会社を退職したら、まずは保険や年金の切り替えの手続きが必要です。その時必ず必要な書類が健康保険資格喪失証明書。健康保険資格喪失証明書の発行が遅れると新たな保険への加入手続きが遅れます。迅速に発行してもらいスムーズに手続きを完了しましょう。
目次
健康保険資格喪失証明書の仕組み
退職の際に会社が発行するべき書類
会社は従業員が退職した場合、健康保険資格喪失証明書を交付しなければなりません。健康保険資格喪失証明書とは、退職者が社会保険の被保険者である資格を喪失したことを証明する書類のこと。その証明書によって退職者は新たな健康保険に加入したり、就職活動のために失業給付金を受けることができます。また、次の会社に就職する際にも必要となる重要な書類です。
会社は、社会保険喪失の手続きを退職日の翌日から5日以内に速やかに行います。その際、必要な健康保険資格喪失証明書は特に所定の形式はなく、必要事項さえ揃っていれば記載・作成方法は企業ごとに異なるもので問題ありません。作成完了次第、管轄の社会保険事務所や健康保険組合に提出します。また退職者から回収した健康保険証を添付します。
通常の場合、退職者は会社から発行された健康保険資格喪失証明書を市町村役場に持っていき、次の保険の加入申請を行います。何らかの理由で緊急に保険証が必要な場合は、健康保険被保険者資格証明書の発行が依頼でき、仮の保険証を発行してもらえますので役所で相談してみましょう。
保険への加入の引継ぎの役割を果たす
健康保険の資格を喪失した後は、次の保険への加入手続きが必要です。新たな保険へ加入するには、会社から発行された受理印のある健康保険資格喪失証明書を市町村役場に提出し、手続きをおこないます。
健康保険資格喪失証明書を提出することで、現在被保険の資格を喪失していることが証明でき、スムーズに手続きが進行します。国民健康保険への加入も、任意継続被保険者になる場合も保険の種類に関係なく、被保険者資格喪失の手続きが完了していることを健康保険資格喪失証明書によって証明する必要があります。
尚、資格喪失の手続きが完了していなくても、今まで使っていた健康保険証は使用できません。退職した場合保険証は、速やかに会社に返却しましょう。もちろん、扶養家族の保険証も同様です。
資格喪失の日を正確に知るために必要
健康保険資格喪失証明書により資格喪失日を正確に証明することで、保険の重複加入を防ぎます。資格喪失日とは退職した日の翌日、つまり今まで加入していた健康保険の資格を喪失した日のこと。同時に、厚生年金保険の資格も喪失します。新たに加入する保険によっては、資格喪失日からの申請期間が決まっているものもあるので事前に確認するようにしましょう。
国民健康保険は資格喪失日の翌日から14日以内、任意継続被保険者になる場合は資格喪失日から20日以内の申請が必要です。任意継続被保険者とは、在職中と同じ保険が2年間継続して加入できるという保険。ただし、申請が資格喪失日から20日を遅れてしまうと、申請ができなくなるので、迅速な手続きが必要です。
また、資格喪失日により、納めないといけない保険料も変わってきます。例えば、12月10日に退職する場合は、翌日の12月11日が資格喪失日となります。ちなみにこの場合12月が資格喪失月となるので、12月分の社会保険料は徴収されません。12月31日に退職した場合は翌年1月1日が資格喪失日となります。この場合1月が資格喪失月となるので12月分の社会保険料は徴収されます。
なお、資格喪失日は、退職日の翌日以外にも該当します。死亡・雇用形態が変わった日・事業所が廃止・倒産・後期高齢者医療の被保険者となった日(75歳の誕生日)などの翌日にも資格を喪失するので、資格喪失日となります。
国民健康保険へ加入の際に必要になる
新たに国民健康保険へ加入する場合は、身分証明書とマイナンバーの他に、保険の二重加入を防ぐため健康保険資格喪失証明書の提出が求められます。国民健康保険とは資格喪失日から加入可能で、会社を退職した際に加入する一般的な医療保険制度です。保険内容は社会保険と変わりませんが、保険料の計算などが変わってきます。
加入手続きは資格喪失日から14日以内と定められていますが、14日を過ぎても申請可能です。住所のある市町村役場で手続きをおこなうと、数日後、国民健康保険証が自宅まで郵送されてきます。この際、国民年金も合わせて加入手続きを終わらせましょう。
