健康保険にはいろんな種類がありますが、自分がどの保険に加入しているのか知らない方がいるのも事実。実は保険証を見ればすぐに分かります。まずは、自分がどの保険に加入しているのかを知ったうえで、どんな給付があるのかを知っておきましょう。
目次
健康保険の種類
会社員とその扶養者が対象の社会保険
社会保険とは日本の社会保障制度の一つで、国民の生活を保障するために設けられた公的な保険制度です。社会保険の中には、「健康保険」「厚生年金」「介護保険」があります。
会社員として働き始めた時に加入する保険は、「社会保険」に加入することとなります。これは、勤め先が法人組織であれば強制的に適用となることが多いです。また、その扶養者も対象になり、扶養家族が何人いても、保険料は変わりません。毎月の給料から保険料を会社と折半した金額を会社が預かり、会社がまとめて支払います。
加入者(被保険者)が支払う保険料や国庫負担金などによって、国や地方公共団体などの公的機関運営費用がまかなわれているのです。
健康保険証で治療費が減額される
健康保険は、医療機関に保険証を提示すれば、治療費の自己負担割合が3割になります。厚生年金は、年金が貰える年齢になったら生活費として毎月いくらかお金が支給されます。そして介護保険は、介護をする家族の経済面や体力の負担を軽くしましょうという制度です。40歳になった月から自動で加入します。
自営業や個人事業主の人などが対象の国民健康保険
国民健康保険は、健康保険や共済保険などの対象にならないすべての方が加入しなければならない保険です。日本は国民すべてが保険制度を導入していますので、無職の方などもこの国民健康保険に加入することになります。個人事業主、自営業の方が加入する保険も国民健康保険です。
国民健康保険は、各市区町村が運営しており、加入や脱退などの手続きは住所登録のある市区町村役場で行います。市区町村ごとに運営しているため、保険料の計算方法も住んでいる地域によって多少異なります。
国民健康保険は扶養という概念がない
国民健康保険には、扶養という考え方がありません。扶養という概念そのものがそもそもないので、世帯内の加入者数によって国民健康保険の保険料が決まります。たとえ生まれたばかりの赤ちゃんであっても保険料がかかります。扶養者である妻や子供、赤ちゃんなどにもかかってくる保険料は、世帯主のところにまとめて請求がくるということになっています。
医療機関に保険証を提示すれば、社会保険と同じく自己負担割合は3割になります。ただし、6歳未満(未就園児)については2割、70歳以上(誕生日が昭和19年4月1日までのひと)については1割、それ以降の人は2割となっています。
日本の船舶で働いている人が対象の船員保険
船員保険は、日本の船舶で働いている船長、海員、予備船員などが対象者となる保険です。ただし5t未満の船舶や、川や湖、港内だけを航行する船舶の船員は、船員保険の対象とはなりません。
船員保険は、扶養者も対象になり、被保険者も被扶養者も加入者1人につき1枚船員保険被保険者証が交付されます。被保険者証の再交付などの窓口は、全国健康保険協会船員保険部になります。
職務外にケガや病気をした場合に受けられる療養補償
大きな特徴は、船員保険の独自給付で療養を受けてから3ヶ月までの療養補償が受けられます。乗船中に職務外の理由で病気やケガをした場合、自己負担なく療養が無料になる保障です。ただし、船員保険療養補償証明書を提出しなければなりません。
また、船員保険の給付は「職務外疾病の保険給付」と「職務上疾病の保険給付」があります。職務外疾病の保険給付は、船員としての仕事に関係しない疾病等に対して行われる給付です。職務上疾病の保険給付は、船員としての仕事に関係する疾病等に対して、行われる給付です。船員は海上での仕事となり、行方不明等のリスクもあるため、行方不明などに対する給付も含まれています。
会社に健康保険組合がある会社員が対象の組合保険
組合保険とは、常時700人以上の従業員がいる事業所や、同種・同業で3,000人以上従業員が集まる事業所で厚生労働大臣の許可を受けた事業所が設立した健康保険組合です。扶養者も対象になります。
