定款の事業目的を作成する際のポイントを分かり易く解説

定款の事業目的の欄を作成しようとしたとき、どう書いて良いのか多くの方が悩むところです。定款の事業目的を作成する際に気を付けることは「営利性・適法性・明確性・具体性」の4つ。ここに注意しながら完成させましょう。

定款の目的を作成する際のポイント

会社がどのような事業をしているのかを明記する

定款とは社会法人や財団法人の目的、活動、構成員、業務執行などの基本的な規則そのものの内容を、紙や電子媒体に記録したものを言います。その中でも「事業目的」は「絶対的記載事項」といって、必ず記載しなくてはならない項目です。会社の組織や運営に関する基本的なルールを明記した、いわば会社の憲法のようなものなのです。

作成した定款は発起人全員で署名・捺印をし、公証人役場へ持っていき公証人に認証してもらいます。認証の終わった定款は、会社設立登記手続きの際に必ず添付しなくてはいけません。会社設立後は、定款の記載内容に従って経営をしていく事になります。

事業目的の設定は1つでも大丈夫ですが、定款に記載されていない事業を会社の仕事とすることはできません。将来事業を拡大したいと考えているのなら、当面は予定していない事業でも多めに記載した方が後々のために良いでしょう。事業目的に定めたからといって、その事業を全て行わなければならないということではないので大丈夫です。

認可や届け出が必要な場合はそれを記載する

業種によっては、認可や届け出が必要なものもあります。それを行わずに営業すると法律によって刑事罰が課せられたり、営業停止になることもあるので注意が必要です。

まず「営業の許可」とは、法令によって禁止されていますが、行政機関が許可することによって営業が可能になることをいいます。開業前に申請し、審査を受けなければいけません。時間がかかり、場合によっては不許可になる場合もあります。

次に「認可」とは、法令に定められた一定の基準を満たすことで認可されるものをいいます。例えば、保育所などは認可が下りれば営業することができます。

また「届け出」とは、行政に届け出ることで営業が認められるもののことをいいます。法令で届け出が必要とされているものは、必ず行わなければいけません。また、届け出をした後に確認が行われることもあります。

さらに「登録」というものもあります。登録とは、開業前に申請先機関に届け出て帳簿への記載が必要なもののことをいいます。申請後、審査し、承認されることが必要です。

許可や認可が必要となる事業の場合は、許可・認可を意識した「事業目的」を記載します。許可や認可を必要とする業種は、管轄の行政機関からの許認可を得られないと事業を始めることすらできません。ですから、許認可の要件を満たした内容の事業目的をしっかりと考えるようにしましょう。自分が始めたい事業に許認可が必要なのかどうかは、事業目的を考える前にチェックしておくのがベターです。。

健康保険組合に入るためには目的に準じた記載が必要

健康保険組合とは、健康保険法に基づいて国が行う「被用者医療保険事業」を代行する公法人のことをいいます。事業・会社を立ち上げる際には、社会保険の中に含まれる健康保険組合に加入する必要が出てきます。特に法人の場合は社会保険加入は義務なので、この届けを出さなければいけません。

健康保険組合の書類をダウンロードしたら必要事項を記入し、目的に応じた記載をしてください。必要な添付書類や記載事項は「法人」と「個人事業主」で異なってきます。「法人」の場合は、商業謄本の原本と事業所所在地の確認ができるものが必要になり、「個人事業主」の場合は、代表者の住民票謄本の原本と事業所所在地の確認ができるものが必要になります。

また、健康保険組合といった社会保険団体の中には、事業目的に関して「加入条件」を定めている団体も存在します。例えばIT関連の健康保険組合の場合、加入には「パッケージソフトウェアの利用技術・研究開発及び流通」「ソフトウェアプロダクト及び関連ソフトウェアの研究開発及び流通」「コンピュータ及び周辺機器の販売、保守サービス」「コンピュータの利用による情報の提供」といった内容と同等の文言があるかが加入要件に関わってきます。

このような条件のある団体に加入したい場合には、事業内容を意識して記載しなくてはいけません。自身が進めたい事業にはどういった認可・許可が必要で、どういった社会保険の団体を利用したいのかという所もしっかり考えなくてはならないのです。

将来的に携わる可能性のある事業を記載する

定款の事業目的の欄には、今現在やる仕事の他に、将来的に携わる可能性のある事業も記載しておいた方が良いでしょう。まず基本的に事業目的は、誰が見てもわかるように明確な内容にする必要があり、抽象的な表現はできるだけ避けて具体的な記載をした方が良いとされています。

事業目的の内容は、今やっていない業務でも事業を展開していく中で関連多角化として進んでいく分野もあります。そのため、そういったものも視野に入れて書き出していく必要があるのです。しかしやたら多く書きずぎてしまうと事業内容自体を疑われ、最悪の場合信用を失うことになりかねません。

そこで将来の夢をしっかりと考え、本当に必要のある事業を選定していき、最終的に10個程度に抑えると良いでしょう。相手方が読んだ際の印象も良くなります。

他の会社の定款を参考にする

初めて会社を設立する場合、会社の事業目的をどう設定していいかよくわかりませんよね。そんなときに参考にしたいのが、同業他社の定款。「そんなことできるのか」と疑問に思われる方もいると思いますが、実は他者の定款は会社のホームページに記載されている場合も多いのです。