国民健康保険も国民年金も、切り替えには健康保険資格喪失証明書の提出が必要になります。健康保険資格喪失証明書がないと切り替えができない自治体もあるので、手続きをスムーズにおこなうためにも健康保険資格喪失証明書は必ず持参しましょう。
社会保険へ加入の際に必要になる
退職して、翌日から次の会社で働く場合は、健康保険資格喪失証明書を転職先に提出します。転職先は社会保険から社会保険への切り替え手続きの際、健康保険資格喪失証明書が必要になります。保険等の手続き関係は全て会社がやってくれるので、健康保険資格喪失証明書を提出すれば、個人がやることはありません。
しかし、再就職先が決まっていても、1日でも仕事をしないブランク期間がある場合は、国民健康保険などの保険加入が必要になってきます。この場合は自分で申請手続きをおこなわなくてはなりません。また、一度国民健康保険に切り替えて、再就職先で社会保険に加入した場合、国民健康保険の脱退手続きが必要になります。社会保険を加入したからといって自動的に国民健康保険の脱退手続きがなされるわけではないので重複加入には注意しましょう。
国民は互いの医療費を支えあう「国民皆保険制度」に基づき、何らかの公的医療保険に加入する義務があります。退職し、例え1日でもブランク期間があるのなら保険に加入しなければなりません。
資格喪失後にしか発行されない
健康保険資格喪失証明書は被保険者である資格を喪失したことを証明する書類なので、資格喪失日前の発行は原則できません。喪失を証明する書類なのに、喪失日に達していない事柄を証明することは物理的に不可能です。退職者は、退職してからのあらゆる手続き関係に必要な書類なので早めにほしいところではありますが、資格喪失日以降に発行される書類として理解しておきましょう。
会社側は発行するのは難しいですが、前もって書類を準備することは可能です。退職書類一式と一緒に健康保険資格喪失証明書を準備してもらえるように、退職前に会社に依頼しておくことも大切です。
退職前に確認しておいた方がいいこと
勤務先が自動で発行してくれるか確認
健康保険資格喪失証明書の発行は会社の義務ではないため、発行してくれるかどうかは企業によって異なります。資格を喪失したからといって自動発行される書類ではありませんが、退職後必ず必要になる書類です。退職日が事前にわかっていれば資格喪失日に合わせ発行してくれる会社もありますし、退職者から依頼がないと発行しなかったり、請求書等での手続きが必要だったりする会社も。退職前に健康保険資格喪失証明書の手続き発行に関してしっかり確認しスムーズに発行してもらいましょう。
また、退職日や保険証を返還しに行ったときなどに、健康保険資格喪失証明書の郵送について確認しておくと、今後手続きに関してのスケージュールも立てやすくなり、何度も市役所に行く必要がなくなります。退職後必ず必要になる書類です。できるだけ早く発行してもらうためにも、待っているだけでなく自ら申告することで退職時のトラブルを防ぎましょう。
発行にかかる日数を確認
健康保険資格喪失証明書はいつ頃発行され郵送されるか、事前に確認しておきましょう。会社は資格喪失日から5日以内に社会保険保険資格喪失の手続きを行います。その後、健康保険資格喪失証明書の発行をおこないますが、発行しない会社もあります。
退職者から申告されてからだと発行するのに数日から数週間要する会社もあります。また年末年始やゴールデンウィーク、土日祝などの時期は発行されるまでに時間があく場合があるので事前の確認が必要です。
健康保険資格喪失証明書の発行が遅れると、保険の加入手続きも遅れます。保険に加入していない無保険期間を防ぐためにも、会社になるべく早く発行依頼をし、保険の手続きを完了しましょう。また、どうしても発行してくれない場合は、住んでいる地域の年金事務所で健康保険資格喪失証明書を発行してもらえるので、あきらめず相談してみましょう。
健康保険資格喪失証明書の発行依頼
全国健康保険協会に加入していた場合
