法人事業税について。納税額を計算するのに必要な知識を理解しよう

法人が治める税金の1つである法人事業税。細かく分けると3種類あり、法人によって納める税金が異なったり、法人の種別や所得金額で税率が変わってきます。そのため、税率や計算方法を理解することで、正確な納税額を算出することができるでしょう。

法人事業税の概要

法人税を構成する3種類の税金のひとつ

法人事業税とは法人、つまり企業が国に治める税金のひとつで、法人所得税、法人住民税と併せて「法人税」と呼ばれています。法人所得税と法人住民税は個人でいう所得税と住民税のことですが、法人の場合のみ、個人にはない法人事業税というものが課税されます。税率は以下のとおりです。

☑1.普通法人の税率:6.7%
☑2.所得の金額が400万円以下:3.4%
☑3.400万円超800万円以下は5.1%

ただし、軽減税率不適用法人と判定された場合は、所得の規模に関わらず税率は6.7%になります。

法人の事業所が都道府県に対して支払う

法人事業税は、収益事業を行っている法人のみ各地方自治体に納税します。法人事業税を課税しているのは国ではなく、地方自治体のため間違えないようにしましょう。法人事業税は所得に応じて算出され、黒字出ない場合はゼロという事になります。
法人所得税と法人住民税は損益算入をすることができませんが、法人事業税は損益算入が認められています。また、財団や社団の場合でも収益事業を行っており、法人とみなされた場合は納付しなければなりません。

法人事業税の仕組み

事業税額は所得と税率で計算を行い、累進税率によって課税されます。また、法人事業税の他に国に対して納税する地方法人特別税額というものがあります。
これは平成20年に施行された税制で、法人事業税の税額を下げ、その分国に納税するというもので、基本的に損得はありません。一時的に作られたもので、消費税引き上げとともに廃止される予定となっています。

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外形標準課税について

資本金1億円超の法人を対象に、平成16年4月1日より「外形標準課税」が導入されました。これは事業所の床面接や資本金、従業員、そして付加価値などが課税ベースになり納税額を算出します。

所得に対して課税する法人事業税の場合、赤字であれば納税を免れることになりますが、外形標準課税は赤字法人に対しても課税することができるため、景気に左右されることがありません。この外形標準課税法人かそうでないかによって法人事業税の税率に違いがみられるため、税率をしっかり押さえておくことが重要となります。

法人事業税の計算方法とポイント

法人事業税の計算方法

法人事業税は所得割・付加価値割・資本割の3つに分かれています。それぞれの概要は以下の通りです。

所得割

所得に課される税金で、各事業年度の所得に応じて算出されます。算出方法は「所得×税率」となります。

付加価値割

付加価値割は「単年度損益」と「収益配分額」を合計した額に税率をかけて算出します。付加価値割税率は1.26%です。単年度損益は繰越欠損控除を行う前の前の法人事業税の所得金額で、収益配分額は報酬給与額や純支払利子、純支払貸借料の3つからなり、それぞれの算出方法は以下になります。

☑1.報酬給与額=報酬、給与等+企業年金等の掛金
☑2.純支払利子=支払利子-受取利子
☑3.純支払貸借料=支払貸借料-受取貸借料

ただし、報酬給与額が収益配分額の70%以上を占める場合は軽減措置があります。

資本割

資本金等の額を標準に算出します。(資本金と資本準備金の合計額)資本割の税率は0.525%です。ただし、無償増資や無償原資などで、欠損補填を加減した額が、資本金等の額よりも上回ってしまう場合は、その金額が課税標準となります。

事業の種類と納める税について

法人事業税を納める際は事業内容によって納める税が異なります。

☑1.電気供給業、保険業、ガス供給業:収入割
☑2.1以外の事業で、資本金か出資金の額が1億円を超える法人(特別法人、公益法人など以外)が行うもの:所得割、付加価値割、資本割
☑3.1、2以外の事業で、特別法人や公益法人が行うもの:所得割

