定款の作成方法。紙でも電子でもできる手続きのメリット。

会社を設立する際には定款を作成する必要があります。定款の作成方法は、紙による作成方法と電子による作成方法の2種類。紙による定款と電子による定款は、手続きの方法が違います。それぞれにメリットもあるので、手続きの方法や特徴を知っておくことが大切です。

定款の作成方法は2種類

電子による定款作成


定款は、会社の目的や業務執行や組織についてなどの基本規則を記したものです。会社を設立する際には、必ず定款を作成して認証しなくてはいけません。
以前までは書面による定款のみでしたが、現在はPDF化した電子による定款も認められています。作成した定款案を公証役場にメールもしくはファックスで送るのですが、メールで送る場合、定款案は後で修正しやすいようにPDF形式ではなく、WORD形式で送ったほうがいいです。オンライン申請後は定款内容は変更できません。

電子定款を作成するためには、機材やソフトが必要です。署名可能なソフトでないといけないので、Adobe Acrobatなどのソフトを購入する必要があります。
無料で入手可能なAdobe Readerでは、電子定款を作成できないので注意しましょう。司法書士や行政書士に依頼して、電子定款を作成してもらうという選択肢もあります。

電子定款作成時に必要なもの

☑ 1.マイナンバーカード
(マイナンバー制度により、以前まであった住民基本台帳が廃止)
☑ 2.電子証明書
☑ 3.ICカードリーダライタ

2017年12月現在は、マイナンバーカードを利用しなくてはいけませんが、郵送されてきたマイナンバーが書かれた紙ではなく、プラスチック製のICカードを用意しましょう。電子証明書は、マイナンバーカードに標準で搭載されています。

電子証明書を利用するには手続きしなくてはいけないので、マイナンバーカードと印鑑を持ち、住民票の住所内にある自治体の窓口で手続きを行います。また、マイナンバーを読み込むためには、マイナンバーカードに対応しているICカードリーダライタが必要です。

紙による定款作成

紙による定款作成で認証を受ける場合、予め定款を3通作成してから公証役場に持っていき、認証を受けます。公証役場に持っていく前に、予約を取りましょう。
定款3通の内訳は、1通目は公証役場保管用の定款、2通目は法務局への登記申請用の定款、3通目は会社保存用の定款です。
紙で定款を作成して認証を受ける場合は、電子定款で認証を受ける場合と比べて費用が4万円ほど多くかかります。

定款認証を受ける際に必要な持ち物

☑ 1.紙による定款3通
☑ 2.発起人(出資者)全員分の印鑑証明書
☑ 3.収入印紙代として4万円
☑ 4.公証人へ払う手数料として5万円
☑ 5.定款の謄本交付手数料として約2,000円(250円×ページ数)
☑ 6.代理人が定款認証を行う場合は委任状

手軽な電子定款

電子定款は収入印紙代がかからない


紙で定款認証を受ける場合は、収入印紙代4万円が必要です。しかし電子定款であれば収入印紙代はかかりません。Adobe Acrobatなどのソフトやカードリーダライタなどの機器を購入して自分で電子定款を作成しようと思うと、機器の購入費用が印紙代の4万円相当に値することもあります。自分で電子定款を作成する場合は、これらの機器を持っている場合であればメリットが大きいと言えるでしょう。

もし機器を持っていない場合は、代行業者や司法書士・行政書士などの専門家に代行を依頼することもできます。その場合、行政書士などに支払う報酬は必要になりますが、自分で機器を購入して電子定款を作成するよりも費用が大きく抑えられるうえに、作成の手間や時間も省けます。

全部自分で電子定款認証をするために必要な環境

☑ 1.電子証明書
☑ 2.Adobe Acrobatなどのソフト
☑ 3.電子署名プラグイン
☑ 4.電子公証クライアント

何もない状態から全て自分でやろうとすると、場合によっては10万円弱ほどの費用が掛かる場合があります。それらの負担を考えると、電子定款認証に対応した事務所等に依頼したほうが大幅に経費を削減できます。
代行を依頼することで時間の節約にもなるので、本業に集中できるというメリットも大きいです。