協会けんぽに加入していた場合は、資格喪失等確認書と身分証明書と印鑑を持参し、住んでいる地域の年金事務所で手続きをすれば、即日すぐに発行も可能です。資格喪失等確認書は日本年金機構からダウンロードできるので、あらかじめ記入して持っていくようにしましょう。また、郵送での手続きも可能です。健康保険資格喪失証明書の即日発行は、以前の勤務先が健康保険資格喪失届を提出済みであることが必須です。提出が遅れている場合や完了していない場合は、資格喪失の確認がとれてからの発行となります。
年金事務所受付窓口は厚生年金適用課または、厚生年金適用調査課です。資格喪失等確認請求書を記入、提出し、健康保険資格喪失証明書の発行手続きは完了です。
健康保険組合に加入していた場合
健康保険組合に加入していた場合、手続き方法は各保険組合ごとで異なるので加入先の健康保険組合への問い合わせが必要です。主に、各組合のサイトからダウンロードできる所定の請求書を印刷し記入し組合へ郵送します。この際、健康保険症も一緒に返却するようにしましょう。
組合が内容を確認後、証明書が郵送されてきます。請求書の名称は各組合で違い、「資格証明交付申請書」や「資格取得・喪失証明書発行願」などさまざまです。また、FAXでの申請や添付書類が必要など、組合によって申請方法も異なるので、各組合のホームページをしっかり確認し準備しましょう。
以前の勤め先が倒産している場合
会社の倒産により健康保険資格喪失証明書が発行してもらえない場合は、まずは近くの年金事務所へ相談にいきましょう。協会けんぽの管轄する健康保険に加入していた場合は健康保険の資格を喪失したことを確認してくれます。会社が社会保険の資格喪失の手続きが完了していたら、その場で健康保険資格喪失証明書を発行してくれます。
手続きには、「健康保険・厚生年金 資格取得・喪失等確認請求書」の記入、提出が必要になります。その際身分証明書や印鑑が必要になるので持参しましょう。また資格喪失の確認申請は郵送でも手続き可能です。喪失等確認申請書は日本年金機構のホームページからダウンロードできるので、必要事項を記入し、年金事務所へ郵送しましょう。
紛失して再発行してもらいたい場合
再発行をしてもらいたい場合は、その旨を年金事務所の窓口で相談してみましょう。加入していた保険が協会けんぽの管轄であれば、資格喪失証明書を発行してもらえます。その際、喪失等確認請求書の記入や身分証明書の提出が必要になります。
また、国民健康保険への切り替えの場合は、自治体によっては健康保険資格喪失証明書がなければ、退職証明書や離職票など退職日が確認できる書類であれば代用可能なところもあるので、市町村役場で確認してみましょう。紛失したからといって、各手続きを先延ばしにしても、保険料や年金はさかのぼって支払わなければいけませんし、無保険期間が長くなると医療費を全額負担しなければなりません。早急に相談に行き、手続きを完了させましょう。
専業主婦から離婚する場合
離婚し、専業主婦でなくなる場合は、婚姻中に加入していた夫の医療保険の資格を喪失します。もちろん、これまで使っていた健康保険証は使用できなくなるので、今までの保険から脱退し新たな保険への加入が必要になります。
離婚後すぐに就職する場合は、新しい勤務先が保険の手続きをしてくれますので、自ら加入手続きをする必要はありません。離婚後すぐに就職しない場合は、国民健康保険への加入が必要になります。この場合市町村役場に転入届と転出届を提出し、自身が世帯主の国民健康保険に加入します。
市区町村によっては他の書類で受け付けてくれる
基本的には保険の加入手続きの場合、健康保険資格喪失証明書の提出が必要ですが、市町村によっては代用書類を提出することで、手続きを進めてくれるところもあります。代用になり得る書類は、退職証明書や雇用保険の離職票など離職日がわかるものが必要です。また、雇用保険受給資格者証でも受け付けてくれる場合もあります。
健康保険資格喪失証明書の用紙は市区町村のホームページからダウンロードできる場合もあります。その用紙をもって、以前勤めていた会社や健康保険組合に証明してもらい提出すれば、国民健康保険への加入手続きができます。
退職証明書や離職票はあくまでも健康保険資格喪失証明書の代用です。これらの書類では退職者本人の資格喪失の確認しかできません。被扶養者で合った場合は、やはり健康保険資格喪失証明書の提出が必要になりますので、会社にはしっかり発行してもらい大切に保管しましょう。
発行依頼中に病院へ行く際の注意点
