全国に存在する社会保険診療報酬支払基金。医療費を支える役割とは

国民が安心して保険医療機関を受診できるようにする大切な役割を果たしている社会保険診療報酬支払基金。全国47カ所に存在し、怪我や病気でお世話になる保険医療機関の診療報酬を、適切に健康保険組合などに請求。迅速に保険医療機関へ支払っています。

社会保険診療報酬支払基金は?

診療内容の審査


保険医療機関において、それぞれが行った診療行為が、療養担当規則や診療報酬点数表、関連通知など、保険診療ルールにきちんと適合しているかを確認。審査には、日本全国にある各都道府県の各支部に設置された審査委員会が公正に行います。

また、提出されたレセプトが医科40万点以上などの高額なときには、基金本部に設けられた特別審査委員会において、集中的に審査されます。診療内容の審査について、保険医療機関から提出されたレセプトを保険診療ルールに従って確認する項目は4つあります。

☑1.記載事項の確認:記載漏れや保険者番号など、内容不備に関して確認します。

☑2.診療行為の確認:診療行為の名称や点数、回数、医学的な適否、算定要件などに関して確認します。

☑3.医薬品の確認:医薬品の名称や価格、適応、用法、用量、医学的な適否などに関して確認します。

☑4.医療材料の確認:医療材料の名称や価格、用法、使用量、医学的な適否などに関して確認します。

健康保険組合などに請求する


社会保険診療報酬支払基金では、協会健康保険や健康保険組合などに加入している保険者が、怪我や病気などで保険医療機関を受診、治療した際のレセプトを保険医療機関から提出、診療報酬の支払い請求を受けます。保険医療機関から提出されたレセプトに問題がなく、保険診療ルールが守られていることの確認がとれると、社会保険診療報酬支払基金が、健康保険組合などに診療報酬の請求を行います。適切な診療に対しての報酬を社会保険診療報酬支払基金が保険医療機関に代わって請求することで、診療報酬の遅延支払いを防止します。

また、第三者機関である社会保険診療報酬支払基金が保険医療機関に代わって健康保険組合などへ支払い請求することで、保険医療機関のレセプトの不備や適切でないと判断される診療報酬の請求を防止することができます。このように、適切と判断されたレセプトでの診療報酬要求なので、健康保険組合などは組合に加入している事業主と従業員から納められた診療報酬を、毎月、決められた期日までに社会保険診療報酬支払基金に支払う必要があります。

保険医療機関に支払いをする

社会保険診療報酬支払基金が、保険医療機関に代わって請求した診療報酬は、毎月、一定の期日に支払われます。保険医療機関と健康保険組合などが直接、個々で診療報酬のやり取りを行わないことで、診療報酬の遅延を防止。社会保険診療報酬支払基金が、レセプトの確認を行なうことで、診療内容が適正かどうかの判断をすることができます。

万が一、保険診療ルールに適正ではないレセプトがあった場合は、職員による審査事務を行ったあとに審査委員による審査を行ない解決しない場合には、保険医療機関にレセプトを返戻。再提出を求めるなどの措置をとるので、適正ではないレセプトでの診療報酬請求を防ぐことができます。社会保険診療報酬支払基金は、確実に保険医療機関へと、適正な診療報酬を支払う機関になります。

国の特別な法律により設立

社会保険診療報酬支払基金は昭和23年7月に成立し、同年9月1日から業務が開始されました。社会保険診療報酬支払基金が創設される以前は、保険医指導委員会が保険医の指導とレセプトの審査を行い、支払い事務に関しては、社会保険協会や健康保険組合連合会支部が行っていました。

ですが、診療報酬の遅延や保険医指導委員会と社会保険協会、健康保険組合連合会支部の間においての法的責任が明確ではないことを理由に、審査、請求、支払いを一括で行なう機関の創設を提示。国会において社会保険診療報酬支払基金法案が提出され、昭和23年7月10日に社会保険診療報酬支払基金法が制定。社会保険診療報酬支払基金が設立されました。

社会保険診療報酬支払基金は一般企業と違う?

