定款への記載必須。事業目的を検討する時の注意事項について

定款は会社の憲法と呼ばれており、会社設立時には必ず作成する書類です。定款には事業目的の定めが必須で、法人登記簿にも記載されます。記載方法によっては取引先や金融機関からマイナス情報と認識される場合もあり、注意事項を頭に入れておく必要があります。

目次

定款の事業目的について

会社の主な事業を記載する


定款の作成上、会社の事業内容は絶対に記載しなければいけないもので「絶対的記載事項」と呼ばれます。定款に記載した事業内容は法人登記簿謄本にも記載され、第三者の目に触れることになります。
会社法の建前上取引の安全性を確保するため、法人は定款で定めた事業以外の事業を行ってはいけません。

よって今後の事業の将来を考え、想定しうる事業を記載するようにしましょう。そして目的の一番目は会社の主な事業と判断されますので、会社の中心事業を記載するようにします。
なお、定款の記載事項については以下の3つに分類されていますので確認しておきましょう。

1.絶対的記載事項

「事業の目的」「商号」「本店所在地」など定款に定めがなければ、定款そのものが無効になってしまう事項です。

2. 相対的記載事項

「公告の方法」や「株式譲渡制限」に関する定めなど、定めがなくても定款自体は有効であるが、定めがないと効力が発生しない事項です。

3. 任意的記載事項

「事業年度」など定めがなくても定款が無効にならず、また効力も否定されない会社が自主的に追加した事項です。

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業種について詳しく記載する

後ほど確認しますが、業種の記載については「明確性」が必要となり、第三者が一目で理解できるように詳しく記載する必要があります。例えば事業目的がサービス業では無効となってしまうのです。

更にご留意いただきたいのが「許認可」についてです。事業を行うにあたって特に顧客に大きな影響を与えかねない業種については、許認可や届出が必要となる場合があります。
例えば中古車や中古本などの中古品売買を行う業種については、管轄の公安委員会に古物商の許可を得る必要があるのです。飲食店の営業を行う場合は、都道府県より飲食店営業許可証を得なければいけません。

また、整骨院は管轄保健所への施術所開設届の提出、旅行代理店については都道府県知事への登録が必要です。注意しなければいけないのが、上記許認可は事業目的にも関連する場合があることです。

例えば、上記例のうち古物商許可の取得については定款の事業目的に「古物商営業法に基づく古物商」と記載しておく必要があり、また、旅行代理店の登録については「旅行業者代理業」か「旅行業法に基づく旅行業者代理業」のどちらかの事業内容を定款に記載しておく必要があります。

このように、場合によっては法律まで記載する必要がある点に留意してください。

健康保険組合を考慮した記載にする

将来入りたい健康保険組合がある場合にも留意が必要です。例えば通信機器関連業者の場合、通信機器産業健康保険組合に加入しようと予定されている方がいらっしゃるかもしれませんが、同組合加入のためには事業目的に以下いずれかの内容の記載がないといけません。

☑ 1.情報通信システム及び情報通信ネットワークに関わるソフトウェア、システム及び機器(給電・電源機器等を含む)、同部品の研究開発(利用技術を含む)、製造、販売、サービス提供、リース・レンタル、保守・運用管理及び電気供給を主たる業とする事業所
☑ 2.電気通信事業法第2条に規定する電気通信、電気通信設備、電気通信役務及び電気通信事業を主たる業とする事業所

このように、加入したくても記載がなければ加入できない場合もあります。

定款の事業目的を考える時の注意点

同業他社を参考に作成する


事業目的を考える際におおよそどのような事業を行うかは考えているが、いざ文字にしようとすると迷ってしまう場合があります。その場合は同業他社の事業目的を参考にしてみましょう。

同業他社のHP上に記載されている場合がありますし、ない場合でも同業他社の管轄法務局において法人登記簿を閲覧してみましょう。なお、法人登記簿は誰でも簡単に入手可能です。

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今後取り組む可能性がある事業を記載しておく

事業目的検討の際は事業の将来を想像し、取り組む可能性のある事業を可能な限り記載しておくとよいです。なお、事業目的の数に制限はありませんし、記載した事業を必ず行う必要性もありません。

定款変更の際には取締役会および株主総会での決議が必要ですので、後に変更する場合には時間や手間がかかってしまうことを考えると最初の定款作成時は非常に重要です。

?明確性や営利性のある事業目的を考える

定款の事業目的は「事業目的の適格性」を備えていなければいけません。具体的には以下の点に留意する必要があります。

1.営利性

会社は営利法人ですので、事業の内容が営利性をもち、得た利益を出資者に分配することができる事業でないといけません。例えば、寄付だけを事業目的とした場合、利益の分配はできないので営利性が認められず事業の目的とすることができません。
ただし、営利を目的としない事業を行う場合は「非営利活動法人」として事業を行うことが法律上認められています。

2.適法性

違法な事業は会社の目的とすることができません。例えば詐欺を働く事業などと明記することはできません。
また、タバコの製造など特定の会社にしか認められていない業務や登記の申請など弁護士や司法書士などの独占業務となっている事業もありますので留意してください。

3.明確性

第三者からみて、どのような事業内容かが明らかである必要性があります。この判断は法務局の登記官が行います。
例えば、一般的に周知されていない商品の製造・販売業務の事業目的にする際、その商品名を記載しても意味が分からないので明確性に欠け、登記ができない可能性があります。

記載しすぎに注意する

上記で事業目的の数の制限がないことは確認しました。ただし、記載のしすぎには注意が必要です。以下に理由を記載します。

1.取引先からの信用が失われる可能性がある

一貫性のない事業目的が数多く記載されていると、何を行っている会社か第三者の目からみてわからない場合があります。
特に、新規の取引先などの場合は今後取引を安心してできるのかどうか調査される場合があり、その一環として法人登記簿を見られる可能性があります。その場合事業内容が不明瞭だと信用を失う恐れも。

2. 金融機関から融資を受ける際にマイナス情報として認識されるおそれがある

金融機関から融資を受けるとき、金融機関は申込法人の実態調査を行うため法人登記簿をほぼ必ず見ることになります。その際、多種多様な事業内容の記載があると法人活動実態の信ぴょう性を疑われる可能性が出てくるのです。

また、金融機関側は特に創業したての会社からの融資申し込みの場合には、社長の経営理念を審査の一項目として参考にする場合があり、事業目的に一貫性がないと計画性を疑われて信用が薄れる原因となります。

事業目的を変更する場合はお金がかかる


定款変更の際には登録免許税3万円が必要となります。また、行政書士や司法書士に定款変更を依頼する場合には別途報酬が発生しますので、少なくない出費が発生することに。
できる限り最初の定款作成時に、今後行う可能性のある事業の内容を列挙しておくことで無駄な出費を抑えましょう。

また、事業内容の最後に必ず、「前各号に付帯関連する一切の事業」を記載しておきましょう。それまでに記載した事業内容に関連する事業であれば、具体的に記載がなくても事業内容の一部とみなされます。
いざという時の逃げ道となるわけです。最悪、定款の変更手続きを踏まなくてもよい結果になる場合もあり、出費を抑えられます。

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