いまさら聞けない「法人税率」、損をしない賢く会社を設立するコツ

会社を設立しようと思うと誰もがぶつかるものが、法人税率です。法人税ってどのような税金なのでしょうか。初めて会社を設立する人にとっては、そのような疑問がたくさん出てくると思います。ここでは、会社を設立するうえで必要な知識をみていきましょう。

目次

法人税率の基本的な情報

資本金額によって税率が変動

誰もが会社を設立する際に悩むのが資本金をいくらにするのか?ということです。会社を設立する際に資本金額を増やすことでどうしても支払う税金が増えてしまいます。現状、1,000万円の壁というものがあり、資本金が1,000万円を超えると、法人税が高くなる仕組みになっています。

もし資本金額が1,000万円より少しオーバーしているようなら少しでも資本金を下げて法人税額を下げるということもできます。また、1億円以下の中小企業であれば軽減税率が適用されたり、法人住民税の均等割税金が1,000万円を超えると値段があがりますが、1億円を超えるとさらに高くなるので法人税を安くすることができるなどのメリットがあります。

中小企業は税率負担が軽い

中小企業とは資本金または出資金額が1億円以下の企業や、資本金または出資を有していない企業のことをいいます。中小企業に対する税制上の優遇処置は企業が事業に用いる設備に対して投資を行う設備投資に対するものが多くなっており、設備投資しない中小企業にはあまりメリットがないのが現状です。

ですが、中小企業には税率の軽減(軽減税率)や欠損の繰り越しなどを受けることができるメリットがあり、資本金額または出資額が1億円以下で指定の基準に当てはまっている中小企業には、税制優遇の制度が適用されます。

現在の法人税の税率は、大企業で23.4%、中小企業は所得のうち年間800万円以下なら税率15%が適用されます。しかし、中小企業でも所得が年間800万円以上であれば23.4%となってしまうので注意が必要です。また平成30年には法人税の税率が23.2%まで引き下げられることになっています。

所得割に関する法人事業税は引き下げ

法人事業税とは、法人がある都道府県の消防や警察などの行政サービスや公共の施設を利用するために、サービス料を負担する税金のことをいいます。電気供給業、ガス供給業、生命保険業、損害保険業を行う法人に対しては所得ではなく収入金額に対して課税されることになっています。

法人事業税は本来は所得割、付加価値割、資本金割の3つで構成されていますが、資本金が1億円以下の場合は付加価値割と資本金割はかからず、所得割のみで納めればいいということになっています。このため、資本金1億円以下の法人が払う税金は所得割のみになることから納める税金が安くなるわけです。

地方特別法人税は引き上げ

現在の日本は都市部に大企業の本社が多く集中していることから、法人税のかなりの部分が大都市に集中しています。この影響で地方の法人税は少なくなってしまっています。このことで都市部と地方で豊かさに差がでてきてしまいます。格差を緩和するために地方特別法人法を国税として集めて地方に渡すという税金です。

地方特別法人税は、地域間の資本金が1億円より多い場合の法人に課せられることになります。地方特別法人税は所得割と付加価値割と資本割を合わせた金額に税率を上乗せして計算されます。いままでの地方特別法人税は67.4%でしたが、平成27年4月1日から平成28年3月3日までは93.5%となりました。そして、平成28年4月1日から平成29年3月31日までは152.6%に引き上げることが決まっています。つまり、地方特別法人税の税金は増えるということになります。

法人住民税は資本金と従業員数により異なる

法人住民税は地方税という扱いになっていて、法人でも自治体のサービスを受けいれているという観点から法人の事務所がある地方自治体への納付の義務がある税金です。資本金が1,000万円をかわきりに法人住民税の均等住民税が上がったのと同じように、1億円上がるとさらに高くなります。

法人住民税は、資本金額によって計算される法人税割と会社の規模によって計算される均等割を足したことで計算されます。このため、資本金額と会社の規模、つまり従業員数によって変わってくるわけです。

