源泉所得税の納期の特例の申請書。提出することによる利点と注意点

フリーランスや中小企業の経営者の方の中には、毎月発生する源泉所得税の支払いに不満を持っている方も多いのではないでしょうか。源泉所得税の納期の特例制度の内容を知っているかどうかで、毎月の事務作業の時間短縮や納付の手間削減が可能となります。特例の内容をしっかりと理解し、事務コスト削減やリスク削減を目指しましょう。

源泉所得税の納期の特例の仕組みと利点

給与を受け取る従業員が10人未満の場合

源泉所得税の納期の特例の承認の対象となるのは、給与の支払い人員が常時10人未満である源泉徴収義務者となります。この場合には、年度末や繁忙期などに臨時で雇った従業員の数は含む必要がないため、年間を通しての常時雇用者が10人未満であれば、申請することが可能です。

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承認について

承認されたかどうかについては、申請書を提出した月の翌月末までに税務署長から承認あるいは却下の通知が届かなければ、申請書を提出した月の翌月末日に承認があったものとみなされ、特例が適用されます。承認されれば、給与や退職手当、税理士等の報酬・料金について源泉徴収をした所得税や復興特別所得税について、まとめて納付することができるようになります。

また、却下された場合には、処分の通知を受けた日の翌日から起算して3日以内に、その処分を下した税務署長に対しての再調査依頼や国税不服審判所長に対しての審査請求を求めることができます。

事前に申請書を提出する必要がある

特例を受けるには、事前に「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を提出する必要があります。申請書は2部作成するかコピーをし、どちらも受付印を押してもらって、1部を自分の控えとして保管しておきましょう。

承認の通知が来る場合もありますが、ほとんどの場合は自動承認となりますので、念のために受付印が押印された申請書を持っていることで、後々税務署からの問い合わせなどがあった際に活用できます。

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提出先は所轄税務署

提出先は所轄税務署となっており、国税庁HPを参照してください。また、提出する際には税務署へ出向いてもいいですし、郵送でも対応してくれます。郵送の場合には、自分の控えとなる方に「受付印をお願いします」などのメモを添え、切手を貼った返信用封筒なども同封しておくと手続きがスムーズです。

手続きに関する手数料

特例の手続きに関する手数料は無料です。申請をしておくだけで、年12回の納付回数が年2回まで減らすことができ、納付忘れなどの場合にかかってしまう不納付加算税や延滞税などの罰則金のリスクを極力避けることができます。

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所得税を年2回に分けて納付できる

納付の特例を申請することで、給与に対する所得税計算などの毎月の事務処理の軽減やまとめて納付することによる手間の削減ができるため、大幅な作業時間やコストのカットが可能となります。また、納付する源泉所得税の中には、賞与からの源泉所得税も特例の対象となっていますので、対象となる期間に合わせて納付するようにします。

納付期限は、1月から6月までの半年分は7月10日、7月から12月までの半年分は翌年1月20日の年2回となります。それぞれの納付期限が土日祝日の場合は、休み明けの日が納付期限です。期限を過ぎてしまわないよう、計画的に納付するように心がけましょう。

ただし、納期の特例の承認を受けていても、毎月納付することは可能です。特例の承認さえ受けていれば、毎月の納付期限である毎月10日までに納付する義務はありませんので、その期限を過ぎたからといって延滞税などが課税されることはありません。

申請書の提出時期は定められていない

申請書の提出時期については特に定められていません。原則としては、申請月の翌月からが特例の対象となります。そのため、申請書を提出した月に関しては、発生した源泉所得税の支払いを翌月10日までに支払う義務がありますので、その点は注意しておきましょう。

例えば、申請書を6月に提出した場合、年2回の納税は7月からの適用となり、6月分までは毎月納税する必要があります。申請した月から適用されるわけではありませんので、特例の内容をしっかりと把握しておくことが必要です。

ほとんどの場合には、申請書を提出した翌月末には自動承認されますが、まれに却下の通知を受け取る場合があり、その際には不服を申し立てることもできますので、国税不服審判所のHPを参考にしてみてください。

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資金繰りに活用することができる

毎月納付するはずの源泉所得税が年2回の納付になることで、猶予された源泉徴収税を経費などの資金繰りに活用することができます。毎月の定期的な支出を減らし、その分現金を手元に残しておくことができるので、資金繰りには有効です。

閑散期や繁忙期など毎月の収支に大きな変動がある場合には、納付する時期に合わせて現金を準備することができるため、経営者にとっては大きなメリットとなります。

源泉徴収の納期の特例における注意点

源泉所得税が発生しない場合も提出必要

年2回の納付時期に年末調整などが加わり、納税額よりも年末調整による超過額の方が大きくなってしまうケースがあります。この場合、納税額は0円となり、源泉所得税も発生しませんが、それでも「源泉所得税額がない」という証明のために、いわゆる0円納付書を提出する必要があります。

