失業手当ては知らないと損をする。知っておきたいしくみを理解しよう

失業手当の仕組みを知っていますか?雇用保険に6カ月の期間加入して保険料を支払っていれば国からいくらか手当てがもらえる制度です。お金の制度は知っているのと知らないのとでは大違い。失業手当の仕組みについてしっかりと理解しておきましょう。

失業手当を受給するための条件

再就職の意思と身体的な能力がある

失業手当を受給するためにはいくつかの条件があります。まず1つ目に、失業手当は再就職の意思と身体的な能力がないと受給できません。これは現在勤めている会社を退職しても次にまた働く意思があるということ(転職活動をおこなう意思がある)

病気やケガ、妊娠・出産などですぐに働けないことがわかっている人は受給することができないということになります。
転職しようと思っている人は失業手当を受給することは可能ですが、上記に該当する人は受給できない可能性もあるので、自分が該当するかどうか確認しておきましょう。

再就職するための活動を実際におこなっている

失業手当をもらうには月に一度定められているハローワークに行き、受給するための申請をしないといけません。この申請に必要なのは再就職活動の意思があり、そのために実際に求人検索をしたり、ハローワークで再就職のための講座を受けるなどの活動していることが認められなけばなりません。

ハローワークで再就職活動をおこなっていることもその条件として認められます。ハローワークではパソコンでの求人検索や、毎週更新されている求人誌、その他転職のためのスキルアップの講座の案内などもされているので活用するといいでしょう。実際に「再就職活動をしている」とハローワークに認められなければなりませんが、その認め方は管轄のハローワークによっても異なりますので、間違いのないよう確認してみましょう。

転職活動をしているが決まらない

再就職活動をしているのに、なかなか就職先が決まらない人だけ受給できます。前の職場を退職し次の職場がすでに決まっている人、次は自営業を始めようと思うのでその準備をしている、などは就業状態とみなされ失業手当は受給できないことになります。
失業手当は転職のための自己都合退職の場合、支給までに4ヶ月程度はかかるので、次の就職先の目途が立っている人などは注意しておきましょう。

自分の都合で退職した

自身の都合で退職した場合も失業手当は受給できますが、給付金がもらえるまで少し時間がかかります。3ヶ月の給付制限期間とその他の手続きの期間(約1ヶ月程度)などを含め、合わせて初回の給付までに4ヶ月かかることになります。

具体的な流れは次の通りになります。まず1回目のハローワーク登録日、その後登録日から7日目に待機満了日となり満了日の翌日から3ヶ月間、給付制限期間が開始となります。そして2回目の受給説明会、続いて初回認定日があります。そして最後に制限期間満了日を迎え、この翌日から基本手当の日数がカウントされ始めます(この期間が約3ヶ月程度掛かります)
退職し申請したからといってすぐに給付されるわけではありません。転職など考えている人はこの期間も注意しておきましょう。

会社の都合で退職させられた

では会社の都合で退職させられた場合はどうなるのでしょうか。会社側の都合で退職とは、つまり倒産や解雇などにより労働規約を解除させられた場合になります。これは労働者の意思に反しての退職になりますので、自己都合による退職に比べ失業手当の給付日数は多めになります。
自己都合の場合では受給期間は最大150日になっていますが、会社都合で退職となってしまった場合は「特定受給資格者」となり、受給期間が最大330日に延長されます(退職時の年齢や勤続年数などで給付日数は変わります)

失業保険申請に必要な手順

離職票を退職した会社からもらう

会社を退職したときに離職証明書を会社から発行してもらいますが、その離職証明書に基づきハローワークが交付する書類のことを離職票といいます。会社は退職者が離職証明書を請求した場合には速やかに発行するように義務付けられています。
会社に退職届を提出した後の10日程度で離職証明書は発行してもらえるようになっています。離職票がないと失業手当はもらえませんので、もし退職後離職証明書をもらっていない人がいましたら、すぐに会社に請求するようにしましょう。

ハローワークからもらう離職票には、退職理由と過去半年間の給料、実際に出社した日などが記入されています。これらの情報と年齢や雇用保険の被保険者期間を合わせ、失業手当の給付日数が決まります。

