年末調整の手続きをした後は、医療費控除申請をして節税対策しよう

サラリーマンの方は会社で年末調整の手続きをしますが、そこでは医療費控除は受けられません。その年にある程度の医療費がかかっている場合、別途医療費控除の申請もすれば、税金が控除されて手元にお金が戻ることになっています。

目次

年末調整と医療費控除の関係

年末調整で医療費控除は受けられない

会社員の方は毎年「年末調整」という作業をしています。年末調整とは、企業がその年に従業員に支払った給与から毎月差し引いている所得税を、年末にまとめて清算することをいいます。

毎月の所得税は、仮に計算していたもので、1年の給与支払いが確定する年末に改めて計算しなおし、確定するという作業を行っています。この所得税には、さまざまな控除が受けられることになっており、個人が入っている保険や、扶養家族など扶養家族控除等があれば、申告をして税金控除を受けることができます。

しかし、この年末調整の控除の中では医療費控除は対象外となっています。医療費は、1月1日から12月31日までの1年間かかった分を翌年の確定申告で控除申請します。そのため、会社の年末調整では、個人でかかった分の医療費まで控除として申請できないのです。

医療保険は年末調整に反映

年末調整の書類を見ると、「控除」や「生命保険」「医療保険」など、税金の控除に関係のあるような文字が記載されています。この年末調整でも所得税に対して「配偶者控除」や「保険料控除」等の控除が受けられます。

その中でも個人で加入している「生命保険」や「地震保険」等は任意加入の保険ですから、会社が把握できていない部分については、保険会社から送られてくる「○○保険料控除証明書」を会社に提出して、控除を受けることが必要です。

医療保険控除は医療費控除とは違う

医療費控除と間違えやすいという点で、個人で入っている医療保険(入院保障)は「生命保険料控除」という枠で控除が受けられます。医療費控除とは別のものです。

もしも、保険会社から「医療保険料控除証明書」が届いているのであれば、年末調整で控除されるものですから、書類と一緒に会社へ提出し年末調整の手続きをしましょう。

医療費控除には確定申告が必要

年末調整を行っていても、医療費控除は受けられていません。会社が行っている作業ですから、個人の医療費を会社が申請していることもありません。

個人の所得税を減らすための医療費控除が受けたい場合には、企業が行う年末調整とは別に、サラリーマンであっても個人で確定申告を行わなければなりません。確定申告は高所得者や個人事業主がすることなどと考えがちですが、どんな人でも必要があれば行うことができるのです。

医療費控除を受けるために必要なもの

医療費の領収書の原本

実際に医療費控除の申請には、1年間にどれだけの医療費を払っていたかを証明するものが必要になります。確定申告は国税庁への正式な申請のため、すべて原本が必要です。コピーは使えないので注意しましょう。

医療費控除の医療費の範囲

医療費控除の申請について定められている医療費とは、「医師または歯科医師による診療、または治療の対価」「治療または療養に必要な医薬品の購入」「助産師による分娩介助の対価」等、8つ程度の項目があります。

これらの項目に当てはまる医療費の領収書をまとめて申請することになります。医療費といっても各家庭によってさまざまな事情があるため、「一般的に支出される水準を著しく超えない部分の金額」という条件がついています。

また、一部の項目には医療費として認められるために証明書が必要とされています。国税庁のHPにも医療費の範囲について、具体例が掲載されていますので、迷ったときは参考にしてみましょう。

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生計を一にする親族の医療費も対象となる

医療費は「生計を一にする」親族のものは全て合計することができます。例えば、離れて下宿している大学生の子供に仕送りをしているのならば、その子供の医療費も合算することが可能。また、離れて暮らす親に仕送りをして生計を支えているのであれば、その親の医療費も合わせることができます。

また、共働きの夫婦の場合など、扶養関係がなくても医療費を負担している場合は合算することができます。

保険診療だけが対象ではない

医療費の範囲には、保険診療の対象外になった費用でも医療費控除の対象になるものもあります。風邪薬の購入費など、病院で診察を受けていない費用や、出産に関わる費用、レーシックの手術代、また介護に必要な費用でも、条件を満たせば医療費控除の対象となるものがあります。

医療関係の領収書は、全て捨てずに保管しておきましょう。

保険金等に注意

医療費の合算した後に注意が必要なことがあります。任意で加入している生命保険や損害保険、共済組合などの保険金等の有無です。

これらのお金は「医療費を補填する保険金等」といって、医療費控除の合計額から差し引いて申請しなければなりません。また、出産時の「出産育児一時金」も該当となるため、医療費として支払った金額から差し引いて計算する必要があります。

国税庁のHPにある医療費の明細

医療費の領収書を集めるということは理解できても、その領収書が大量だと集計するだけでも大変です。確定申告の書類上では医療費控除の金額を記入する欄は1行しかないので、集計した明細を添付することが必要です。

もちろん、自分で作成してもよいのですが、国税庁のHPには医療費控除を申請するための「医療費集計フォーム」が掲載されています。確定申告用に考えて作られているため、間違いが少なくなります。支払年月日から医療を受けた人、医薬品名や病院の住所まで、明細として必要な項目がすべて記入できるようになっています。また間違えやすい集計も表計算ソフトで自動で計算されるため、計算ミスが防げますよ。