納付書に納付額がない旨を記載し、通常通り所轄税務署へ届け出が必要となります。もし、届け出を忘れてしまった場合には、後日税務署から給与支給額と税額を報告してほしいという通達や連絡がきてしまうため、二度手間になってしまいます。最近では、e-taxでも手続きできますので、税務署へ足を運ぶ手間を省くことができます。

対象要件に該当しなくなった場合も提出必要

常時給与支払いが発生する従業員が10名以上に増えた場合には、源泉所得税の納期の特例を受けることができなくなってしまうため、「源泉所得税の納期の特例の要件に該当しなくなったことの届け出書」の届け出が必要となります。

源泉所得税の納期の特例の申請と同様に手数料は無料で、提出先も所轄税務署になります。この届け出書を提出することで、申請月以前の源泉所得税額を、申請した月の翌月10日までに納付する必要があり、支払い忘れなどがないよう注意が必要です。

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徴収金額が高額になることがある

年2回の納付になるということは、6ヶ月分の合計額というまとまった支出があることの認識を、しっかりと持っておくことが重要です。高額な給与の支給を受けている従業員を抱えているような場合には、納税額に注意が必要です。納税額だけでもかなりの高額になることが予想されますし、もし仮に、納税できない場合や忘れてしまった場合には、多額の納税額とそれに対する不納付加算税や延滞税などの罰則金が課税されてしまうこともあり得ます。

資金繰りに困っているからといってこの特例を受けようとするのであれば、年2回の納付時に発生する源泉所得税の把握や一度に納税することへの対策をしっかりと行いましょう。また、これを機会に、税務管理などについて税理士の方との相談をしておくことで、資金繰り予定などを綿密に立てることができますし、経営状況の把握もしやすくなります。

給与振込時期を基準に納期が判定される

源泉所得税額の算出に関しては、給与の振込時期を基準として判断されます。つまり、12月分の給与でも1月振込の場合、現世塩所得税額としては1月分になるということです。このため、源泉所得税の納期の特例が適用されている場合には、納期は7月10日となります。

賞与などに関しては、6月や7月、12月に支給される企業が多いかと思いますが、これらも給与同様、振込された月を基準として判断します。6月の賞与の源泉所得税額の納付期限は7月10日となり、7月や12月に賞与が振込まれた場合には、納付期限は翌年1月20日となります。

賞与の源泉所得税額も含まれることで、納付額がかなり高額になるケースもあります。そうなると、賞与が支給される時期の変更などがある場合もあるようです。会社の制度自体を決めるうえでも、税制に関しての知識を持っておくことで、企業にとってのメリットを見出すことができます。

アルバイトもカウントする必要がある

源泉所得税の納期の特例の条件である「給与の支払い人員が常時10人未満である」の中には、日雇いのアルバイトは含みませんが、常時業務に従事しているアルバイトは含まれます。このアルバイトもカウントして、10人未満であることが特例を受けるための条件となります。

常時業務に従事する者には役員・正社員・常時雇用するアルバイトやパートが対象となりますが、そのうち役員報酬0円の役員は含まないので、注意しましょう。

これらのことをしっかりと把握しないまま特例の申請を承認されたり、あるいは却下されてしまうことによって、毎月の納付期限に間に合わず、無駄な延滞税などの課税をされてしまっているケースが多いようです。特例を受けるための条件に合致するかどうかを見極め、リスクを少なくしていきましょう。

デザイナーの報酬など対象外のものもある

特例で適用されるのは、従業員の給与や賞与、弁護士報酬、司法書士報酬、税理士報酬などに限られています。それ以外の外交員への報酬やデザイナー報酬、カメラマン報酬、ホステス報酬などは、特例の対象外となります。したがって、これらの対象外の源泉所得税については、毎月10日までに納付する義務があります。

特例の対象外の源泉所得税に関しては、毎月発生しないものがほとんどかと思います。しかし、フリーランスの方で多いのが、原稿料や講演料などの発生です。原稿料や講演料などは特例の対象外となり、毎月10日までに納税する必要があることを忘れないようにしましょう。

納期の特例は注意点を把握して利点を活かそう

源泉所得税の納期の特例は、中小企業の経営者やフリーランスをしている方にとっては、メリットが多い制度のひとつです。毎月の現金支出や税額の算出、振込などの事務作業の軽減など、多くの利点があります。活用している方も多いですし、これから起業を考えている方もしっかりと内容を把握しておくことで、いざ企業をした時の手続きもスムーズに行うことができます。

しかし、便利な反面、特例の対象範囲や資金繰りへの対策など、注意点も多くあります。それらの注意点を踏まえて、源泉所得税の納期の特例を活用し、より負担やリスクの少ない企業運営を目指していきましょう。

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