減らすこともできます。

事業に適した事業年度を設定できる

事業年度を設定することができるのも、法人化の大きなメリットです。法人化する際に、定款で決算の時期を定めることができます。この時期によって、決算対策をすることができるのです。繁忙期を避けるといった事務作業上の問題を解決することもできますし、決算時期によっては経費の調整をすることもできるでしょう。

経費計上できるものが少なく収益の方が高くなりすぎると、課税額が高くなりますのでこの調整を行いやすい時期に決算期を持ってくるとよいとされています。決算の時期は、定款を変更することでいつでも変更可能ですので、事業や税制上有利になるように設定しましょう。

給与所得控除や退職金制度の活用

所得部分の課税額を調整することができるのも、法人化のメリットのひとつです。給与所得控除や退職金制度を活用することで、控除額を増やすことができます。給与と報酬では、給与の方が課税率が低いことが多く、所得税額を減らすことにつながりやすいのです。退職金も同様、またはそれ以上に、税制上優遇されています。こういったことは所得税の軽減につながりますので、大幅な節税が可能になります。

とくに退職金制度は勤務年数に応じて、かなりの額を非課税にすることができます。このことは大きなメリットであり、この制度を利用できることで、大幅な節税が可能になるのです。従業員が多い場合などは、とくにメリットが大きくなる場合もありますのでよく検討しましょう。

社会保険制度が家族にも適用される

法人化することで、事業主本人が社会保険に加入することができるようになります。このことから、扶養している家族も社会保険への加入が可能になるのです。社会保険は、扶養親族分の保険料を支払う必要がなく、この点が国民健康保険と比べて大きく得になる部分です。

国民健康保険には扶養家族という考え方がないので、加入している人数分の保険料を支払うことになります。これを、社会保険に変えることによって、扶養家族の分の保険料を減らすことができる可能性があります。

扶養に入るためには、一定の条件をクリアする必要がありますが、条件さえクリアできれば何人でも社会保険に加入でき、ひとり分の保険料で済むのです。この点は国民健康保険にはない、大きなメリットといえるでしょう。節税だけでなく、こういったメリットも法人化の際には検討材料となります。

個人事業主が法人化を考える際の注意点

事業所得を把握する


個人事業主が法人化を考える際に注意すべきことのひとつに、事業所得の金額があります。事業所得の金額によっては、むしろ税負担が増える可能性もあるのです。さらに、個人事業主として健康保険に加入していた時よりも、結果として保険料が重くなるといったデメリットが生じる可能性もあります。社会保険料は会社と本人で折半することになりますので、総額でみると国民健康保険加入時よりも高くなることもあるのです。

また赤字であっても、税金負担があるといったデメリットがあるのも法人化の特徴です。住民税の法人税部分は、仮に利益が出なくても負担しなくてはならないため、法人化後に利益が出なかった場合は、純粋に支出が増えることになるかもしれません。

まずは、事業所得を把握し、今後の見通しを立てることから法人化を検討してみてください。場合によっては、税理士のような専門家に相談してみるのもよいでしょう。

会社設立時や経理税務に手間と費用がかかる

法人化することで、事務作業が増えることがあります。まずは、会社設立時に定款をつくったり、株式を発行したりと、かなり負担になる作業が発生します。法人化のための作業に時間がかかり、なかなか法人化できないこともあるでしょう。こういった事務作業を専門家に依頼すると、さらに費用の負担が増えることもあります。この時点でかなりの費用がかかる可能性もあり、法人化のハードルのひとつといえるでしょう。

また、会社の形態により異なりますが、多くの場合手続きが複雑になり、個人では処理しきれなくなることも多いです。結果として税理士などに委託することになり、税理士費用が増えることもあり得ます。経理の煩雑化から従業員を増やす必要が生じることもあり、かえって経費負担が増えることも考えられます。このような手間と費用を考えても、法人化にメリットがあるかどうかは、よく検討しましょう。

個人事業主でも交際費が多い場合

また事業の内容によっては、法人化することでかえって経費計上できる金額が減ることも考えられます。その理由のひとつに、法人は交際費に上限があるためです。接待が多い事業であれば、法人化することで交際費の計上額が減ってしまうケースも考えられるでしょう。個人と法人は別物であり、交際費に関しては法人の方が区別が明確です。

損金や経費の計上幅が増えることは法人化のメリットですが、法人化することで、経費の区分が厳しくなり、決算などの事務が複雑になります。税務署の調査も入りやすくなります。その結果経費計上できる金額が減ってしまい、課税額が増える可能性もあります。法人化したことによって税負担が増えることのないように、事業の内容を洗い出して、細かく検討するとよいでしょう。

事業に適した決断は長短の把握から


個人で行っている事業を法人化することは、メリットの大きいものであると考えられていますが、必ずしもそうでないケースもあります。まずは、事業に法人化が適しているかどうか、今の事業内容を洗い出すことから始めましょう。

法人化することで、事務作業が増えるといったデメリットは必ず発生します。その結果支出が増えることも十分考えられますので、法人化することで事業規模を広げられ、収益が増えるかをまずは計算しましょう。

税制上のメリットだけで法人化すると、負担の方が大きく感じる可能性もあります。そういったことがないように、多方面からよく検討し、長短をしっかりと把握するようにしてください。税理士に相談することも必要なステップかもしれません。損をしないように、法人化の有無を決めましょう。

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