厚生年金の等級はどうやって決めているのか。等級を変更する方法とは

社会人として企業に勤務していると、厚生年金の等級がどのように決まっているのか気になることもあるでしょう。できるだけ負担を軽くするために、保険料の負担を軽減したいという人もいます。保険料の仕組みを知り、保険料の節約ができるか確認しましょう。

目次

厚生年金等級の決め方

標準報酬月額を元にした等級別


厚生年金の等級は国民年金と異なり、月額の収入によって等級が変わってきます。保険料は標準報酬月額を元にした等級で分けられますが、厚生年金の場合は全額個人負担ではなく、勤務している企業との折半となるため個人負担は少し軽減されます。

収入が多ければ多いほど保険料が高くなるため、いくら会社側との折半とはいえ負担を感じるかもしれません。しかしその分将来受給できる年金額が増え、企業に属さない国民年金のみの自営業者と比較しても、保障が手厚いというメリットがあります。

疾病手当金や出産手当金も標準報酬月(日)額によって金額が変わる

先述したように、等級が上がって保険料が高くなればなるほど年金受給額が増えますが、そのほかにも疾病手当金や出産手当金の金額も変わってきます。ただし、疾病手当金は標準報酬額を30で割った「標準報酬日額」、出産手当金は「標準報酬月(日)額」で決まってきます。

厚生年金は31の等級に分かれる

厚生年金の等級は、全部で31に分かれており、標準報酬額は1等級の8.8万円から31等級の62万円までに分かれています。各等級に厚生年金保険料を掛け合わせているのです。

31等級が最も高い報酬設定で、月額の標準報酬が62万円以上の人がこれにあたります。もし、62万円以上の収入がある場合であっても、最高等級が62万円なので、62万円に厚生年金保険料率を掛けます。

保険料の等級は毎月4月5月6月の給料で決まる

保険料の等級は、厚生年金加入者の税引き前の給与を、4月・5月・6月の三ヶ月分で平均額を算定したものになります。この等級は、基本的に1年間は変わりません。標準報酬月額は7月に決まりますが、大幅に給料の増減が無い限り、9月から翌年8月までは決定された金額になります。

厚生年金の等級表

標準報酬月額から等級を確認できる

厚生年金の等級は、標準報酬月額から確認することができます。標準報酬月額は先述した通り31等級で、1等級8万8千円、2等級9万8千円、3等級10万4千円、中略、30等級59万円、31等級62万円というように、3ヶ月の報酬の平均額を等級に当てはめていきます。

ただしこの標準報酬月額はかなりおおざっぱなものなので、保険料額の一覧を確認するようにしましょう。

厚生年金保険料額の一覧

厚生年金保険料額の一覧は、日本年金機構のHPより確認することができます。等級表に1等級から31等級が書かれ、標準報酬額の他に報酬月額、免除保険料率、厚生年金保険料率、そして全額と折半額が記載されているので、確認してみましょう。

厚生年金は原則企業と折半になります。

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厚生年金 標準報酬月額

厚生年金や健康保険の基準となる報酬


標準報酬月額は厚生年金や健康保険の基準となる報酬で、厚生年金保険料を決めるときは月の給与そのものの金額ではなく、標準報酬という区分したものを使用して計算していきます。

そのため月額給与と報酬額を照らし合わせて、自分の標準報酬月額を確認していくことが必要です。1円違うだけでも大きく保険料が変わってくる可能性があるため、しっかりと確認しましょう。

「平均報酬額」と「平均標準報酬月額」の違いは?

「平均標準報酬月額」に似た言葉で「平均報酬額」というものがあります。これは平成15年に施行された「総報酬制」により、年金計算の際に必要となりました。

「総報酬制」は平成15年3月までは月給のみの「平均標準報酬月額」だったのが、平成15年4月より月給+賞与の「平均標準報酬額」になったのです。

この「平均標準報酬額」は厚生年金や共済年金の給付額を計算するときに使うものなので、保険料計算には使われません。ただし給付額を計算する際には必要になりますので、間違えないようにしましょう。

通勤手当などの交通費も含む

標準報酬月額は決められた基本給だけでなく、残業代や通勤手当なども含まれます。つまり通勤手当や残業代が多ければ多いほど、標準報酬月額も高くなります。特に算定対象月である4月・5月・6月の給与が高いと、それだけ報酬月額の平均が高くなることに。

ボーナスなど臨時に受け取るものは標準報酬月額には含まれませんが、ボーナスは「標準賞与」として別途保険料がかかります。

厚生年金保険の保険料算出方法

毎月の給与は標準報酬月額に当てはめる

厚生年金の保険料の算出方法として、毎月の給与を標準報酬月額に当てはめていきます。保険料の基準は、毎年4月・5月・6月の3ヶ月分の給与を3等分した「標準報酬月額」です。自分の標準報酬月額がどこなのかは、等級表で確認しましょう。

標準報酬月額は保険料額表を確認すること

標準報酬月額の対象額は、かなりおおざっぱ。例えば24等級の41万円の場合、39万5千円以上42万5千円以下の人が対象になりますので、標準報酬月額が41万円といっても、41万円からが24等級というわけでは無いのです。

