土地や建物、会社の情報に変更があったときに行う登記申請ですが、会社の設立の際にも法務局に登記申請を行うことが必要です。土地の相続をした場合にも必要な登記申請は、自分で行うことが可能な申請です。スムーズな登記申請のために、入念な準備をしましょう。
目次
登記申請書の閲覧
当事者や利害関係者は登記申請書や添付書類の閲覧が可能
登記を受付した法務局に申請します。郵送での閲覧申請は受け付けていませんので、遠方でも法務局に行く必要があります。手続が可能なのは、「閲覧」のみで、コピーを取ることや証明書を発行することはできません。
閲覧の際に、カメラ、携帯等でデータ保存することは可能なので、閲覧時には忘れずに持参しましょう。また、時間帯によっては当日に閲覧できない可能性もあります。あらかじめ法務局に連絡し、該当する登記申請書等を準備してもらうとスムーズに閲覧できます。
登記の内容が磁気ディスク登記簿により、コンピュータに蓄積されている登記所も存在します。その場合、閲覧方法による登記情報の公開はしていません。代わりに「登記事項要約書」の交付を請求することになります。
登記簿等の保存期間
登記簿等の保存期間は規定により決められています。平成20年7月22日、不動産登記規則の一部改正施行により、規則28条の保存期間が変更されています。
☑商業法人登記申請情報(申請書、添付書類) 5年
☑商業法人登記の閉鎖 20年
☑印鑑記録 永久
☑土地や建物の登記記録、地図、土地所在図及び地積測量図、建物図面及び各階平面図 永久保存
☑閉鎖した土地の登記記録 50年
☑閉鎖した建物の登記記録、表示、権利に関する登記の申請情報とその添付情報 30年
☑抹消された信託登記の信託目録、閉鎖された工場財団登記の工場財団目録 20年
規定はありますが、各法務局により保存期間に差があるようです。保存期間経過後は廃棄され登記簿がない場合もあります。
登記申請書について
登記申請書はどういう時に必要なのか
建物、土地、会社などの情報に変更があった場合、法務局に備える登記簿に修正・追加を申請しなければなりません。その申請の際に必要になるのが「登記申請書」です。結婚や引っ越した場合に申請する結婚届や転居届等と同じように、新たな情報を記入した登記申請書を届け出ることにより、登記簿の更新をしてもらえます。
☑不動産の購入
☑土地を相続した
☑住宅ローンを完済したが抵当権の登記がついたままである
☑会社を設立
☑本社の移転
☑会社の組織に変更が生じた
上記の場合に登記申請をします。建物や土地などの不動産の場合は、不動産登記。会社に関する登記は、商業・法人登記になります。
登記申請は複雑で多くの証明書等が必要
登記申請は申請人が自分で行うことが可能です。しかし、登記申請の内容が複雑なものは添付する証明書等の書類が多く、その収集に労力と時間を費やすことになります。
会社の設立登記には、多くの書類が必要です。それぞれの書類には署名や捺印が必要で、押印する印鑑が異なるなどの気を付けなければならない点もあります。また会社の登記申請をする前には、定款の作成や認証を終えている必要があるので注意しましょう。
司法書士や土地家屋調査士に委任できる
登記の申請は、申請人が行うか司法書士などの資格者代理人に委任する方法があります。登記の申請の内容によって多くの証明書や測量の技術が必要なものもあり、司法書士や土地家屋調査士に申請手続きを委任して行うこともできます。
土地家屋調査士は土地または家屋に関する調査、測量、申請手続を行います。登記では、不動産の表示登記に関する手続。新築や増築した建物の規模や土地の用途など測量の必要があるものを登記簿に反映させます。司法書士は、法務局に登記、供託に関する手続きを代理で行います。
登記申請書の書き方
登記申請書を自分で作るには
登記の内容により、申請書も変わるので注意が必要です。
登記申請書にはA4判の白色の用紙を使用します。用紙を縦置きにし、記入は横書きです。片面のみ使用し、表裏両面の使用はできません。パソコン、ワープロ等を使用またはインク、黒色ボールペンによる手書きで、鉛筆の使用はできません。申請書が2枚以上になるときは、登記権利者および登記義務者が登記申請書に押印した印鑑と同じ印鑑で契印します。