利益を得る目的としない

社会保険診療報酬支払基金は、一般企業のように、営業利益を得ることを目的としていません。そのため、法人でありながらも一般企業とは運営方法も違ってきます。社会保険診療報酬支払基金の事務作業などにかかる費用は事務手数料のみを使用し、この事務手数料は、保険者が負担しています。

社会保険診療報酬支払基金の事務手数料は、法律に基づいて決められており、毎年、社会保険診療報酬支払基金と保険者団体が協議。その結果を、厚生労働省が確認、審査、決定することで、社会保険診療報酬支払基金は、事務手数料を保険者へ請求することができるのです。また、事務手数料とは別に支払われる人件費などの必要経費も毎年の協議の結果に含まれています。

資本金を持たない

特別な法律により、立ち上げられた社会保険診療報酬支払基金は、資本金を持ちません。一般企業の場合、資本金を元に企業を立ち上げ、運営していくわけですが、社会保険診療報酬支払基金は、診療報酬を正確かつ円滑に支払われることを目的とした企業。そのため、資本金を元手に企業の規模を大きくする必要がなく、法律に沿った事務作業を行っていくのです。

また、社会保険診療報酬支払基金は、一般企業と違い、株式も持ちません。利益を出すことを目的としていないため、株式を持ち、株価での儲けを必要とせず、企業の規模を拡大する必要もないからです。このように、特別な法律の元で設立された社会保険診療報酬支払基金は、資本金や株式を持たず、一般企業とは見方が異なってきます。

厚生労働大臣に届けを出す事

社会保険診療報酬支払基金では、事業計画や収支予算に関して、厚生労働大臣に届けを出し、認可を得る必要があります。毎年度、社会保険診療報酬支払基金と保険者団体で協議を行い、その結果を踏まえた収支予算の届けを厚生労働大臣に提出。提出された届けの認可が下りれば、保険者が負担する事務手数料やその年度に必要となるの経費が決定されます。

毎年度行なう収支予算の届けは、法律により定められているため、必ず厚生労働大臣の認可が必要となります。社会保険診療支払基金の代表者である理事長が収支予算を独断で決定することはありません。企業の代表者が、収支予算の決定ができない面でも一般企業とは違ってくるのです。

民間法人になる

利益を得ることを目的とせず、資本金や株式も持たない社会保険診療報酬支払基金。企業の事業計画や収支予算の届けを厚生労働大臣に提出するなど、一般企業と異なった面が多くありますが、公務員や特別法人ではなく、民間法人になります。社会保険診療報酬支払基金における民間法人とは、特別な法律に基づき本部、支部の設置数を限定して作られ、政府の関与は最小限に留められているため、運営費などの資金を受け取ることはなく、役員選任も自分たちで行なうことが出来ます。

厚生労働省所管の社会保険診療報酬支払基金は、公務員や特別法人と間違われ税金で運営していると思われることがありますが、毎年度の収支予算に給与などの人件費も含まれているため、税金は使われていません。さきほど説明したように民間法人ですので、保険者が支払う診療報酬から事務手数料や人件費などが賄われています。このような民間法人には、農林中央金庫や企業年金連合会もあります。

福岡県の社会保険診療報酬支払基金は?

福岡市博多区美野島が支部

全国47都道府県にある社会保険診療報酬支払基金。東京都港区新橋にある社会保険診療報酬支払基金を本部とし、支部は全国の県庁所在地に存在します。福岡県にある支部は、福岡県福岡市博多区美野島にあり、審査委員会は、診療担当者代表や保険者代表、学識経験者、総勢168名で構成されています。

審査されるレセプトは、98%が電子化され効率化が進んでいます。また、28年度における診療報酬の収納率は、共済組合、健保組合ともに100%を達成。公正な審査の元、健康保険組合などに診療報酬を請求、遅延することなく保険医療機関への診療報酬支払いをすることができています。

博多駅から約1.5km

博多駅博多口から約1.5kmの距離にあり、福岡空港から電車で来る場合には、地下鉄を利用。地下鉄に乗ること約5分ほどで博多駅に到着することができます。博多駅には、買い物に便利なお店がたくさんあるので、社会保険診療支払基金に訪れた帰りのショッピングにもおすすめです。

こくてつ通り沿いにある社会保険診療報酬支払基金福岡支部は、さまざまな企業のビルに囲まれた場所にありながらも、小柳公園や人参公園などの公園もあるので、リフレッシュに最適です。飲食店やコンビニも点在しているので、ランチに利用するのもよいでしょう。