また、ホームページなどに記載のない会社の定款を見て参考にしたいという場合は、法務局で手数料を払えば誰でも閲覧することができます。これらを参考にしながら、自身の事業目的をしっかりと定めていきましょう。

目的の変更には費用がかかる

会社設立時の作った定款は「原始定款」といい、定款の変更はこの原始定款を書き換えることではありません。定款の変更は株主総会で定款の変更を決定し、議事録に残すことをいいます。その後、必要に応じて法務局に定款変更の登録申請をします。事業目的の変更は、法務局にて登録の必要な定款変更に含まれています。

事業目的の変更には、「登録免許税」といった費用が掛かります。金額としては、申請件数1件につき3万円ほどです。事業目的は1つ増やしても5個増やしても、仮に削除したりしても申請件数は1件のままなので費用は3万円のままです。しかしこの他に、司法書士費用やその他の出費がかかります。こういった、登録免許税を何度も無駄に払わないためにしっかりと定款を作成しましょう。

会社の成長に合わせて目的を適宜見直す

定款の事業目的は、会社の成長に合わせて適宜見直しをしていきましょう。会社を設立したときに明確に事業内容を決めたとしても、会社の成長と共に新たな事業目的を追加・変更する必要が出てきます。

この場合には今の時期に合った現状をしっかりと把握し、将来像を見据えて再び事業内容を考える必要があります。会社の成長に見合った事業目的の作成を、柔軟に進めていきましょう。

定款の目的に幅を持たせる言葉を最後に記載する

定款の目的に幅を持たせるために、最後に「前各号に附帯または関連する一切の業務」と記載しましょう。これを記載することで、会社の目的に記載してある事業に関連する業務も「範囲内」であると示すことになります。

これは多少のことで登記の変更をしなくて済む言葉です。この言葉を用いることで、直接的でなくても間接的に業務の関連性をアピールすることができるのです。

定款の目的は3つに分けて記載するとすっきりする

会社の利益となる営利性

定款の目的は主に3つに分けることができ、まず「営利性」を考えなくてはいけません。営利性とは対外的活動によって利益を上げ、その利益を構成員に分配することを目的とする性質のことを意味しています。そもそも会社というものは、営利を目的としている組織です。

そのため営利性のない事業目的を記載し、登記することはできません。営利を追求しない組織を設立したいという場合は「非営利活動法人」が法律的に認められているので、そちらを設立することになります。

法令などを順守している適法性

法令などを順守しているものを「適法性」といいます。会社設立の際にはこの適法性も考えなくてはいけません。なぜなら、違法な活動は事業の目的として登記することができないからです。

公序良俗に反した内容の事業も、事業目的としては認められません。会社法も立派な法律ですので、こういった面を考えながら事業目的を決めるようにしましょう。

誰が定款を見てもわかるような明確性

定款の作成は、誰が見てもわかるように作成しなくてはいけません。そもそもの趣旨である「取引の安定を図る」という観点から、事業の目的は誰が見てもわかるような内容にすることが基本です。

例えば「製造業」「サービス業」「販売業」といった表記で書いたとしても、それだけでは不明確と捉えられてしまいます。そこで怪しまれないように、はっきりと明確に「何に対するサービス業なのか」等を、具体的に書く必要があるのです。

できるだけ目的は具体的に記載する

定款の事業目的は、抽象的な表現を避けてできるだけ具体的なものにする必要があります。例えば「製造業」と記載するのではなく、「電子計算機の製造」と記載するなどの工夫があると良いでしょう。読み手のことを考え、利便性の高い情報を記載するようにしてください。

しかしこの具体性は、会社法が施行される前の商法の時代のことです。実は会社法の改正によって、現在では「具体性」が審査基準から外されています。具体性が外された理由としては、商号の規制緩和にあるといわれています。旧商法では、商号の規制が厳しく制約が多くありました。

以前は同一の市町村内で同一の営業目的で、他の会社と同一若しくは類似する商号を登記することができませんでした。こういった事態を避けるために、定款の目的を具体的に明記する必要があったのです。ところが会社法の改正によってそのようなことはなくなり、それに合わせて定款の事業目的を具体的に明記する必要がなくなりました。

ですが定款というものは、株式会社の目的や内部組織、活動に関する根本原則を含んでいます。第三者が見て、何をする会社なのか判断できなければ混乱が起きてしまいます。そのため、定款の具体性はできる限り書いておいた方が後のためにも良いと言えるでしょう。

同業者のサンプルを見ながら定款の目的を整理しよう

定款の事業目的についてはだれもが悩み、困惑してしまう所です。定款の書き方に迷った時には同業他社の定款を参考にしながら進めていきましょう。他者の定款のサンプルを見ることで新しい考えや視点が沸き、上手に書けるようになります。

同業者のサンプルはホームページや法務局で見ることができます。法務局で閲覧する場合は、数百円かかりますので注意が必要です。定款の目的や明確性をきちんと整理して、読み手のことも考えながら作成していきましょう。

さらに詳しく知りたい方は
税理士に無料相談LINEChatworkメール

関連記事