医療費の自己負担の割合は3割です。特に高額医療にメリットがあります。所得に応じますが、それぞれの保険では支払う上限が1ヶ月に約3万〜8万が平均です。しかし、組合保険の場合は、組合によって変動はあっても医療費の上限が2万円というところもあるので、入院など長期に渡り治療が必要な場合は非常に助かります。扶養者も同様に給付してもらえるのもありがたい制度です。
また、健康保険組合の場合は、保養所などを提供しており、相場よりも安い金額で宿泊施設に泊まったりすることもできます。他にもレストラン、スポーツクラブ、ゴルフ場などとも提携して安く利用できるという特典があります。
公務員や教員が対象の共済組合
共済組合とは、公務員や教員として働いている方が加入している保険です。国や地方公共団体と所属する組合員の相互扶助によって運営されています。一般の健康保険や国民保険と同様に、加入する組合員が被保険者となり一定の掛け金を保険料として納め、国や地方公共団体の負担金および掛け金とあわせて運用しています。
共済組合は、国家公務員、地方公務員に加え一部の私立学校教職員が対象です。そのうち、国家公務員は「国家公務員共済組合」、地方公務員は「地方公務員共済組合」に強制的に加入することが義務付けられています。
共済組合の対象者は、加入している組合員本人に加えて、同一世帯で家計を共にしている家族や親族も含まれ、被扶養者として加入することができます。被扶養者の範囲は、配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟など、主として組合員の収入によって生計を維持している三親等内の親族となります。
75歳以上の人が対象の後期高齢者医療保険
平成20年4月から老人保健制度が廃止され、代わりに始まったのが後期高齢者医療制度で、長寿医療制度という呼び方をされることもあります。後期高齢者医療制度は、75歳以上の方が加入する独立した医療保険制度です(一定以上の障害があると認定を受け、加入を選択された場合は65歳以上)。
対象者は個人単位で保険料を支払います。各都道府県の後期高齢者医療広域連合が運営しますが、窓口業務は各市区町村が行います。
医療機関窓口における負担割合は、原則1割、現役並み所得者は3割になり、保険料率は都道府県によって異なります。原則として保険料は年金から天引きされます。
保険証の保険者番号で保険の種類を見分ける
左側2桁の番号で見分けれる
会社員か公務員かによって保険証が違います。それぞれの保険の種類の見分け方は、保険番号からわかるようになっています。社会保険は8桁、国民保険は6桁(ただし退職者は8桁)の数字で表しており、その数字の左側2桁で保険の種類を見分けることが可能です。
8桁ある社会保険の左側2桁の数字が種別
☑01:全国健康保険協会
☑02:船員保険
☑06:組合保険
☑31:国家公務員の共済保険
☑32:地方公務員の共済保険
☑33:警察関係の共済保険
☑34:学校関係の共済保険
8桁のある国民保険
☑67:退職国民保険
☑39:後期高齢者国民保険
まずは、左下の保険番号が何桁なのか、そして左2桁が何番なのかを見て調べてみましょう。
国民健康保健のみ6桁の番号
国民健康保険では、左下に6桁で保険番号が表示されています。国民健康保険では、最初の2桁が都道府県番号、次の3桁が保険者番号、最後の1桁が検証番号になっています。
そして、上の方に番号と記号が表示されていますが、番号は保険証を発行している市区町の記号がつけられていて、記号は加入した順に割り振られています。この番号と記号には、個人情報が含まれる内容になっているので取り扱いには十分に気をつけなければなりません。落とさないように自分でしっかり管理しましょう。
保険証番号以外で見分ける方法
保険証名で医療保険の種類が分かる
健康保険の種類を確認するときは、カードの左上に書かれている保険証名で医療保険の種類が分かります。左上に健康保険被保険者証と書かれていれば、社会保険。共済保険組合組合員証と書かれていれば共済組合保険。船員保険被保険者証と書かれていれば船員保険です。
また、国民健康保険被保険者証と書かれていれば国民健康保険、後期高齢者医療被保険者証と書かれていれば、後期高齢者医療保険になります。このように左上に書かれている文字によって医療保険の種類が分かるようになっているのです。
保険者で保険証の発行元が分かる
職場(職業)や、年齢によって、健康保険証の発行元(保険者といいます)が異なっており、健康保険証の発行元により、さまざまな色・形の健康保険証があります。