登記申請書に記載が必要な項目
☑ 1.商号
☑ 2.登記の事由
☑ 3.登記すべき事項
☑ 4.課税標準金額
☑ 5.登録免許税
☑ 6.添付書類の名称
☑ 7.申請年月日
☑ 8.申請する人の名前
☑ 9.申請先法務局名
法務局のサイトでは、申請書様式の記載例や申請書のダウンロードができます。
登記申請書に押す印鑑は認印で良いのか
印鑑には実印と認印があります。実印は、市区町村の役場で印鑑登録している印鑑のことで、印鑑登録をすることで市区町村の役場で印鑑証明書を発行してもらえます。実印に印鑑証明書を添付することで本人の印鑑であることが証明できます。
登記申請では、その登記により不利益を被る可能性のある当事者は、登記申請書に実印を押し印鑑証明書を添付することが原則です。
実印でなければいけないケース
不動産の売却、贈与、不動産に抵当権などの担保権を設定する場合は、実印と印鑑証明書が要求されます。実印を押すことで本人の意思で登記申請をしたことを確認するためです。
認印でもよいケース
登記申請に印鑑証明書を添付する必要がない当事者は、押印をする印鑑は認印でもかまいません。不動産売買の買主や贈与を受けた人は認印でもよいのです。代理人に委任する場合も、委任状に押す印鑑は認印でかまいません。
登記申請書は郵送できるのか
登記申請書は郵送でも受け付けています。その場合、到達の確認が可能な書留などで送付し、封筒に「登記申請書在中」と明記します。申請書には必ず連絡先の電話番号などを記載します。郵送は申請書や添付書面の補正や取り下げについても可能です。
補正が必要な場合、登記所から電話で連絡が入ることもあります。その際、申請書の受付年月日と受付番号が伝えられるので、補正書に受付年月日と受付番号を記載します。
オンラインで申請する方法
商業、法人登記に関するオンラインでの申請は、登記の申請のみ可能で、印鑑の提出や電子証明書の発行請求および審査請求は対象外です。会社の設立登記等で印鑑の提出が必要な登記申請については、印鑑届書を管轄登記所の窓口に提出、送付する必要があります。
印鑑提出が必要な登記申請をオンラインで行う場合、印鑑届書にはどのオンライン登記申請とともに提出されたものであるかを確認する必要があるので、必ず申請番号または受付番号を印鑑届書の余白に記載するようにしましょう。
オンラインでの設立登記の申請手続
オンライン申請をする場合、申請用総合ソフトを利用し作成した申請書情報と、その登記の申請に必要な添付書面情報を登記、供託オンライン申請システムに送信する必要があります。オンライン申請については法務省のオンライン申請のサイトをご覧ください。
申請システムの利用時間は月曜日から金曜日までの8時30~21時までですが、登記の申請の受付時間は8時30分から17時15分までです。17時15分以降に送信された場合は、送信された日の翌業務日の受付になります。
法務局への相続登記の仕方
亡くなった方が財産として不動産を所有していた場合、相続人がその不動産所有者の名義を変更するために、登記の申請を行います。遺言書による相続、話し合いによる遺産分割協議による相続、法定の割合による相続などにより、提出する申請書の内容が変わりますので注意が必要です。
自分で相続登記を行う場合は、その不動産を管轄する法務局へ申請します。申請はその不動産を相続する人が行い、期限はありません。
必要書類
☑相続登記申請書
☑登記原因証明情報
☑住所証明情報
☑登記にかかる登録免許税
などが必要になります。
登記申請の際必要な書類
登記申請書に添付する書類は原本の添付が原則
登記の申請には、申請書と一緒に登記原因証明情報、登記識別情報、印鑑証明情報などの書類の原本を添付します。これらの書類は還付(返却)されることはありません。
返却されない書類のうち、他の登記の申請に使用するなどの理由で、書類の還付が必要な場合があります。この場合、申請人は原本をコピーし、そのコピーに申請人が「原本に相違ない」旨を付記し署名することにより原本の返却を請求することができます。