地方法人特別税額の計算方法


地方法人特別税額は、所得割額か収入割額の標準税率相当額を元に算出していきます。つまり所得割×税率(収入割額×税率)が地方法人特別税額となります。なお、地方法人特別税額の税率は事業開始日と外形標準課税法人であるかそうでないか、所得割額か収入割額かで違います。

所得割額の場合

(外形標準課税法人以外)

☑1.平成28年4月1日〜平成31年9月30日までに開始する事業年度:43.2%
☑2.平成27年度4月1日〜平成28年3月31日までに開始する事業年度:43.2%

(外形標準課税法人)

☑1.平成28年4月1日〜平成31年9月30日までに開始する事業年度:414.2%
☑2.平成27年4月1日〜平成28年3月31日までに開始する事業年度:93.5%

基準法人収入割額

☑1.平成28年4月1日〜平成31年9月30日までに開始する事業年度:43.2%
☑2.平成27年度4月1日から平成28年3月31日までに開始する事業年度:43.2%

資本金1億円以下の場合は所得割のみで計算

先述したとおり、法人事業税には3種類ありますが、資本金1億円以下の企業は所得割のみ納めればよいこととなっています。付加価値割や資本割はかからないため、注意しましょう。付加価値割と資本割は合わせて「外形標準課税」といいます。そのため、資本金額1億円以下の会社は、事業税でも税金が少なくて済むのです。

実際の法人事業税の計算例

法人事業税の説明や計算方法などを踏まえて、実際に法人事業税を計算してみましょう。

法人事業税の計算

例えば、A社の29年度の収入が2,000万円、経費が1,700万だとします。法人事業税は収入から経費を引き、税率をかけたものは以下です。ただし開始した事業年度によって税率が異なるため、各自治体のHPなどで確認するようにしましょう。

(2,000万円ー1,700万円)×3.4%=102,000円

地方法人特別税額の計算

次に、そのままA社の地方法人特別税も計算してみましょう。地方法人特別税額は地方法人税に税率をかけたものは以下になります。

102,000円×43.2%=34,000円

法人事業税の軽減措置

軽減税率適用法人の条件

法人事業税の所得割には軽減税率が設けられています。軽減税率適用法人とは名前の通り税率が軽減される法人のことです。適用されれば、税率が下がり、納税額を抑えることができます。条件は2つあり、どちらかを満たしていれば、対象となります。

☑1.3つ以上の都道府県で事業所を設置していない
☑2.期末資本金が1,000万円未満

つまり、「小さな会社には税金をあまりかけません」ということです。どちらかを満たしていればいいので、中小企業のほとんどはこの軽減税率の条件を満たしていると考えられます。もし資本金が1億であっても事業所が3つ以上の都道府県になければ対象になるといえます。

軽減税率の場合の税率

軽減税率の税率は外形標準課税法人かそうでないかによっても変わってきます。

(外形標準課税法人)

☑1.所得金額が400万円以下:0.395%
☑2.400万円超え800万円以下:0.635%
☑3.それより上:0.88%

(普通法人)

☑1.1400万円以下:3.65%
☑2.400万円超800万円以下:5.465%
☑それ以上:7.18%

軽減税率でも外形標準課税法人か普通法人で変わり、さらに所得金額によって税率が違います。そのため、算出するときは所得金額に応じた税率で計算しましょう。

軽減税率不適用法人の税率

先述した軽減税率に適応しない法人は税率が軽減されません。軽減されない場合の税率は以下になります。

外形標準課税法人の場合:0.88%
普通法人:7.18%

これは所得金額に関わらずこの額となります。軽減税率不適用法人の場合は税率が変わらないため、計算しやすいと言えますが、軽減税率法人の場合は所得金額によって税率が変わるため確認しましょう。

法人事業税の仕組みを理解し納税額を把握する

法人事業税の仕組みは少し複雑なため、納税額を把握しづらいところがありますが、しっかりと理解することで、正確な納税額を算出することができます。税率に関しては法人の種別や所得金額などさまざまな条件によって変わってくるため、わからない場合は税理士に相談したり、税務署に確認するのもよいでしょう。特に所得金額は増減があるため、必ず所得金額を確認が必要です。

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