国民年金の控除についてよくわからない…。という方も多いでしょう。所得税の確定申告では社会保険料控除に分類され、通常は自営業やフリーランスの方が加入し、毎月の保険料を支払います。国民年金は確定申告で社会保険料として控除することができ、節税にもつながります。あなたも確定申告の手続き方法を正しく理解しましょう。
目次
国民年金の控除の条件
会社員は基本的に払う必要はない
国民年金は「第1号被保険者」が対象となり、自営業やフリーランスの方が加入しています。一方で、会社員は第2号被保険者となり厚生年金に加入するので、会社員は国民年金を自身で払う必要はありません。厚生年金の場合は、会社の年末調整で所得税に相当する源泉徴収税が清算されるため、確定申告で別途申告する必要はないのです。
ただし、勤め先の従業員が5人以下の場合は、基本的に会社は厚生年金に加入する義務はなく、任意加入となるため、国民年金に加入したら社会保険料控除として申告できます。
今年中に新たに就業した人
会社員は厚生年金に加入するため、基本的に国民年金を支払うことはありません。この一方、国民年金は20歳になったら誰もが加入する保険制度です。会社を退職した場合にも厚生年金から国民年金への切り替え手続きがあり、新たに就業するまでの間は国民年金保険料を支払う義務があります。
しかし今年中(同年)に就職が決まった場合は厚生年金に加入するため、国民年金保険料を自分自身で納める必要はありません。前納で国民年金保険料を一括して支払ったとしても、厚生年金と国民年金の支払期間が重複している場合は還付請求ができます。
☑ 1. 厚生年金への変更を確認した年金事務所が、各自へ「還付請求書」を発送
☑ 2. 還付請求書が手元に届いたら必要事項を記入し、最寄りの年金事務所へ提出
☑ 3. 後日指定した口座に入金
配偶者や子供の国民年金保険料を代わりに払う
国民年金の納付対象者は、20歳以上60歳未満です。配偶者や子供など「扶養している家族がいる場合」は、家族一人ひとりに国民年金納付に関する案内が届きます。
扶養家族がいる場合、家族の国民年金も「社会保険料控除対象」に。控除を受けるために記載する金額は、「扶養家族を含め支払った国民年金の合計額」を記載する形になります。
既に保険料を納付した人
納めるべき国民年金保険料のうち、免除期間や滞納期間がある場合は、年内に納めるようにしましょう。国民年金保険料は、過去2年間をさかのぼって、免除期間や滞納期間の保険料を納めることができます。12月31日までに納付した保険料は、すべて同年(今年)の控除対象となり、年末調整や確定申告で申告することが可能です。
申告する場合は、控除証明書の「納付済額」に、追加で納めた保険料を合算し、控除証明書とともに追加で納めた保険料の領収書申告書を添えて提出します。ちなみに、失業などで経済的に国民年金保険料を支払うことが難しい場合は、区役所の年金課で相談すれば免除や減額の承認を得ることができます。
国民年金の控除を受けるには
国民年金の保険料は社会保険料控除
国民年金保険料や厚生年金保険料などの社会保険料は「社会保険料控除」の対象です。家族の国民年金保険料を支払っている場合は、年末調整や確定申告の際に社会保険料控除の申告に加えることができます。保険料控除証明書は控除の手続きのために必要なものなので、保険会社から届いたら、必ず開封・チェックしましょう。
確定申告書の所得金額から差し引かれる金額(所得控除)の欄に、社会保険料控除という項目があります。社会保険料控除の対象となるのは、その年の1月1日から12月31日までに納付した保険料なので、未納分がある場合は年内に納付してください。
年末調整のために保存したい社会保険料控除証明書
国民年金の控除は、申告書に金額を記載すれば受けられるものではなく、控除証明証明書、もしくは領収書の添付が義務付けられています。社会保険料の控除証明書は、日本年金機構から、11月もしくは2月までに送付されます。
同年の9月30日までに年金の納付実績がある場合は11月、11月の送付対象者以外で、10月から12月の間に支払った場合は2月です。もし期間内に届かない場合は、日本年金機構に問い合わせをするなど確認する必要があります。
ただ申告することにあたり、保険料控除証明書は控除の手続きのために必要なものなので、年金事務所から支払証明書が届いたら、必ず開封し確認します。
確定申告することで還付を受けられるかも
個人が払う税金のうち、主なものが所得税と住民税です。です。これらは、収入(所得)に応じて課税されます。収入が多い人ほど税金として払う金額が多くなり、このとき、個人の事情を考慮して、課税額を決めるための仕組みに「所得控除」というものがあります。
これは、「やむをえず何らかの出費がかさんでしまった場合、その分は収入から差し引いてもよい」というものです。税金として払う金額が少なくなります。
社会保険料控除とは、税金の対象となる所得金額から自分が支払った社会保険料を差し引いてくれる制度で、所得控除と呼ばれるものの1つです。控除に上限のある生命保険料控除とは違って、その年に支払った社会保険料が「全額控除」されるため、確定申告することで還付を受けられる可能性があります。
控除を受けるために気を付けたいポイント
2年前納制度で節税の可能性
