起業のための資金調達方法。自分のスタイルに合う援助制度を見つける

起業するにあたって、まず必要なのが「資金調達」。日本は、比較的起業する方への資金援助制度が充実しているといわれています。さまざまな方法がありますが、それぞれのメリット・デメリットを知り、調達後も見据えた自身に合う方法を選択しましょう。

起業のための資金調達方法

友人や親族から借り入れる

友人や親族から借り入れる方法は、契約に比較的自由な条件がつけやすく、他人の資本であっても経営権を保持しやすいというメリットがあります。

しかしその一方で、個人間の貸し借りであるため専門家などのアドバイスを請うことがむずかしく、トラブルやリスクが高いというデメリットも存在します。近しい間柄でも、双方の署名捺印を要する借用書や、金銭消費賃借契約書などといった書類を作成することは必須です。

例えば、契約書を作らずに両親など身近な親族から借り入れた場合。そういった場合、その資金は「贈与」したとみなされ、贈与税がかかってしまうことがあるので注意が必要です。そして、契約書を交わしていても、返済期限が記されていなかったり、返済を証明できるものがなければ、実質的に贈与とみなされてしまうので、近しい間柄と油断せずに慎重に行いましょう。

個人投資家に相談する

「エンジェル」と呼ばれる個人投資家の方から借りいれる方法です。すでに起業経験があったり経営者であったりという方が多く、資金調達に関してはもちろん、経営についてのリアルな知識を持つため起業に対してのアドバイスを受けられるというメリットがあります。友人や知人からの借り入れ同様、個人間のやりとりとなるため、信頼関係のもとに成り立つものでもあります。

著名な個人投資家からの支援を受けたということは、それだけ自身の企業に対しての信用も得ているということです。ですから、取引先であったりその後の資金源となる他の投資家へのアピールポイントともなります。

実現性が高い日本政策金融公庫

政府が設けた金融機関、日本政策金融公庫の「創業融資」という制度を利用する方法です。最大1500万円まで融資を受けることができます。起業前でも申し込みでき、審査にかかる期間は約1カ月半ほどと、自治体や金融機関でかかる約2ヶ月半の期間に比べてスピーディーです。

融資を受ける際におさえておきたいポイントは、

☑1.自己資金の割合
事業資金全体の3分の1は必要です。

☑2.経営者の業種経験、能力
起業した業種の経験がどの程度あるかということが問われます。(従業員としての経験も含む)

☑3.資金使途
事業計画書や実際の見積書に基づいて、融資額がきちんと予定されているかが審査されます。

☑4.返済計画
事業計画書の毎年の税引き後の利益が、返済額を上回っているかがチェックされます。

一般的な金融機関に比べると1.2%ほど金利が高くついているという点がデメリットです。しかし、売上や事業実績がなくても無担保・連帯保証人不要で融資を受けられることがあり、起業する方には好条件がそろった借入先といえます。

金利が安い信用保証協会

創業融資に比べて約1〜2%金利が低いのが、自治体による信用保証協会(信用金庫)の「制度融資」です。個人事業主や中小企業へのサポートを目的とした制度で、低金利で1000万円〜2000万円の融資を受けることができます。無担保、保証人不要で起業前でも申し込み可能。金利が低い分、審査にかかる期間が約2カ月と多少時間がかかります。

自治体によって制度の条件・内容は多少異なってきますが、主に基本となる条件は、

☑1.融資を受ける自治体内に事業所があること
☑2.許可や登録、届出が必要な業種にいたっては、当該許認可等を受けていること

が挙げられます。

ベンチャーキャピタルからの出資

資本と引き換えに、ベンチャーキャピタルの出資を受け入れるという方法です。ベンチャーキャピタルとは、将来性があると判断したベンチャー企業からの株式を引き受ける投資会社のことです。将来性が重要視されるため、審査は非常にハードルの高いものとなります。