求職の申込書を記入する

これは求職する意思があるというために必ず必要になる書類です。この書類がなければ失業手当は給付してもらえません。求職申込書には希望する仕事や収入、希望就業時間や休日など記入します。また、学歴や自分が持っているスキルや資格・免許なども記入する欄があります。
記入欄の中に「公開希望」というチェック欄がありますが、ここにチェックを入れることでハローワークに自分の情報を登録して、企業側から指名を受けやすくしてもらうためのものです。記入の仕方がわかりにくいとは思いますが、見本もありますしわからなければ未記入のままでも大丈夫です。この書類を記入し終わった後に受付に提出します。

窓口で退職理由などに答える

ここでは希望の再就職先の条件や自分の持っている資格・免許・退職理由などを先ほどの求職申込書をもとに窓口で職員と話をします。所要時間は大体10分程度で終わりますが、ここでは退職理由が重要となります。そのため、退職理由が会社側と退職者で異なっていることがあれば、詳しく話を聞かれ必要であればハローワークより会社への退職理由の確認がおこなわれます。
求職申込書でわからなかったことや強い希望がある個所も伝えることができるので、ここで必要なことはしっかり伝えておくとよいでしょう。

雇用保険者受給説明会に参加する

これは失業手当を受給する上で雇用保険制度について大切なことを説明する場です。ハローワークがあらかじめ指定した日時と場所でおこなわれ、必ず参加しないといけません。よくハローワークでも子連れの人を見かけますが、これは子供と一緒の参加はできませんので子供がいらっしゃる人は、日程がわかり次第子供の預け先などを確認しておきましょう。

どうしても欠席せざるを得ない場合は事前にハローワークに問い合わせることが必要です。説明会の内容としては、雇用保険制度の説明や不正受給になる場合、受給するための条件や認定日、認定日に必要な書類などの説明があります。場合によっては不正受給になってしまうことや、受給してもらえないということに繋がる間違いもあるので、ここでしっかり理解しておくことが大切です。

失業手当の申請時の所要時間

失業手当を受給する際には、最寄りのハローワークで手続きをしなければなりません。ハローワークは朝8時30分~17時15分まで開いています(土日祝日は除きます)。初めて申請に行くときにはその時間内に行けば大丈夫ですが、手続きには時間が掛かるのである程度余裕を持っていくことをおすすめします。

離職について窓口で職員と話をしたり、書類提出をします。手続き自体にそれほど時間が掛かるわけではありませんが、ハローワークに来ている人はたくさんいるので待ち時間が掛かることが多いです。具体的に何時間かかるとは明言できませんが、余裕をもって出掛けるようにしておきましょう。

失業手当を賢く貰うポイント

退職前から6ヶ月間の給料を多くする

退職時に会社からもらう離職証明書に基づき、ハローワークが離職票を作ります。離職票には過去6ヶ月の給与が反映し記されます。そしてその給与の情報をもとに失業手当の給付日数や金額が決まります。普段と同じぐらいの給与ではなく、退職する前の6ヶ月間は休日手当や残業をいつもよりプラスしておくとよいでしょう。

その給与が反映されるので離職票での退職時の給与が上がる可能性があります。退職を考えている人は、そこも考慮して仕事をしてみるといいかもしれません。

公共の職業訓練を受ける

職業訓練校とは早期に再就職できるように、求職者を対象とした就職に必要なスキルや知識を学ぶために各都道府県の自治体などがおこなっている公共の職業訓練です。この公共の職業訓練校ではパソコンのスキルやネイル、エステ、営業・販売、総務・経理、介護関係などさまざまな種類の講義がおこなわれています。
この公共の職業訓練校で学ぶメリットとしては、授業が無料で受けれるということの他に、自己都合で退職して3ヶ月経っていなくても失業手当が給付されること、そして職業訓練校が失業手当の給付期間を超える場合、延長することが可能になります。

退職し新たに違う分野で再就職をしてみたい人や、どの分野に再就職したいか決まっている人など、無料でスキルを学べ手当も保証してもられえると安心できます。公共の職業訓練校はコースによって1ヶ月、3ヶ月、半年、1年までとさまざまであり、中には2年間にも及ぶ長期のコースもあります。しっかり学べる場が提供されているので利用してみるのもいいでしょう。