そのため自分は39万5,000円だから23等級と思いがちですが、実際は24等級で、保険料が大きく変わってくるため、保険料額表でしっかり確認をしておきましょう。

賞与は標準賞与額に当てはめる

賞与いわゆるボーナスは先述した通り、標準賞与額に当てはめていきます。標準賞与額とは、「実際の税引き前の賞与額から1千円未満の端数を切り捨てたもの」です。

なお、健康保険は年度の累計額573万円、厚生年金保険は1ヶ月あたり150万円が上限となります。もし1カ月あたりの賞与額が160万円の場合は150万円となります。

また、職業によっては売上や成績によって毎月賞与が出るところもあり、4回以上賞与が出る場合はそれは標準賞与ではなく、標準報酬月額に当てはまります。

給与と賞与に共通の保険料率をかける

厚生年金保険料は標準報酬月額と標準賞与にそれぞれ保険料率を掛けて、それぞれを足したものになります。現在の保険料率は18.3%です。

厚生年金保険料の出し方

☑1.標準報酬月額×18.3=(1)

☑2.標準賞与×18.3=(2)

☑3.(1)+(2)=厚生年金保険料

保険料は事業主と被保険者とが半分ずつ負担

国民年金保険料は全額自己負担ですが、厚生年金保険料の場合は、基本的に事業主と被保険者で折半します。端数が出る場合は被保険者の給与から控除する場合と、被保険者が負担分を事業主に現金で支払う場合とで処理方法が異なります。

端数処理について

☑1.給与から控除する場合:被保険者負担分の端数が50銭以下は切り捨て、50銭を超える場合は切り上げ。

例えば、12,445.50円の場合は50銭以下となりますので12,445円が控除額。また、12,445.51円の場合は、50銭を超えているため、12,446円が控除額ということになります。

☑2.事業主へ現金で支払う場合:50銭未満は切り捨て、50銭以上は切り上げ。

例えば、12,445.49円なら50銭未満なので切り捨てで12,445円が控除額です。12,445.50円は50銭以上になるため、12,446円が控除額になります。

保険料は事業者と折半ですが完全に半分ずつ負担というわけではなく、この端数処理によって1円単位で事業主と被保険者で負担額が変わるのです。

ただし、事業主と被保険者間で特約を取り決めている場合には、その特約に基づいて端数処理が行われます。

厚生年金の等級を変更する

毎年9月に標準報酬月額の改定が行われる


被保険者の実際の給与と標準報酬月額に大きな差が出ないように、事業主は算定基礎届という4~6月分の報酬月額を届け出ます。この内容に基づき、毎年9月に標準報酬月額の改定が行われているのです。これを「定時決定」といいます。

つまり4~6月に報酬総額が増額し、7月以降に報酬の総額が減額しても、4~6月の報酬によって定められた等級の保険料を支払う必要があるということです。

標準報酬月額を下げるには

2等級以上の増減をしたら等級が変更されるため、あまり意味が無いかもしれませんが、定時改定時に標準報酬月額を下げる方法があります。代表的な方法として4月・5月・6月の給料をできるだけ抑えることです。

基本給を下げることはできませんので、削ることができるものといえば、「残業代」。この期間の残業代を少し抑えて7月以降に残業することで、その分保険料を節約できるでしょう。

標準報酬月額の決定のタイミング

標準報酬月額の決定のタイミングは大きく分けて3つあり、内容は以下の通りです。

☑1.資格取得時の決定:被保険者資格取得届で決定(資格取得時から翌年8月まで適用)

☑2.定時決定:算定基礎届で決定(9月から翌年8月まで適用)

☑3.随時改定:ある条件を満たしている場合、定時決定を待たずに月額変更届を提出して、標準報酬月額を改定。

標準報酬月額の2等級以上の変動があった場合

標準報酬月額より2等級以上の変動があった場合は、随時改定で月額変更届を提出する必要があります。給与増した場合はもちろん給与減した場合も改定の対象に。

昇(降)給により固定賃金が大きく変動したり、残業などで何カ月も大きく増えた場合などにより、階級が変更されます。

標準報酬月額を変更するタイミングは?

役職に就いて給与が大きく変わった場合や、業績悪化で給与が大きく下がってしまった場合などには、標準報酬月額を変更する必要があります。行う人は、給与計算を担当している経理の方です。

日本年金機構より届く標準報酬月額の健康保険料や年金保険料を「保険料額表」で確認し、個人負担分控除額の変更をします。定時決定の適用は9月からになるので、変更のタイミングに注意しましょう。

9月分社会保険料控除の変更のタイミング

当日末日に当月分給与を支給している企業

☑1.当月分給与から前月分の保険料を控除:10月分の給与(10月31日支給)から変更

☑2.当月分の給与から当月分の保険料を控除:9月分の給与(9月30日支給)から変更

当月5日に前月分給与を支給している企業

☑1.当月分給与から前月分の保険料を控除:10月分の給与(11月5日)支給から変更

☑2.当月支給の給与から前月分の保険料を控除:9月分の給与(10月5日)支給から変更

☑3.当月分給与から当月分の保険料を控除:9月分の給与(10月5日)支給から変更

☑4.当月支給の給与から当月分の保険料を控除:8月分の給与(9月5日)支給から変更

給与計算をする際には、個人負担分控除額が変更されているかしっかりとチェックしていくことが大切です。給与計算を担当している経理の方は算定基礎届の提出や定時決定の適用月、控除額の変更の流れを業務スケジュールの中にしっかりと組み込んで把握しておきましょう。

収入が大きく変動した場合厚生年金等級は変更される

厚生年金保険料は、毎月4月・5月・6月の給与をベースに標準報酬月額で等級が決まりますが、それ以外にも収入が大きく変わったときなどに等級が変わりそれだけ負担が大きくなります。

あまり負担を大きくしたくないという人は、残業を減らすなどうまく給与額の調整をしていきましょう。しかし負担は増えてもそれだけ受給額も増えるため、損というわけではありません。

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