ベンチャーキャピタルから融資を受けることで、「この会社はベンチャーキャピタルから融資するだけの評価を受けている」と認知されるので、その後の資金調達がスムーズにいきやすくなります。

ただし、ベンチャーキャピタルはあくまでもその企業の成長性を見据えて投資しているので、経営が立ちいかなくなると資金が回収されてしまうことや、出資の意向にある程度沿わないといけないなどといったデメリットもあります。

他企業からの出資受入

自身の株式を他の企業に譲渡(売却)し、出資を受け入れるという方法です。このとき、株式の譲渡率が50%を超えると、事実上経営権を譲渡したことになります。せっかく苦労して起業した自身の企業を思い通りに経営することができなくなってしまう可能性があるので注意が必要です。株価の価格は、出資者との話し合い、交渉のもとで決めることができます。

資金の協力だけでなく、出資元の企業の協力を得られるというメリットがあります。新たなアイデアを吸収し、さらに企業を大きく発展させたい場合には効果的な方法です。

そもそも出資受け入れには他企業とつながりが深く、信頼関係が築けているかが大きなカギとなります。

助成金や補助金

融資は、金利がついて返済しなければいけないのに対して、助成金や補助金は「給付」されるため、返済の必要がないのが大きなメリットです。

混同しやすい助成金と補助金ふたつの違いとしては、受付期間や給付される条件、難易度の違いです。助成金は通年で給付を行っているのに対し、補助金は受付期間が限られているなど、給付の対象が狭まっており、ややハードルは高まります。

助成金・補助金は政府やそれぞれの自治体が各自で行っており、その中でもいくつかの種類があります。

☑1.経済産業省系の補助金
起業促進や地域活性化、中小企業振興などを目的として経済産業省が実施している補助金制度です。公募制が多く審査もあるので、条件さえ合えば給付されるというものではありません。

☑2.厚生労働省系の助成金
雇用促進、労働者の職業技術向上などを目的として厚生労働省が実施している助成金制度です。起業し、従業員を雇い入れる場合に適用されます。基本的には、助成金ごとの条件を満たしていれば給付されます。

☑3.自治体独自の助成金・補助金
自治体ごとに給付の条件や制度の充実度も変わります。単に資金を給付するだけでなく、自治体独自で借入金利子の補助、ホームページ等の作成費用負担、店舗家賃の負担などさまざまな内容が設定されています。

個人資産を資本とする自己資金

起業資金の最も基本的なものが、起業家の個人資産である自己資金です。自身で経営権を保持でき、金利負担も少なく済むメリットがあります。ただ、自己資金でまかなおうとすると資金量も限られるため、やはり他のいずれかの方法で融資を受けるケースが多くなります。

その融資を受ける際に、自己資金の割合が融資条件の一部となることがあるため、ある程度は自己資金を準備しておくと金融機関からの信用も得られスムーズな資金調達につながります。例えば、飲食業や不動産業などでしたら500万円〜1,000万円、それ以外の業種であれば100万円〜が理想となります。政府や自治体から補助を受ける場合でも、事業資金全体の3割は自己資金であることが条件とされる場合もあります。

社員で出資しあう社員持株会

社員持株会とは、設立する会社の社員が資金を出し合う方法のことです。そこには規約や従業員持株会の組織編成、理事が必須になります。従業員は、ただ単に働くのではなく「自分が出資した会社」という意識が芽生えるため、モチベーションアップにつながるメリットがあります。

ただその一方で、株主が分散することで話し合いなどがあった場合にまとまらないことがあったり、従業員の退職時には株を現金で回収する手間・デメリットもあります。

資金調達のメリットとデメリットを考える

金利や調達後の条件もさまざまなので、自身だけで判断することが難しいという場合は一度専門家の方に相談することもできます。じっくり検討し、自身の目的、起業スタイルに合った方法を選びましょう。

さらに詳しく知りたい方は
税理士に無料相談LINEChatworkメール

関連記事