平成26年4月から、国民年金保険料は2年分を前納できるようになり、節税の可能性もあるといわれています。国民年金を1ヶ月ずつ支払いをするよりも、2年間分まとめて支払いをしたほうが15,000円程度安くなるとみられており、平成29年度の国民年金保険料の支払額は月々16,490円なので、約1ヶ月の得するということ。
2年前納の場合、支払った年に全額控除するか、または分割で1年ずつ控除するか選ぶことができます。たとえば、支払い年に大きな所得がある場合は、はじめの1年で一気に控除した方が節税効果は高く、国民年金の節税要素があるのです。
通常届く国民年金保険料の納付書には、月々の支払い分のほか、半年ごとに支払うものなどが入っています。しかし、2年分の前納をする納付書は含まれていないため、別途手続きを行う必要があります。手続き方法は、「国民年金保険料口座振替(変更)申出書」を、国民年金を引き落としたい口座を持つ金融機関に届けるだけです。
さらに平成29年4月からは厚生労働省は前納制度の利便性を高めて、保険料の納付率を向上させるため、平成29年4月からは現金やクレジットカードでも、2年分の保険料を前納できるようにしました。
社会保険料控除証明書は再発行できる
確定申告をする際、納税者が支払った年金や保険料などは控除として申告することで、納める税金額を少なく、いわゆる「節税」することができます。ただし、控除を受けるためには、確定申告書の支払額の証明書、あるいは明細書を添えて提出します。
社会保険料控除は国民健康保険料や国民年金保険料などで受けることができる控除。日本年金機構が発行する控除証明書の添付が必要ですが、紛失した場合などは「再発行」が可能です。
控除証明書の多くは、「10月から11月に発行され対象者のもとへ届けられます」。これらが届いたら、年明けの確定申告の時期までなくさずに保管しておくことが大切です。ただ、保管期間が意外と長いだけに、控除証明書をついうっかりなくしてしまう方もいるようです。
そういった場合は、証明書の多くは再発行してもらうことが可能です。再発行をしてもらう場合は、以下の窓口での手続きしてください。
☑ 社会保険料控除証明書
日本年金機構の専用ダイヤルか近くの年金事務所に問い合わせる。手続きには基礎年金番号がわかるものが必要。再発行にかかる期間は一週間ほどです。
日本年金機構のURL
家族も申告する可能性がある
サラリーマンなどは給料から保険料が天引きされるため、自分の保険料以外に社会保険料控除の対象がなければ、会社が手続きを行なってくれます。
家族分の社会保険料を社会保険料控除の対象に含めたい場合は、「給与所得者の保険料控除申告書兼給与所得者の配偶者特別控除申告書」に、社会保険料の種類、支払先、社会保険料を負担している人の名前と続柄、支払った社会保険料の金額を記入し、年末調整時に会社に提出します。国民年金の場合は、支払いを証明する書類も合わせて提出することを忘れないようにしましょう。
また、フリーランス・個人事業主の方も、確定申告をすることによって社会保険料控除を受けることができます。国民年金保険料の支払いについては、支払いを証明する書類を確定申告書に添付する必要があるので注意しましょう。
添付に必要な小道具を揃えておく
これまでに支払ってきた国民年金保険料や国民健康保険料を社会保険料控除にしたい場合は、控除に必要な証明書や明細書を揃えておく必要があります。滞納せずに支払いを行なえば、これら証明書や明細書は10月〜11月頃には郵送されます。
紛失してしまった場合でも、ほとんどの証明書や明細書は再発行が可能となりますので、あせらずに再発行の依頼を該当機関に依頼します。
確定申告や年末調整において、支払証明書や明細書がなければ控除を受けることができなかったり、手続きに時間がかかる場合があるので注意しましょう。
審査機関は2〜3ヶ月かかる
国税庁のホームページによると、確定申告の還付金は、通常確定申告を行ってから約1ヶ月〜1ヶ月半後で返ってきます。また、e-tax(電子申告)で確定申告を行った場合だと3週間程度。これはあくまで目安期間となっています。
確定申告時期の後半、3月に入ってから申告する場合は一番込み合うため処理が遅れることもあり、2〜3ヶ月かかることもあります。還付金の返金は余裕をみておいたほうがよいでしょう。
還付金が返ってくる目安
申告日によって還付金が返ってくる時期が異なります。
☑ 2月16日に確定申告した場合は、還付金は3月中旬〜末頃
☑ 3月1日に確定申告した場合は、還付金は4月上旬〜中旬頃
☑ 3月15日に確定申告した場合は、還付金は4月末〜5月上旬
国民年金の代用策を見つけよう
国民年金保険料は全額控除となり、年末調整や確定申告でしっかりと申告することで大きな節税になり、さらに扶養家族の保険料も支払っている場合は、個人の保険料に加え、家族分も控除対象です。
会社員は基本的には年末調整を会社に提出することで申告できますが、確定申告や年末調整の手続きに共通していることは、必要な証明書をしっかりと揃えておくこと。紛失した場合や、家族などの扶養者の分で控除対象になるか不明なときには、日本年金機構などに問い合わせることも重要です。
また、自営業やフリーランスは会社員と違い、確定申告を自分自身でやる必要があります。確定申告は通常、1月末から2月に始まりますが、2月はとくに申告が集中するので、時間に余裕を持って進めましょう。