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会社からもらった源泉徴収票

医療費控除の申請に必要な書類として、医療費の領収書のほかに源泉徴票が必要となります。その1年間にどのような雇用形態であっても、会社で働いた経験のある方には源泉徴収票が発行されます。たとえ退職されている場合でも源泉徴収票が必要となります。個人事業主の方は自己申告のため、必要ありません。

また、融資等の関係で金融機関へも原本を提出する必要のある場合がありますが、確定申告にも原本が必要です。医療費の領収書と同じくコピーは使えませんので、原本がない場合には会社へ再発行の手続きをとって必ず原紙を添付しましょう。

通院にかかった交通費のメモや記録

医療費控除の対象となる医療費の項目の1つに「病院、診療所または助産所へ収容されるための人的役務の提供の対価」というものがあります。

これはケガや急病や出産等で病院などへ運ばれるために支払った費用であり、タクシー代や交通費ということになります。ただし、自家用車のガソリン代までは対象外。このような場合は領収書がないことが多いため、その都度メモをとっていれば、そのメモが明細として認められることもあります。

メモや記録の内容

メモの内容は日時と金額が必須。どこからどこまでの交通費なのかがわかるように詳細を記録しましょう。また、通院等であれば、病院の名前と目的、わかるようであれば住所も記入しておきましょう。

医療費控除を申請するメリット

サラリーマンでも節税が可能

サラリーマンにとって、一部の方を除いて、会社で年末調整をしてくれていれば、確定申告の必要はありません。所得税等の税金額の計算は、国が決めた方法で算出されており、個人で手続きする必要がないためです。

逆に考えると、サラリーマンはいわれた通りの税金を払うしかないのです。しかし、1年間に一定額以上の医療費を支払っているのであれば、医療費控除を申請することにより、何もしなければ変わらない所得税を変え、節税することができます。

節税の金額は人それぞれ

医療費控除額が確定しても、所得税に対する税金がどのくらい少なくなるかは実際に所得額と税率を計算してみなければわかりません。控除される金額が同じ人がいても、所得金額の多い人の方が所得税率が高くなっています。そのため、所得金額の多い人の方が、差し引かれる税金は多くなります。

セルフメディケーション税制

2017年からセルフメディケーション税制の運用が開始。今までは医療費控除の対象とならなかった医薬品が控除の対象とされるようになってきたのです。サラリーマンでも該当の医薬品を選ぶことで、医療費控除を通して節税へつながる行動をとれるようになってきました。

申告年の翌年の住民税が安くなる

医療費控除を申請するメリットとして、医療費控除額がその年の住民税の対象になる所得金額にも影響をすることから、住民税も安くなるということがあります。

ただし、住民税はその前年の所得額によって計算されているので、医療費控除が反映されるのは翌年の住民税です。所得税と違い、この住民税は自動的に反映されるので、改めて住民税用に医療費控除を申請する必要はありません。

還付金がもらえる

医療費控除をすれば、税金が安くなります。この安くなった税金は、還付金として実際に戻ってきます。

所得によって所得税率が変わるため、個々に計算がされますが、一般的には1年間の医療費の合計が10万円を超えた場合、超えた部分に対して計算された還付金が返ってくることになります。確定申告後1〜2ヶ月後には指定の口座へ還付金が振り込まれることになっています。

行政サービスが受けやすくなる

医療費控除のその他のメリットとして、行政サービスが受けやすくなることが挙げられます。各市町村が行っている行政サービスは所得制限のあるものが多くあります。

児童手当

児童手当は各市町村が給付している行政サービスの1つですが、所得制限があります。児童手当とは、児童を育てる保護者に対して、市町村から支給される手当となります。

家庭内で最も所得の高い保護者の「給与所得控除後の金額」を対象として、扶養家族の数と所得金額、対象となる子供の年齢や子供の人数によって限度額があり、給付金額が変わってきます。

そのため、児童手当を申請する人の所得が所得制限のボーダーラインにある場合には、医療費控除を申請することによって所得が下がり、児童手当を受けられるようになることがあるのです。

国民健康保険料や保育料の支払いが減る

医療保険控除のメリットとして、国民健康保険料や保育料の支払いが減るということがあります。国民健康保険は各地の市町村が運営しており、個人の所得額や資産額によってその市町村が設定している保険料を支払うことになっています。

そのため、医療費控除を申請して所得額が少なくなれば、国民健康保険料も安くなる場合も。また、同様に保育園等の保育料も各市町村によって、所得金額の階級別に設定されています。この保育料についても医療費控除申請による所得額の削減で安くなる可能性があります。

年末調整の後にしっかり医療費も申告しよう

医療費控除は所得税を減らして還付金が返ってくるだけではなく、節税につながったり、さまざまな行政サービスにも影響していきます。

「年末調整しているから大丈夫」と安心せず、サラリーマンであっても確定申告で医療費控除を申請しましょう。

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