登記官は原本により登記申請をしたあとで原本とコピーを照合し、一致していることを確認してから原本を申請人に返却します。これは「原本還付」の手続といわれるものです。
登記申請書に添付する必要書類
登記申請書に添付する書類は登記の内容により異なります。とくに会社設立の場合は、登記申請書のほかに添付する書類が多く必要です。会社設立方法が発起設立か募集設立か、取締役会を設置するのかしないのかによっても添付書類は異なります。
発起設立(取締役会を設置)の場合
本人、知人、家族などでお金を出して行う会社設立のことです。
☑ 1.設立登記申請書
☑ 2.定款
☑ 3.設立時発行株式および資本金・資本準備金に関する発起人の同意書
☑ 4.設立時取締役、設立時監査役選任、本店所在場所決議書
☑ 5.設立時代表取締役選定決議書
☑ 6.設立時代表取締役の就任承諾書
☑ 7.代表取締役の印鑑証明書
☑ 8.取締役の就任承諾書
☑ 9.監査役の就任承諾書
☑ 10.取締役及び監査役の本人確認証明書
☑ 11.払込証明書
☑ 12.調査報告書
☑ 13.財産引継書
☑ 14.資本金の額の計上に関する証明書
☑ 15.印鑑届書
詳しくは、法務局のサイトをご覧ください。
登記申請書の様式
所有権移転登記申請書の書き方
不動産を売買した場合、所有者が移転するので登記の変更を行います。これを「売買による所有権移転登記」といい、この手続きを行うことで第三者に不動産の所有権を主張できます。不動産所有者が変わるのは、売買のほかに相続があります。
不動産の所有者が亡くなった場合に、亡くなった方から相続人の方に不動産の名義を変えることを「所有権移転登記」と言います。相続の場合は、亡くなった方の出生から亡くなるまでの戸籍謄本、除籍謄本、相続する方全員の戸籍謄本に住民票、話し合いをした内容がわかる遺産分割協議書を作成し法務局に登記申請を行う必要があります。
所有権移転登記申請書に必要な項目
☑ 1.登記の目的
☑ 2.原因
☑ 3.相続人
☑ 4.添付書類
☑ 5.課税価格
☑ 6.登録免許税
☑ 7.不動産の表示
A4の白い紙に、パソコンやワープロ、黒色ボールペンで手書きで記入します。申請書に記入する際、住所の「地番」と「家屋番号」が普段の住所と異なる場合があるので、法務局で確認しましょう。
抵当権抹消登記申請書の書き方
住宅ローンを完済しても、抵当権は自動的に抹消はされません。抵当権抹消登記をする期限はありませんが、自宅の売却や物件を担保にお金を借りる場合、抵当権抹消登記が必要になります。
抵当権抹消登記申請書の項目
☑ 1.目的 「抵当権抹消」と記入
☑ 2.原因 債務を完済し抵当権が消滅した原因
☑ 3.日付 債務を完済し抵当権が消滅した日付
☑ 4.抹消すべき登記 抹消する抵当権の登記を法務局の受付番号で特定
☑ 5.権利者 物件所有者の登記簿上の住所氏名
☑ 6.金融機関の本店、商号、会社法人等番号、代表取締役
☑ 7.添付書類 登記原因証明情報、登記済証、登記識別情報、代理権限証書、資格証明情報など
☑ 8.申請年月日と申請する法務局
☑ 9.申請人兼義務者代理人
☑ 10.登録免許税
☑ 11.不動産の表示
A4の用紙、コピー用紙に記入します。パソコンでも手書きでも問題ありませんが、鉛筆は使えません。添付する書類の、登記原因証明情報と資格証明情報、銀行の登記の委任状は、銀行から渡される書類です。そのうち登記原因証明情報と委任状には、住所や氏名、日付を記入する必要があります。
事前準備で複雑な登記申請をスムーズに
土地の相続や会社の設立といった、土地や建物・会社の情報を登記といいます。その情報を登録することで、土地や建物の場合は第三者に所有権を主張することができます。
登記申請書に使用する書類は、その申請により異なります。法務局のサイトでは各申請内容による必要な書類のダウンロードが可能なので、スムーズに申請を行うためにも入念な準備と確認をしましょう。
登記申請は自分で行うことも可能ですが、申請内容が複雑な場合には専門家の協力をお願いしましょう。司法書士や土地家屋調査士の方に委任することによりスムーズに登記申請が完了できます。