目次
定款変更するには
株主総会にて変更内容を決議する
会社が設立され、営業していく中では、定款を変更することも起こりえます。例えば、
☑ 1.一般事項の変更(商号や印鑑の変更、本店住所の変更など)
☑ 2. 事業計画や収支予算にかかる変更(許認可申請のための事業目的変更など)
☑ 3. 出資一口の金額の減少にかかる変更
などによって定款変更が必要となります。
では、定款変更を行うには、どのような手続きや書類等が必要となるのでしょうか。定款変更時には、まずは株主総会が開かれることが必要です。株主総会に定款の変更内容を付議し、その内容が決議されることによって定款変更を行うことができるのです。
なお、定款変更の決議については、会社法にその要件が記載されていますが、「株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(三分の一以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の三分の二(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければならない」とされています。
株主総会の議事録のみ保管で良い
株主総会にて定款変更が議決されれば、登記が必要な定款変更(商号変更・事業目的変更・会社(本店)の住所変更など)の場合は法務局で登記を行います。
この際、定款変更内容を記載した株主総会の議事録を持っていき登記申請を行います。変更内容を記載した議事録は、原始定款と一緒に会社で保管します。
法務局へ提出する議事録も原本でなければなりません。そのため、議事録原本は2部作成しておくか、もしくは法務局提出時に議事録原本とコピーを提出し、法務局確認後に返却を受ける「原本還付」の手続きをとるようにしましょう。
登記が不要な定款変更の場合は、株主総会で決定した内容を議事録に記載し、会社で保管するのみでいいです。ただし、決算月変更などの場合は、税務署への変更届書類提出が必要です。
公証人の認証を受ける必要はない
会社設立前の定款は、作成しただけでは効力が発生せず、公証人の認証を受けることによって法的な効力を得るようになりました。ですが、定款変更の場合には、公証人の認証を受ける必要はありません。なぜなら、定款変更には株主総会での決議が必要とされます。
先にお話ししたとおり、株主総会での決議は「議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(三分の一以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の三分の二(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって」行われるため、公証人の代わりとして機能し、法的効力を維持することができるのです。
よって、公証人の認証が不要となります。
関係各所へ変更手続きが必要な項目
法務局へ登記申請が必要なもの
次の定款変更を行う場合には、法務局への登記申請が必要となり、法務局への登記申請は、株主総会での決議後2週間以内に行います。
☑ 1.会社の商号変更
☑ 2.事業目的(内容)変更
☑ 3.会社(本店)の住所変更
☑ 4.支店の移転や設置・廃止
☑ 5.株式に関すること
☑ 6.公告方法の変更
☑ 7.取締役会の設置や廃止
☑ 8.監査役の設置や廃止
☑ 9.機関構成の変更
このように、登記事項にかかる定款変更であれば、法務局での登記申請が必要となるのです。
登記申請にあたっては、株主総会の議決内容が記載されている議事録のほかにも、登記申請書、収入印紙・添付台紙、登記費用、印鑑届出(変更内容によっては不要)が必要となります。登記費用については、変更内容によって費用が異なるので注意しましょう。
たとえば、会社(本店)の住所変更時、法務局管轄内の住所変更であれば費用は3万円となります。しかし、法務局管轄外への住所変更となる場合は、移転元・移転先分の申請書作成が必要となるため、費用はそれぞれ3万円ずつの計6万円となります。
実際の申請様式・必要な書類・費用等については、法務局ホームページ等を参照するようにしてください。
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税務署に異動届を出すもの
次の定款変更については、法務局への登記申請は必要ありません。ただし、税務署に異動届を提出する必要があります。
☑ 1.決算期の変更
このように、税務署での管理事項にかかる定款変更であれば税務署への申請が必要となるのです。株主総会の決議内容が記載された議事録については、税務署へ提出する必要はありません。ただし、会社にて保管しておくようにしましょう。なお、異動届の提出時には費用はかかりません。
実際の申請様式等については、国税庁ホームページ等を参照するようにしてください。
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変更内容によって申請書類を用意する
商号変更を行った場合には、法務局へ登記申請をする必要がありますが、このほかにも、税務署へ異動届を提出する必要があります。そのため、定款変更内容によっては、法務局への登記申請と税務署への異動届提出の両方が必要となることがあります。
定款の変更内容によって必要となる手続きや書類が異なるため、申請書類は変更内容に合わせて用意するようにしましょう。
定款変更部分をわかりやすく保管するには
定款変更の議事録を添付すると後々面倒
定款変更は、株主総会の決議によって行われ、その内容は議事録に残す必要があることがわかりました。
定款は原始定款(会社設立時に作成した定款)が保存されており、変更内容が直接原始定款に書き加えられることはありません。このため、原始定款と議事録をあわせて読むことによって、現在の定款の内容がわかるようになっています。
つまり、定款変更を何度も繰り返してしまうと、定款変更内容をすべて正しく確認して現在の定款内容を把握するには、過去の議事録すべてを読み返す必要があるのです。この作業を行おうとすると場合によっては膨大な時間がかかり、また正確な内容把握も難しくなってしまいます。
このことから、定款変更を行う際には、議事録には「別紙のとおり定款を変更する」と記載し、別紙として定款の新旧対照表を添付したほうが見やすいような場合もあります。
変更が小規模な場合は別紙として添付
定款変更が小規模であった場合には、株主総会で決議された変更内容については別紙として添付しておいたほうが見やすい場合があります。
議事録には「定款変更内容は議決された。内容は別紙のとおり」といった旨を記載しておくようにし、議事録の別紙として定款変更内容を添付します。定款変更内容については、新旧対照表のようなフォーマットだと見やすいでしょう。
このように、定款変更内容を議事録本文中にひとつずつ記載するのではなく、別紙にまとめて記載することにより、定款変更部分をわかりやすく正確に保管することができます。
変更が大規模な場合は新たに作り直す
それでは、定款変更部分が大規模であった場合も、別紙として新旧対照表を作成することになるでしょうか。
もちろん別紙を作成して議事録に添付することも良いですが、大規模な変更が繰り返されることも考えられます。この場合、別紙に変更箇所がまとまっているとはいえ、やはり過去にさかのぼっての確認作業が大変になることも予想されますので、定款自体を新しく作り直すことも可能です。
定款変更部分が大規模になる場合は、定款自体を新しく作り直したほうが見やすく管理もしやすくなるでしょう。変更部分が少ない場合は定款自体の作り直しのほうが大変になりますが、変更部分が多い場合は、変更対照表を作成するにも労力がかかるので、定款作り直しのほうが良いことが考えられます。
定款を作り直した場合には、最新の内容をすべて取り込んだうえで、代表取締役による「これが現行定款である」証明を付けることが必要です。こうすることにより、作り直した定款が現行定款として扱われます。
必要な手続きを知ってスムーズに変更する
定款変更はどの会社であっても起こりえること。株主総会での決議が終わっても、議事録作成や、決議後2週間以内での各所への申請など、さまざまな手続きが必要になります。定款変更に必要となる手続きを知っておいて、スムーズに変更が行えるように備えておきましょう。