電子定款は簡単に修正作業ができる

電子定款を作成したら、事前チェックのために定款案を公証役場にメールもしくは電磁的記録媒体をファックスで送ります。メールの場合、WORD形式で送っておくと後で簡単に修正作業ができます。

ただし、オンラインで申請後は修正や変更が不可能となるので注意しましょう。その場合は改めてオンライン申請をやり直します。修正ができたらWORDで作成した定款を、PDF変換ソフトのAdobe Acrobatを使用してPDHファイルに変換します。

認証を受ける時に交通費がかからない

電子定款はオンライン上で定款を作成し、そのまま公証役場にメールで送信することが可能です。(電磁的記録媒体をファックスで送ることも可能)そのため、認証を受ける時に交通費がかからないというメリットもあります。

電子定款の認証を受ける場合、オンライン上で定款を作成して公証人役場に送信し、認証を受けた定款を公証役場に受け取りに行くという流れになります。(定款の謄本は公証役場で必要数をもらえます。)
司法書士や行政書士事務所などに代行を依頼した場合、定款認証が済んだら自宅まで郵送してくれるケースが多いので、公証役場に行く手間も交通費もかかりません。

電子定款でも紙媒体の謄本を発行できる

電子定款の場合は、メールで送信するなどオンライン上で定款の認証ができるのでとても便利です。それだけでなく、定款の認証を受けたら、公証役場に行くと紙媒体の謄本を発行することもできます。

公証役場の事務の方に必要な通数を伝えると、必要数をその場でもらうことが可能。通常であれば会社保存用だけあればいいでしょう。法務局への提出用の定款は、フロッピーディスクなどの電磁的記録で大丈夫です。公証役場で定款を格納したフロッピーディスクを受け取ることもできます。

電子定款を作成する時の注意点

指定公証人が電子定款の認証を行う

電子定款の認証ができる公証人は「指定公証人」のみです。そのため、電子定款で会社を設立したいのであれば、指定公証人がいる公証役場がその都道府県内に存在しているかどうかを確認する必要があります。もし指定公証人がいる公証役場がその都道府県内にない場合は、紙の定款で設立する以外に方法はありません。

指定公証人とは、法務大臣から指定を受けた公証人のことです。指定公証人がいる公証役場は、電子認証のための設備が整えられているので、電子定款の認証ができます。指定公証人については、法務省のホームページで確認することが可能です。

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定款を作成したPCを他人に触らせない

電子定款を作成した場合、PCを他人に触らせないように気をつけましょう。電子定款を作成するときには電子証明書を取得する必要があるのですが、この電子証明書は印鑑登録をした実印や印鑑証明書と同じ効力を持っています。
そういった重要なデータを保存することになるため、それらの情報を盗まれて悪用されないように厳重に保管・管理する必要があるのです。

電子証明書の作成や管理などで使用したPCは、第三者が使えないようにパスワードを設定するなどの対策をとるようにしましょう。もしセキュリティについて不安を抱いているのであれば、紙による定款で作成したほうが安全です。
認証を受けた定款は、利害関係者による紛争を予防する効力を持つほどの法的効力があります。とても重要な書類なので、紙の定款にした場合でも厳重に保管・管理をするようにしましょう。

電子定款を作成してみよう


定款の作成方法は、従来の紙による作成方法と電子による作成方法の2種類があります。電子定款を選択した場合は、印紙代が節約できるというメリットが大きいです。

ただ自分で電子定款を作成するには、いろいろな機器が必要になるため、それらの機器を持っていないのであれば代行を依頼するという選択肢もあります。報酬を支払う必要がありますが、機器を購入する代金よりは安いです。
もともと電子定款を作成できる機器を持っており環境が整っているのであれば、自分で電子定款を作成してみましょう。

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