ハローワークで退社理由をよく相談する

失業手当を受給するにあたり、退社理由はその給付金や受給できる期間に大きく影響を与えます。自己都合の退社では給付金が出るまでに最低でも3ヶ月は掛かります。また、倒産や解雇など会社都合の場合よりも自己都合の退社の場合は給付金や期間に大きく差が出ます。「給料がもっとほしい」「違う仕事がしたい」など明らかに自己都合の退社理由では会社都合にはなりませんが、理由によっては会社都合の退社に変更になる場合があります。

自分で自己都合の退社だと思い込んでいる人もいるのです。そのため、窓口でしっかり自分の退職理由を説明・相談することが大切です。後から「会社都合による退社の正当な理由があった」と認められる場合もあります。中でも多いのが、採用条件と実際の労働条件の違いであったり、パワハラやセクハラも会社都合の退社理由に認められる場合があります。

正当な理由があったのに自己都合の退社扱いになってしまうと、手当にも大きく影響が出てしまいます。その後の自身の再就職活動にも影響が出てくる可能性があるので、何か気になることがある人はもう一度自身の退社理由を考え直してみましょう。

会社が雇用保険に加入しているか確認する

現在働いている会社がきちんと雇用保険に加入しているか確認しておきましょう。失業手当は雇用保険に加入している被保険者でないと受給できません。雇用保険は31日以上継続雇用され、かつ週20時間以上働く従業員が対象となっています。

そのため学生のアルバイトを除く、パートやアルバイトの方もその条件に該当していれば雇用保険に加入することができるのです。雇用保険に入っていないことがわかれば、退職後失業手当を受給しようと思っていたのにできないということになります。もちろんその事情をハローワークで説明し、会社が雇用保険に入っていなかったということが分かれば調査が入りますし、最大2年までさかのぼって雇用保険に入ることができます(給料から天引きされていた場合は2年以上さかのぼれます)

しかし、失業手当は雇用保険に加入していた期間によっても受給期間が変わってくるので、受給額にも影響が出る可能性があります。退職を考えている方は、まず会社が雇用保険に加入しているか確認してみることにしましょう。

失業手当の受給に関する注意点

金額は退職前の給料の5割から8割ほど

失業手当は離職票に記載されている過去6ヶ月間の給料や働いていた期間、退職理由などをもとに決定されます。退職前の給料と同等の金額が給付してもらえると勘違いされる人もいらっしゃいますが、決してそうではありません。

失業手当の受給額は、今まで勤めていた会社の退職前過去6ヶ月間の給料の5割~8割ほどになっています。受給金額の割合に幅があるのは、賃金が高かった人や低かった人に大きな差が生まれないよう平均的に支給できるよう設定されているのです。転職するまでの間、失業手当で生活をしようと考えている人は、もらえる金額にも差があるので注意しておきましょう。

4週間に1度就職活動のチェックが入る

失業手当を受給する条件に「再就職の意思がある」ということが含まれていますが、これを評価できるように実際に就職活動をしているかどうかのチェックが認定日におこなわれます。再就職活動がおこなわれていないと、失業手当は給付してもらえません。

認定日が4週間に1度あり、受給者は決められた認定日に必ずハローワークに行かなければなりませんし、それまでに求人活動をおこなっていなければなりません。ハローワークに行き、パソコンの求人検索で検索し相談でも求人活動と認められます。ただし1日に何度も訪れても1回としか認められません。

ハローワークの営業日であればいつでも職業相談はできるので、積極的におこなうようにしましょう。就職活動と認められる活動は住んでいる管轄のハローワークによっても異なることがあります。事前に説明会等で間違いのないように確認しておきましょう。

給付の期間は退職理由で異なる

今までにも何度か説明してきましたが、退職理由で失業手当が給付される期間が異なります。自己都合退職の場合は年齢に関係なく、勤続年数で給付期間が変わります。勤続年数が10年未満の人は給付期間が90日、10年以上の人は120日、20年以上の人は150日となっています。

一方会社都合で退職となった人は、勤続年数と退職時の年齢で給付期間が決まるようになっていますが、自己都合退職の人と比べると最大2倍以上の期間で失業手当を受給でき、金額もそれに合わせて会社都合退職の方が大きくなります。ハローワークに行く前に自分も会社都合退職になることはないか、もう1度確認してみるとよいでしょう。