実効税率は段階的に引き下げられる

実効税率とは会社の利益に対する法人税、法人住民税、法人事業税の実質的な負担率のことをいいます。実際の税額を計算するのに使われるのは表面税率です。本来は実効税率を求めるには法人税、法人住民税、法人事業税を足せば計算することができます。

現在の法人税の実効税率は34.62%ですが、平成27年4月1日から平成28年3月31日までは32.11%、平成28年4月1日から平成29年3月31日までは31.33%引き上げられることが決まっており、段々下がってきています。また、日本企業の国際競争力の向上や海外企業を誘致するために20%台を目標に引き下げる方針になっています。

最終的には20%で推移する予定

現在、日本の法人税の法人税率は世界各国と比較しても高くなっています。以前の基本税率は23.4%でしたが、平成28年4月1日以降に設立した法人に対しては23.4%へ引き下げました。また、平成30年4月1日以降に設立する法人に対しては23.2%まで引き下げることが決定しています。

そして、企業がより利益を上げて銀行や証券会社などのさまざまな金融機関へ自由に投資する国内投資や賃金上げをすることにより、積極的に取り決めるように法人実効税率を20%まで引き下げる予定になっています。

法人税率における世界と日本の比較

日本はアメリカに並んで高水準

現在のアメリカと日本の法人税率はほぼ同じといっていいほど高い水準の税率を保っています。国税と地方税を合わせた法人課税の実効税率が、日本は国税が27.37%、地方税が13.50%であり、合わせて40.87%という値になっています。

一方のアメリカは、国税が31.91%、地方税8.84%であり合わせて40.75%という値になっています。現在のアメリカは2兆6000億ドルもの莫大な利益を海外へ払ったまま戻ってこない状態になっており、このような資金がアメリカへ流れもどらない限り課税することができません。

そして、アメリカは同じ会社の系列でもバラバラになっている親会社と子会社などの企業グループを1つの企業として法人税を課税とする連結納税制度を導入していますが、日本は導入していません。よって、日本はアメリカより実効税率が高い可能性があるかもしれません。しかし、今後アメリカは法人税率を15%まで下げることが検討されています。加えて、アメリカ内に本社がある企業が、アメリカ外で稼いだ利益の大部分を課税対象外にする法人税制度も検討されています。

ヨーロッパは40%越え

日本の法人税率は高いとよくいわれていますが、フランスやイタリア、フィンランド、デンマークなどのヨーロッパでは一時期40%を超え、ドイツでは54.5%まで高くなっていました。今は少し下がっていますが、フランス、ドイツ、スペインでは30%台を維持することができています。その背景に、世界経済が国家や境界を越えて世界規模に拡大することによってさまざまな変化を起こすグローバル化となったことより、企業がコストを抑えるためにより法人税率が低い国へ登記しようと考え出したことで下がりつつあります。

タックスヘイブン政策を行う国は低い

タックスヘイブンという言葉をご存知でしょうか。上記で少しお話したように経済がグローバル化したことにより各企業がコストをおさえるために税率が低い国へ登記しようと考え出します。またこの動きを利用して産業に乏しい小さな国がグローバル化したこの世界で生き残るために意識的に法人税率を下げて企業を呼び寄せようとする政策のことです。

アイルランドがその代表国で、1990年当時は43%あった法人税率が2008年には12.5%まで落ちてしまいました。しかし、アイルランドは12.5%という低い法人税率を武器にして多くの企業を呼び込むことに成功していて、アップルやグーグルなどのアメリカの大企業や武田やアステラスなどの欧州企業などがアイルランドへ進出しています。アイルランドのほかにも、ルクセンブルクやモナコ、サンマリノ、モルディブやシンガポールなどが有名です。

イギリスは先進国の中でも低い

先進国の中でもイギリスは法人税率が低い水準となっており、現在の法人税率は20%となっています。そして、2017年6月23日(日本時間では24日)にイギリスが国民投票でEUから離脱したことで2020年4月までに15%未満まで下げるとしています。