まずは、カードの左下の「保険者」というところを見れば保険証の発行元が分かります。一般的な会社に勤めていれば、保険者は、全国健康保険協会○○支部。支部名は都道府県によって違い、会社や扶養に入っている方が健康保険組合に加入していれば保険者名称は○○保険組合と書かれています。これらの保険は社会保険です。
また、船に乗っている人の船員保険証は、一般的な会社と同じ全国健康保険協会ですが、支部がなく船員保険部となっています。国民保険の場合は市町村名になおり、後期高齢者医療保険は、○○広域連合と書かれているのが特徴です。
保険証の色は種類や年度で違う
保険証は、色々な色のものがあります。さまざまな保険証の種類があり、特に社会保険では多くの健康組合や共済組合の数だけ違う色があるといってもよいでしょう。
また、有効期限が切れて新しくなった場合に、色が変わる場合も。これは、古い保険証と新しい保険証を区別しやすくするためです。その他には、区分による色分け、年度による色分けがされています。色で判断するよりかは、保険証番号や保険証名や発行元で判別した方が正確で分かりやすいでしょう。
保険の種類で異なる特徴
社会保険で支払う保険料は事業主と被保険者で折半
社会保険料は、社員それぞれに毎年4〜6月の3ヶ月の平均給与を元に、「標準報酬月額」と呼ばれる数字を7月に決めて、そこに保険料率をかけて計算しています。働いている人の社会保険料(健康保険と国民年金)は、会社(事業主)と社員が半分ずつ折半して払わないといけない法律が定められているため、例えば会社が社員から50%を越える社会保険料を徴収してしまえば、それは違法となるのです。
具体的には、定められた標準報酬額に基づき保険料率を掛けて従業員分を給与天引きして、その翌月に納入告知書により支払うこととなっています。
国民健康保険は毎年保険料が変わる
国民健康保険税は、毎年4月から翌年3月までの12ヶ月を1年度として、世帯ごとに前年中の所得(1月〜12月)や加入者数に応じて計算されます。
そして、それぞれについて、所得割(世帯の所得に応じて算定)、資産割(その世帯の資産に応じて算(固定資産税額))、均等割(加入者一人当たりいくらとして算定)、平等割(一世帯当たりいくらとして算定)の4つのポイントから保険料を算出されているのです。
つまり、1年間の所得や資産、均等割や平等割の金額によって毎年保険料は変わっています。
後期高齢者医療保険は1割負担
後期高齢者医療保険の負担割合は、その年度(4月から7月までは前年度)の市民税課税標準額によって判定されます。大体の被保険者の医療保険の自己負担割は、1割になることが多ほとんどです。ただし、高齢者でも、現役世代並みの収入があり収入制限を越えた場合は3割負担となります。
現役並み所得者の判定基準は、住民税課税所得が145万円以上あること。しかし、収入が145万円以上であっても、世帯の被保険者全員の収入の合計額が520万円未満、世帯の被保険者が1人の場合は383万円未満である場合は1割負担という条件があるので、1割負担に判定される人が多いようです。
船員保険は健康保険より給付が手厚い
船員保険は、船員を対象とした保険なので船に乗っている人しか加入していません。船員は、過酷な労働が多く、危険も多いため、保険料は多少割高でありますが、その分さまざまな給付が手厚くついています。
船員保険船員保険に加入している被保険者が、負傷や疾病、失業、行方不明、業務上の災害にあった時は、保険給付もあります。通常の健康保険と違うのは、業務上の災害や事故による場合でも、保険給付が行われるという部分です。
また、独自の給付に加え、健康保険、年金、さらには雇用保険と労働災害保険の全てを兼ね備えています。船という大変過酷な環境に働くために、一般的な健康保険よりも手厚い内容になっているといえるでしょう。
自分の保険証をチェックして加入保険を知ろう
健康保険には、大きく分けて国民保険、社会保険、後期高齢者医療保険の3つがあります。自分がどんな保険に加入しているかわからない人は、保険証の保険番号や発行元を見れば一目瞭然です。
自分の健康保険の種類は何なのかを知り、どんな特徴があるのか、どんな給付があるのかを知っておくと、万が一病気や怪我をしてしまったというときに、自分から対処が素早くできるでしょう。