家業の手伝いは就業状態とみなされる

失業手当をもらう条件としてもいくつか例がありますが、給付を受けられない条件として「家事手伝いや農業、商業など家業に従事し、就職することができない」という項目が設けられています。失業手当をもらいながら再就職活動をして、家業を手伝っていることがばれてしまうと不正受給とみなされます。
不正受給は実際に給付を受けたか受けていないかは問われません。つまり、知っていて家業を手伝った場合もそうでなく知らなかった場合も罰則が科せられてしまいます。「こういうときはどうなるのだろう?」「これは手伝いのうちに入るのか?」と疑問に思うことがあれば、必ず確認するようにしましょう。

支給金額は年齢と賃金で変わる

自己都合退職の方は年齢に関係なく給付期間は変わらないとありましたが、支給金額は年齢によって変わってきます。離職票には「基本手当日額」が記載されます。この「基本手当日額」は毎年8月1日に見直されており、その年によって日額は変わります。
そしてこの「基本手当日額」が1日にもらえる失業手当の金額になり、年齢によって日額の限度額が決まっています。そのため年齢によって支給金額が変わり、この金額に給付日数を掛けることで失業手当の総給付額がわかることになります。

ケガをした場合は受給できない

失業手当は「働くことができる人」が受給条件となっています。そのため、失業手当を受給している間にケガや病気になって働くことができなくなってしまった場合、受給できなくなる可能性があります。以下の日数に注意して自分がそうなってしまった場合は、適切な申請や処理をおこないましょう。

☑ 1.働くことができなくなった日数が14日以内の場合

ケガや病気で働くことができなくなった日数が14日以内のときは、失業認定日を変更することで満額受け取ることができます。失業認定日を変更し別日に認定してもらうか、もしくは次回失業認定日のときにまとめて認定してもらい受給することになります(どちらも事前にハローワークに連絡が必要です)
しかし、このとき「ケガや病気で働くことができなかった」という証明書の提出が必要となります。病院で医師に診断書など書いてもらう必要があるので、もし該当するようになってしまった場合は、ハローワークに必要書類など確認するようにしましょう。

☑ 2.働くことが15日以上の日数を超えてしまった場合

この場合は失業手当は受給できなくなります。その代り傷病手当を受給してもらえるようになるので、申請するようにしましょう。ここで注意していただきたいのは傷病手当を受け取った場合、その分だけ失業手当の受給額が少なくなるということです。傷病手当を1日支給してもらったら、1日分失業手当が受給できなくなります。あらかじめこのことを知っておき、傷病手当を受給することになった場合は「傷病手当支給申請書」に病院で証明をしてもらいハローワークに申請しましょう。

☑ 3.30日以上の長期療養で働くことができなくなってしまった場合

ケガや病気で30日以上の長期療養になってしまった場合は、失業保険の受給期間を延長することができます。最大3年間まで期間を延長できます。延長する場合は「受給期間延長申請書」をハローワークに提出するようにしましょう。

介護が理由の退職では受給できない

失業手当は働くことができる人(もしくは働く意思のある人)でなければ受給できません。よって妊娠や出産、家族などの介護のための退職であっても受給することはできません。身内で介護が必要となり退職してしまった場合は、ハローワークでその状況を説明し失業手当の受給期間を延長して申請するようにしましょう。
最大3年間延長することが可能なので、その期間介護をしながら再就職できるような環境を整えていくとよいでしょう。

会社都合退職の場合は貰える金額が多い

自己都合による退職よりも解雇や倒産など会社都合による退職の人ほうが失業手当は支給額が多いです。会社都合になる場合は退職や倒産だけではありません。パワハラやセクハラなども該当する場合があります。
自分の退職理由を自己都合と認識して、そのまま自己都合による退職となってしまっている人も多いようです。自身の退職理由について何か気になる点がある場合は、ハローワークで相談してみるといいでしょう。

退職を決意したら失業手当の準備にとりかかろう

失業手当を含めお金の制度は知っているといないとでは大違い。知らない人の方が損をしてしまう場合が多いのです。制度や法律などは難しく感じてしまうことも多いですが、しっかり理解しておくことが大切です。退職したいと考えている人はすぐに退職するのではなく、事前に自分の雇用状態やどのような理由で退職するのかなど振り返ってみましょう。そうすることで失業手当の申請がスムーズに進められるようになります。慌てず、事前の準備をしっかりしておきましょう。

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