これは、EUから離脱したことで縛りがなくなり競争力のある法人税で勝負し法人税率を一気に下げることにより世界各国の外国企業の進出を促すことが狙いとみられ、タックスヘイブン政策を利用しようという考えがあると思われます。現在のイギリスはアイルランドほどの法人税率には及びませんがシンガポールに並ぶ法人税率となっています。しかし、税逃れへの批判が高まっていることから、多国籍企業への課税は高くなっています。

中国は40%近くに達している

日本でいう法人税率にあたる企業所得税率の基本税率が25%に対して、中国企業の実効税率は40%近くに達しているといわれています。中国の商品やサービスの生産や販売や設備投資などの金銭に対する利益がともなう経済活動が厳しいうえに企業側のコストが高いため、企業所得税率を日本の法人税ぐらいまで引き下げるべきだという声があがっています。ですが、金融企業や新興業界をのぞいた多くの企業の収益率が10%であることから、30〜40%の実効税率では企業は続けられないのではないか?という指摘が上がっています。

法人税の税率を計算する時のポイント

法人税は計算式に当てはめて算出

法人税は計算式に当てはめて計算することができます。会社それぞれの決算時に合わせて計算され、その年に出た利益から経費のうち損金として算出できる分を引いたものにかかる税金を出します。つまり、会社の利益から損金として算出した部分を引くと所得金額を出すことができます。その所得金額から、法人税率を掛け算すると法人税額を出すことができます。

その企業の利益がいくら高くても、必要な経費が多い場合は法人税額が減ってしまうというわけです。また、法人税を計算するにはいくつかの条件があり、税率、軽減措置などの情報を把握し、改正などでいつの間にか変わっていることもあるため、最新の情報を常にチェックしておくといいでしょう。

法人所得は益金から損金を差し引く

法人所得は会社の税引前当期純利益に近く、税引前当期純利益と税法上の課税所得とは似てはいますがまったくの別物になっています。会社に入ってくるお金や財産、金銭や物、サービスでも違法な方法で手に入れた収益であろうと会社の財産にプラスになるものであれば益金となります。また損金とは原価や販売費、一般管理費やその他費用、損失のことを指します。会計上の利益をベースとして益金と収益、損金と費用を加減して法人所得を出していくことになります。

軽減税率が適用される場合もある

軽減税率とは、中小企業に対する法人税率を下げて支払う税金額を減らすことによって中小企業への税を減らし負担を軽減するための制度のことを言います。年間決算の時点で資本金が1億円以上である場合、または資本金を有していない法人のみに適用することができます。この軽減税率の制度のおかげで中小企業で年間所得が800万以下の場合は税率が15%まで軽減されていて負担が少なくなっています。ですが現状多くの中小企業が赤字法人となっていて法人税を払っていない企業も少なくないため、利益が多い中小企業のみが高い税負担を背負っているという声もでています。このことで平等でないことから中小企業への軽減税率廃止の案に反対という意見もでています。

計算には実効税率を用いる

法人税は、法人が各事業年度に得た課税所得に、一定の税率を上乗せして計算します。通常、法人税の計算に使う税率は実効税率を使われることが多く、法人税を出すためには益金(税務会計上の収入)から損金(税務会計上の支出)を引いた法人所得になります。

ですが、そのような税金はほかにもたくさんあり、ほかの税金も含めて計算することができる実効税率を使って計算したほうが合理的です。また、法人税の税率は、法人の種類と規模によって異なっていて普通法人または人格のない法人、公益法人、などに分けられ800万の年間所得を境に法人税率が変わってきます。

利益の多い会社には累進課税制度が適用

累進課税制度という制度をご存知でしょうか。日本の所得課税において採用される制度で、利益の多い会社ほどより高い税率が課せられるという課税方式の1つとされています。利益の多い会社ほど税金を負担する経済力が高いとされ、所得再分配効果(所得が高い会社から所得が低い会社へ所得を分けること)による課税の公平を保つ手段とされています。