博多駅から歩いて約15分

博多駅から歩いて約15分ほどのところにある社会保険診療報酬支払基金福岡支部。初めて行くなら線路沿いを使って行くと迷いにくいのでおすすめ。博多駅博多口から出たあとは、筑紫通りに向かって線路沿いに歩いていきましょう。筑紫通りを渡って、まっすぐに進み、右手に出てくる路地の3つ目を右に曲がります。

右に曲がった通りを博多消防署通りといい、少し歩いて行くと右側に博多署が見えてくるので、目安にするとよいでしょう。博多消防署通りをまっすぐに進んで行くと、こくてつ通りに出ます。こくてつ通りを左に曲がり40mほど進んだところにあるのが、社会保険診療報酬支払基金福岡支部です。

社会保険診療報酬支払基金の採用は?

事務系や医学系

社会保険診療報酬支払基金では、基本理念に、国民が安心して医療を受けられる制度を支える組織というのがあります。保険医療機関と健康保険組合の間に立ち、公正かつ迅速な仕事を要求。レセプトの審査、診療報酬の請求、支払いの業務を主とするため、事務系や医学系の人を採用対象にしています。

特に、現在、看護師などの医療に携わる仕事をしていて転職を考えている人や薬学系、医学系、歯学系、衛生医療系、介護系の医療の知識がある人が採用対象になりやすくなります。パソコン作業が多く、事務系のスキルも求められますが、入社後は、研修制度もあるので安心。徐々に勉強し慣れていくことができます。

大学卒の方

社会保険診療報酬支払基金では、大学や大学院を卒業していれば応募できます。また、卒業見込みや海外の大学を卒業の場合も応募可能。積極的な採用対象には、理系や文系の大学卒、理系や文系の大学院卒があり、柔軟な思考力やチャレンジ精神、活力のある人が求められています。

社会保険診療報酬支払基金では、一般企業の多くで行われている会社説明会はありません。どのような会社なのか気になる人は、事前に電話申し込みをし、最寄りの支部へ会社訪問を行なうのがおすすめ。書類審査を通過後は、第一次試験となる筆記試験に移ります。試験会場は全国7カ所(札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、福岡)あり、自分で指定することができるので、行ってみたい地域を選んでみるのもよいでしょう。

勤務地は47都道府県から

勤務地は、全国47都道府県にある県庁所在地に支部があり、その中から決定されます。通勤手当もありますが、配属された勤務地が自宅からの通勤では難しい距離の場合、決められた一定の条件を満たしていれば宿舎への入居も可能。また、宿舎への入居を希望しても空きがないなどの場合には、アパートやマンションを借りる際の住宅手当(最高2万7,000円)もあります。

既婚者にうれしい単身赴任手当や残業などで業務時間が多くなってしまった場合の超過勤務手当、退職時に受け取る退職手当など、手当も充実。入社後は、転勤の可能性もあり、47都道府県のどこかへ変わることもあります。入社時の給与額は、18万2,000円と決められており、その後の給与額は、勤務地ごとに等級や号数で定められいるので、気になる人は調べてみるとよいでしょう。

お休みは土曜日と日曜日

お休みは、土曜日や日曜日、祝日、年末年始と決まっており、休日の予定も立てやすくなります。子育てに専念できる育児休業や介護が必要になった家族がいる場合の介護休業、慶事の場合などの特別休暇やリフレッシュに活用したい有給休暇など、突然や前もってまとめて取得できるお休みも充実。平日の月曜日から金曜日、9時〜17時30分までの勤務時間を基本としているので、勤務終了後の時間を自由に使うことが可能。

お休みや勤務時間終了後など、毎日の生活の予定が組みやすい企業です。健康保険や雇用保険、労災保険、厚生年金保険など各種保険にも加入しているので、安心して働くことができます。配属された勤務地が知らない街だったり、転勤で地元から離れてしまったときは、休日を利用して散策してみるのもよいでしょう。

医療費の仕組みが勉強出来る

社会保険診療報酬支払基金では、通常の生活では知るきっかけが少ない医療費の仕組みを勉強することができます。レセプトを審査、診療報酬の請求、全体にかかる保険料など、普段の生活で目にすることの少ないお金の流れを知ることができるのです。

社会保険診療報酬支払基金は、私達国民が安心して保険医療機関を受診できるようにするための大切な仕事をします。事務作業や医療の知識のある人、向上心が高く医療費の仕組みについて興味のある人におすすめの仕事と言えるでしょう。

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