法人事業税の仕組みやその申告・納付方法まで知りたい情報を徹底解析

法人税の一つである法人事業税。どのような場合に発生するのか、またその法人事業税の仕組みがどのようになっているのか。法人事業税の様々なパターン別の計算方法や申告・納付の方法等、それぞれの期限の超過の場合といったことまで徹底的にチェックします。

法人事業税について

法人事業税は法人税の一つ

法人税の中には、「所得税」「法人事業税」「法人住民税」という三種類の税金が含まれており、全てを総称して法人税と呼ばれています。また、国税庁が管轄する書面において正しくは「法人税等」という表記がなされています。

法人事業税とは、法人に課される法人税の一つで、その法人が得た所得に対して、その法人の事務所や本店、支店や工場を含む事業所の所在する各都道府県に支払う税金のことをいいます。

法人事業税の納税義務がある法人

法人の中には法人事業税を納税しなければならない法人と、納税の必要がない法人があります。この違いとは、「収益事業を行っているかどうか」というものです。つまり、法人事業税の納税義務は「収益事業を行う法人のみ」に課せられています。

また、この法人事業税においては、一般的にいう法人税や法人住民税とは異なり、損益算入可であることも特徴として挙げられます。

資本金が1億円以上だと税率が変わる

法人事業税の納付額において、その法人の資本金が1億円以上である場合には、外形標準課税というものが適用されることにより所得のほかに資本金、付加価値に至るものが課税標準とされることが通例です。

なお、この税率に関しては各都道府県別にきめられており、外形標準課税制度が適用された納税額となります。

法人事業税の仕組み

法人事業税とは、その法人が得た所得に対して課税されるもので、法人税のうちの一つです。特徴としては、その事業所の所在の都道府県に支払うことが挙げられます。

この法人事業税の納付額は「所得×税率」の計算式によって算出されるため、その都度その法人に課せられる法人事業税額も異なります。

また、平成20年10月1日付けで「地方法人特別税」というものが課税されるようになりました。こちらに関しては、国に納付する税金になります。暫定措置ではあるものの、地域間における税源偏在の是正を目的として創設されました。今まで法人事業税として都道府県に納めていた税金の標準税率を下げることで生まれた余剰金を地方法人特別税という名前によって国に納めるというものです。

法人事業税の計算方法

普通法人の事業税計算方法

法人と一言でいっても区分として3つに分けることができ、そのうちの一般の法人や法人ではない社団または財団のことを「普通法人」と呼びます。以下が普通法人に課せられる法人事業税の計税率です。

資本金1億円以下の場合の各収益金額別普通法人に課せられる税率

☑ 年間400万円以下の場合:3.4%
☑ 年間400万円を超えて800万円以下の場合:5.1%
☑ 年間800万円を超える場合:6.7%

特別法人の事業税計算方法

「特別法人」とは、共同組合や信用金庫といった金融機関や医療法人等といった、地方税法の規定において法人事業税の減税措置が適用されている法人のことをいいます。以下が特別法人に課せられる法人事業税の税率です。

資本金1億円以下の場合の各収益金額別特別法人に課せられる税率

☑ 年間400万円以下の場合:3.4%
☑ 年間400万円を超える場合:4.6%

収入金課税法人の事業税計算方法

「収入金課税法人」とは、私達の生活にかかわる電気やガスの供給会社をはじめ、生命保険や損害保険といった保険会社のことをいいます。以下が「収入金課税法人」に課せられる法人事業税の税率です。

☑ 収入金課税法人の場合にはその収入金額に対して0.9%が課税されます。この収入金額の計算方法は以下の通りです。

収入金額(課税標準額)=収入すべき金額の総額−控除すべき金額

外形標準課税制度対象法人の場合

「外形標準課税制度対象法人」とは、その法人の資本金もしくは出資金の額が1億円以上の法人のことをいいます。

外形標準課税制度対象法人に課される法人事業税の税額には大きく分けて三種類あります。

☑「所得割」:各事業におけるその年度の所得に税率をかけることで算定されます。

超過税率適用の場合であれば、該当する外形標準課税法人の所得割にかかる税率は0.88%になります。しかしながら、所得の金額が400万円以下の場合であれば0.395%が、400万円を超えて800万円以下の場合であれば0.635%まで軽減されます。

また、外形標準課税法人であっても、資本金もしくは出資金の額が1,000万円以上で、3都道府県以上に事務所または事業所がある場合には軽減税率不適用法人と判断され、その税率は一律で0.88%と定められています。

☑ 「資本金割」:その法人の資本金もしくは出資金と資本積立金の合計から成り立っています。

資本金や出資金といったものの合計額が1,000億円を超過する部分の課税標準額がその金額に応じて圧縮されるというものです。また、場合によっては条件がありますが、持ち株会社であればその資本金等のうちの一部である総資産に占める子会社の株式分の金額に関して、その法人の課税標準から控除することができます。