無保険期間中は医療費は全額自己負担
通常何らかの健康保険に加入している場合、医療費の3割を自己負担、残りの7割を協会けんぽや組合が負担します。しかし、健康保険証がない状態で診療を受けると、医療費は全額自分で支払わなくてはなりません。
無保険期間中、病院で診察を受け医療費を全額負担しても、保険加入後それぞれの保険機関へ払い戻しの申請をすれば、支払った医療費の7割りの還付が受けられます。また、病院によってはのちに保険証を持参すれば払い戻しに応じてくれるところもあるようなので、病院の窓口で確認しましょう。
無保険期間中の払い戻しを受けられるのは、資格喪失以降の受診日に何らかの保険に加入している必要があります。もちろん、以前加入していた保険機関の健康保険証を使用することは禁じられています。もし間違って使用してしまった場合は、のちに医療費を返納しなくてはならないので注意しましょう。
健康保険証の発行には時間がかかります。できるだけ無保険期間を少なくするためにも、健康保険資格喪失証明書を事前に準備し、スムーズに手続きが進められるよう心がけましょう。
医療費の領収書は残しておく
医療費を10割負担した場合、病院での申請かそれぞれの保険機関への申請により払い戻しが受けられます。治療を受けた病院、加入している保険によって払い戻し方法が異なりますので、窓口や電話、ホームページで確認しましょう。
国民健康保険や健康保険組合などそれぞれの保険機関に払い戻しを申請する場合は、「療養費の申請」という手続きを各窓口で行います。この際、健康保険証・印鑑・世帯主名義の預金通帳・医療費の領収書・診療報酬明細書(レセプト)が提出物として必要です。この申請により医療費の7割の還付を受けることができます。また病院での払い戻しを申請する場合は、保険証と医療費の領収書が必要ですので必ず持参するようにしましょう。
尚、無効となった健康保険証を間違って使用し医療費を返納した場合も、現在加入している保険に療養費の申請をすれば還付を受けることができます。例えば国民健康保険に加入していたが、就職して社会保険に加入、その後間違って国民健康保険の保険証を使用した場合、後日協会けんぽから加入者に対して納付書が郵送されてきます。
本来なら社会保険が負担しなくてはならない医療費を、国民健康保険が負担したので、その医療費を協会けんぽに返納するためです。この返納した医療費は、社会保険に払い戻しの請求をし還付を受けます。この際、返納したときの領収書と診療報酬明細書、医療費支給明細書が必要になりますので、手続き上の書類は全て保管するようにしましょう。
病院で払い戻し申請の方法を確認しておく
病院での払い戻しの申請は、病院によって方法や条件など対応の仕方が異なるので事前に窓口で確認するようにしましょう。病院によって、手続き中や切り替え期間中など保険証がない理由によっては、後の払い戻しの案内をしてくれるところもあります。
しかし払い戻しは義務ではないので、案内がない病院も少なくありません。必ず自ら確認するようにしましょう。確認することはまず、払い戻しに対応してくれる病院か否かです。払い戻しは義務ではありませんので、必ず対応してくれるわけではありません。その場合の払い戻し方法は、自分が加入している保険機関への申請が必要です。次に、払い戻しの締切りの確認です。
1週間以内や月末までなど病院によってさまざまです。締切日を過ぎての申請は受け付けられないこともありますので注意しましょう。また、総合病院など大きな医療機関では、遠方患者のためにFAXや郵送での払い戻し申請を受け付けてくれるところもあります。旅行中や出張中などに保険証なしで病院にかかった場合も、あきらめず病院に問い合わせてみましょう。
事前の知識でスムーズに発行してもらおう
健康保険資格喪失証明書は、保険の加入手続きをするうえで必要になる証明書です。保険は、国民全員に加入義務があるので、なくては後々自分自身が困ることになります。退職の際は必ず発行してもらえるよう、会社に前もって発行依頼しスムーズに手続きがおこなえるよう準備しましょう。
健康保険資格喪失証明書の重要性を理解することで、保険に関してのさまざまな知識や退職の際の注意事項など得られる情報がたくさんあります。しっかり習得し、新たな職場や環境で気持ちよくスタートをきりましょう。