つまり、利益が多い会社から多くの税金を払ってもらうことによって利益が低い会社が払う税金を少なくして負担を軽くするという制度です。生活水準を一定にすることができる累進課税制度ですが、会社の利益が上がれば上がった分だけ税金が上がってしまうため会社の負担が大きくなることは避けられません。また、負担が大きくなることを懸念して法人税率が安い国へ移ろうとする動きがでてしまうデメリットがあります。

延滞税の税率は日数によって変わる

法人税を決められた期日までに払うことができず納付期限を過ぎてしまうと、期限が過ぎた翌日からすべて納め終わる日まで延滞税を併せて払う必要がでてきてしまいます。納期限から2ヶ月経過すると、税率が大幅に上がってしまうので注意が必要です。

その延滞税は、すべて納め終わる期日までの日数によって税率が変わってきます。納めるべき本来の税金×延滞税の割合×期限が過ぎた翌日から完納日または2月を過ぎる日までを365日で割った数字(この数字を?とします。)と納めるべき本来の税金×延滞税の割合×2月を過ぎる日から完納日までを365日で割った数字(この数字を?とします)を出します。この?と?を足した数字が延滞税となります。

利子税の税率は特定基準割合が基準

利子税とは申告書の提出期限の延長が認められた場合や災害などによって申告書の提出期限に影響がある場合に、納付期限から過ぎた日数によってでてくる利子としての税金のことをいいます。また申告書を出しても延長できないこともあり、1ヶ月過ぎれば1ヶ月分の利子税がかかってしまうことがあるので注意が必要です。

毎年の特定基準割合によって決定し、納期限が過ぎた2月までの場合は年7.3%または特定基準割合は+1%になります。2月を過ぎる場合は、年14.6%または特定基準割合は+7.3%となりどちらも計算して安い方が適応となります。

重加算税の税率は最大で1.4倍

重加算税は不正確な申告に対する国または地方自治体による許認可の取り消し、業務停止命令、過料や課徴金、企業名の公表などの各種処分の追及という形で行政制裁的の意味合いが強い追徴課税の分類の1つになっています。

追徴課税の中でも、重加算税は一番税率が高くなっていて意図的な脱税や所得隠しに対して課せられることが多い税になります。無申告加算税(本来納めなければいけない税金を申告時期が過ぎてから申告してしまった際に起こる税)、過少申告加算税(本来納めなければいけない税金をミスや見解の違いなどで少なく申告してしまった際に起こる税)、不納付加算税(源泉徴収などによる所得税を納付期限内に支払わなかった場合に起こる税)の3つが課せられており、仮想や隠ぺいのような事実がある場合に課せられることを重加算税と言います。

過少申告加算税と不納付加算税に加えて35%、無申告加算税に加えて40%が加算税の代わりに課せられることになります。税率の軽減等が一切ないうえに、法人税に上乗せされて納めなければならないため、かなりの負担になるといえます。また、これらに加えて延滞税も課される可能性も出てくる場合があるので注意が必要です。

法人税率の仕組みを理解して会社経営に生かそう

ここまで法人税率の基本的な知識から世界の法人税率について細かくあげてきました。資本金が多い会社ほど信頼度が上がりますが、かといって資本金を高くすればいいというわけではなさそうです。法人税は会社にとって大きな負担になり、大量の現金が必要となります。

日本は世界に比べ、高水準の法人税率を保っていますが、大企業と中小企業との差や中小企業の中でも利益によって損得があるように思えます。また赤字企業は法人税を納めることがなく、赤字企業でも納付する法人事業税と法人住民税の負担を減らし実質的な負担軽減を求められます。

法人税率は固定ではなく、資本金によって変動するので、わかりにくいところがあるかもしれません。しっかりと仕組みを理解して、会社経営に生かせば思わぬ課税も避けることができるでしょう。

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