☑ 「付加価値割」:賞与や手当、また退職金として知られる「報酬給与額」、法人の支払う利子から受け取った利子を引いた額である「純支払利子」、そして土地や家屋といった不動産の支払賃借料からその法人が受け取った賃借料を引いた額である「純支払賃借料」。さらに繰越欠損金控除前に稼いだ税法上の儲けである「単年度損益」から成り立っています。

この付加価値割において、その金額がマイナスであれば「単年度損益」を除いた「純支払利子」、「報酬給与額」、そして「純支払賃借料」の合計金額から成る『収益配分額』よりその欠損金額を控除することができます。また、収益配分額のうちの「報酬給与額」が70%以上の割合を占めている場合にはその超過している金額を収益配分額より控除します。さらに、このときの超過している金額のことを「雇用安定控除額」と呼びます。

事業税額の計算例

いかなる法人の種類であっても、その法人に課せられる法人事業税額の計算方法は同じものが用いられます。

法人事業税=(事業による収益額−その事業にかかった費用)×法人事業税の税率

例えば、年間500万円の収益のある普通法人で、その事業にかかった費用が250万円であれば、その法人事業税は(5,000,000−2,500,000)×5.1という計算によって求められ、実際に支払う法人事業税は12,750,000円となります。

地方法人特別税の計算方法

地方法人特別税とは、法人に課せられる法人事業税において、所得割額もしくは収入割額の標準税率相当額に課される税金のことをいいます。

法人事業税を計算する上で出された所得金額もしくは収入金額に各法人が該当する法人事業税の税率をかけたものを所得割額もしくは収入割額といい、地方法人特別税はこの数値を使って計算します。

☑ 地方法人特別税=基準法人所得割額もしくは基準法人収入割額×地方法人特別税の税率

法人事業税の申告と納付について

法人事業税の申告方法と期限

法人事業税の申告方法には2種類の方法があります。

一つは、中間申告により、その事業における年度の開始日以降6ヶ月を経過した日より2ヶ月以内に予定申告もしくは仮決算を利用した中間申告により申告、納付します。このとき、予定申告であれば、「その事業の前年度に課せられた税額÷その年度における月数×6」の計算による税額を。仮決算を利用した中間申告による申告であれば、「仮決算の所得金額(収入金額)×税率」の計算による税額を納付します。

もう一つは確定申告による申告です。こちらの場合には基本的には決算に基づいてその事業の年度終了日より2ヶ月以内に申告するものが一番多い割合を占めています。また、そのほかの事例としては、定款やその法人の規約に定められている定時総会がその事業の年度終了日より2ヶ月以内に召集することができない法人はその事業の年度終了日より3ヶ月以内に申告します。

例外として、連結法人に該当する法人の場合はその事業の年度終了日より4ヶ月以内に申告する必要があります。いずれの場合においても、その法人事業税の申告該当税額は「所得金額(収入金額)×税率−中間納付額」という計算により算出されます。

期限内に申告をしなかった場合

万が一、期限内に申告をしなかった場合には、様々なペナルティが課せられることになっています。

無申告加算税(不申告加算金)

申告期限内に税金を納めていないというペナルティとして、納付する予定の法人事業税額に対し、5%の金額を加算されることになります。

延滞税(延滞金)

申告期限の期日を開始としてそれ以降遅れて納めた期日までの利息分がペナルティとして加算されることになります。

期限内に納税をしなかった場合

納付の期限内に納税をしなかった場合には、原則として延滞金という名のペナルティが課されることになります。この延滞金の計算方法としては、以下の式をもとに計算がなされます。

納付すべき税額×延滞税の割合×納付までの遅延日数÷365(日)

また、納付期限であり、その期限後申告提出日までの期間と納付期限の翌日より2ヶ月までに納付が完了した場合には2.8%が。2ヶ月を超過した場合には、申告期限の翌日より2ヶ月後の翌日以降の期間の日数分に関して9.1%が加算されることになっています。

なお、延滞金はその年により変わるため、該当する場合には国税庁のホームページを確認しましょう。また、延滞金は原則として新たに納税するべき本税の額に対してかかるため、加算税には課されることはありません。

申告や納付が間に合わない場合の対策

法人の確定申告において申告の期限までに間に合わない場合には、申告期限の延長の特例として、その申告の延長手続きをすることが認められています。

原則として、延長が可能な理由には制限が設けられています。

災害などのやむを得ない理由が発生してしまった場合

地震や台風・洪水といった災害がおさまった日より2ヶ月以内において申告期限の延長を申請することが可能です。

また、この理由においてはさらに2種類のケースが存在し、一つは地域指定による期限延長というものです。比較的大規模な災害が発生したときにその被害が広範囲に及んだ場合、国税庁長官が直接その該当地域と延長可能期限を定めます。特別に税務署に延長の申請をする必要はありません。

もう一つは個別指定による期限延長というものになります。こちらでは、国税や、庁長官が指定していない地域で災害が発生した場合や、本店や本部が指定地域外にあるために地域指定が行われた地域で支店や事業所が被災していても、地域指定による期限延長が受けられないなどの場合には各法人が個人的に税務署に期限延長の手続きを申請することで延長の措置を適用することができます。

期限の延長の対象となるもう一つの事例

会計監査人の監査を受けなければならない等、決算が確定しない場合には期限の延長の申請をすることが可能です。この場合の申告期限の延長は1ヶ月の延長を限度としています。

以上の理由から申告期限の延長をしていても、災害などのやむをえない理由を除いて、原則として税金の納付の延長をすることはできません。そのような場合には、延滞金の発生を回避するために、前年度の納付履歴を参考とした見込納付をする必要があります。

見込納付とは、たとえ決算が確定していなくても仮に概算として先立って納付をすることで納付そのものの期限に間に合わせるというものです。また、このときに納付した税額の差額分は申告の更正の請求手続きを行うことでその差額分は返還されるようになっています。

法人事業税の納税証明書について

納税証明書の種類

交付してもらえる納税証明書には6種類あることをご存知でしょうか。以下はその該当する納税証明書の種類と内容です。

☑ 納税証明書(その1):納付すべき税額の記載、およびその法人が実際に納付した税額。もしくは未納の場合であれば、その身納税額等の証明となります。

☑ 納税証明書(その2):その法人の所得金額の証明として、実際に法人税にかかわる所得金額の証明となります。

☑ 納税証明書(その3の1):その法人には未納の税金がないという証明をするものです。

☑ 納税証明書(その3の2):その法人にかかわる申告所得税及復興特別所得税と消費税及地方消費税における未納の税金がないことの証明になります。

☑ 納税証明書(その3の3):その法人が納付する法人税と消費税及地方消費税において未納の税金がないことの証明をするものです。

☑ 納税証明書(その4):その法人が納税したことの証明を受けようとしている期間において、あらゆる税金に関して滞納処分を受けたことがないという証明をします。

納税証明書の入手方法

納税証明書の入手方法には大きく分けて三通りの方法があります。

☑ 1.税務署窓口に直接行って納税証明書の交付請求書に必要事項を記入し、そのまま窓口で交付の請求をする方法になります。必要準備物:納税証明書交付請求書(国税庁ホームページ上にでダウンロード可能)、本人確認書類、印鑑、交付手数料(現金もしくは収入印紙での支払)、(代理人による請求の場合には本人からの委任状含む)

☑ 2.国税庁ホームページにてダウンロードした納税証明書交付請求書に必要事項を記入し、交付手数料分の収入印紙を準備します。納税証明書交付請求書と収入印紙、返信に必要な額の切手を貼り付けた返信用の封筒を全てが入る封筒に入れて、その封筒に必要な額の切手を貼り付けて郵送にて請求する方法になります。

☑ 3.インターネットを利用して、e-Taxのシステムにて納税証明書の交付請求をすることが可能です。この場合には、書面形式の納税証明書を税務署窓口で交付手数料の支払いと引き換えに受け取ることができるほか、電子証明書とカードリーダがある場合には電子納付による交付手数料の支払い完了後に税務署より郵送してもらうこともできます。

また、インターネットでの請求においてその交付手数料をペイジーが対応しているインターネットバンキングといった電子納付をすることで、利用90日間の間であれば何度でも取得が可能な電子ファイルとして受け取ることも可能です。

書面での発行手数料は、納付証明書その1・2ならば「その税目数×年度数×枚数×400円(現在より遡って3年分の請求が可能)」、また、その3・4に関しては1枚につき400円となります。

電子納付による発行手数料は、納付証明書その1・2その1・2ならば「その税目数×年度数(×枚数)×370円」、その3・4ならば「(枚数×)370円」となります。電子ファイルでの受け取りならば期間中に何度でもダウンロードが可能なため、枚数は1枚としてカウントします。

仕組みを理解した上で法人事業税を納めよう

法人税における法人事業税において、その法人が属している法人の分類によっても税率が変わるほか、外形標準課税制度対象法人であればその納税に関する計算方法も異なってきます。

また、法人事業税においてもその申告や納付の期限に関わるペナルティも同様に存在しているため、各決算の後には期限に注意して納付する必要があります。

納税証明書の交付をして貰う際には、その種類が多いことから、何が必要になるのか、また発行手続きには何が必要になるのかといったことまでチェックしておくようにしましょう。

さらに詳しく知りたい方は
税理士に無料相談LINEChatworkメール

関連記事