会社設立時、法務局に提出が必要な書類の中に「資本金の額の計上に関する証明書」があります。出資が金銭出資のみの場合は不要な書類ですが、設立当初より資本準備金の計上や現物出資を行う方は提出が必須です。記載方法と注意点を確認しましょう。
目次
資本金の額の計上に関する証明書について
設立時の代表取締役が作成する
「資本金の額の計上に関する証明書」とは会社の設立時に法務局へ提出する書類であり、資本金の額が適法に計算されているかどうかを証明する書類です。金銭で出資した額と現物出資額の合計額が資本金額となります。この書類は設立時の代表取締役が作成する必要があります。
資本金が1円でもある場合は作成する
現在会社の設立は資本金1円からでも可能です。「資本金の額の計上に関する証明書」は全額金銭での出資の場合は提出は不要ですが、以下の場合は資本金1円でも提出が必要となります。
1.設立時に資本準備金がある場合
会社法第445条第2項、第3項では、資本金の2分の1までを資本準備金として積み立てることができると規定されており、この資本準備金は将来会社の経営が悪化したときなどに取り崩すことができます。
2.設立時に現物出資がある場合
現物出資とは、会社の設立にあたって金銭以外のもので出資を行うことです。例えば、会社設立時に会社のものとした車両などを出資金としてみなすことができるわけです。その他土地や建物などの不動産、債権も対象となります。
法務局に提出する重要書類
会社設立時には主に以下のような書類提出が必要となります。なお、以下の提出例は「取締役会を設置しない株式会社の発起設立」の場合ですのでご留意ください。
☑ 1.定款
(公証人役場の認証を受けているもの)
☑ 2.発起人の同意書
☑ 3.設立時代表取締役を選定したことを証する書面
☑ 4.設立時取締役(及び設立時監査役)の就任承諾書
☑ 5.本人確認証明書
☑ 6.払込みを証する書面
☑ 7.資本金の額の計上に関する設立時代表取締役の証明書
「資本金の額の計上に関する証明書」は条件を満たす場合、提出しなければ設立申請を法務局に受け付けて貰えません。また、資本金の額は法人登記簿に記載され、今後の取引上重要な情報となります。計算方法に錯誤等がないよう、細心の注意を払い作成しましょう。
資本金の額の計上に関する証明書の記載事項
通帳に払込を受けた金額
資本金の額の計上に関する証明書の記載事項、および注意点について確認していきます。
まず、「払込みを受けた金銭の額(会社計算規則第43条第1項第1号)」を記載します。これは発起人から金銭で出資を受けた場合、その合計額を記載してください。
また、現物出資の金額については、「給付を受けた金銭以外の財産の給付があった日における当該財産の価額(会社計 算規則第43条1項第2号)」にその金額を記載します。
ここに記載する金額は証拠書類の添付が求められます。上記で確認した「払込みを証する書面」です。以下注意事項を確認します。
1.金銭出資の証明書類
金銭出資の場合の手順を追って確認していきましょう。
まず、出資金入金用の発起人個人の銀行口座を用意します(会社の口座現段階ではまだ作れません)。既に持っている口座でも構いませんが、必ず通帳のある口座を用意してください。発起人が複数存在する場合は代表の口座で構いません。
次に用意した銀行口座に、発起人からの資本金を入金します。その際次の点に留意してください。
☑ 1.公証人役場で定款の認証を受けた日より後に行うこと
(認証日前の出資の場合、法務局で受理されません)
☑ 2.「預け入れ」ではなく「振り込み」で入金すること
(発起人の個人名が通帳に記載されることに意味があります)
資本金の入金が完了したら、資本金証明のため通帳をコピーします。通帳のコピー該当箇所は以下の3点です。A4の払込証明書と合わせるため、A4でコピーしましょう。
☑ 1.表紙
☑ 2.通帳の見開き1ページ目
☑ 3.資本金の入金がわかる部分
次に払込証明書を作成します。払込があった金額や株数、1株あたりの金額等を記載し、会社の記名・代表者印を押印(捨印要)をするだけの簡単な書類です。雛形はインターネットで検索すると簡単に見つかるので参考にしてください。
最後に払込証明書と通帳コピーの製本をつくります。上から払込証明書、通帳表紙、通帳の見開き1ページ目、資本金の入金が分かる部分の順で綴り、左側2ヶ所をホッチキス止めし、代表者印で契印を押せば完成です。
当該完成書類が金銭出資の場合に、法務局へ提出する払込を証する書面となります。
2.現物出資の証明書類
会社設立において、現物出資がある場合は「資本金の額の計上に関する証明書」のほかに、「1.現物出資財産引継書」「2.調査報告書」という書類を別途作成する必要があります。また、必ず現物出資の内容を定款に組み込む必要もあります。
1の書類は現物出資をする発起人が作成する書類で、出資する財産の内容および当該財産を給付する旨が記載されたものです。また、2は設立する会社の取締役や監査役が作成する書類で、財産の給付に対してどれだけの株式を割り当てたの等を記載します。作成忘れに注意しましょう。
※現物出資の額が500万円を超えると検査役の調査を受ける必要があります(会社法33条)。この検査役は裁判所に選任してもらわなければいけないので、手続きが煩雑となります。この点もご留意ください。
払込の金額から減ずるべき金額
次に「資本金及び資本準備金の額として計上すべき額から減ずるべき額と定めた額(会社計算規則第74条第1項第2号)」を記入します。登記に関する登録免許税や、会社設立時に必要な定款認証費用など設立に関する費用の一部に資本金で補填できることとなっています。
また、資本準備金を計上する場合は出資金のうち、資本準備金とする額を明示します。(資本金の額によっては資本準備金に組み入れることにより、税制面でメリットがある場合あり)
払込金額と減じた金額の差額
最後に「資本金等限度額」として、上記「払込みを受けた金銭の額」と「資本金及び資本準備金の額として計上すべき額から減ずるべき額と定めた額」の差額を記載します。この金額が証明される資本金額となります。
なお資本準備金を差し引く場合は、その額を証する書面として発起人全員の一致があったことを証する書面の添付を求められますので、ご留意ください。
会社の本店所在地と商号
証明書の記載が完了すれば、後は法人の記名捺印を行って作成完了となります。ここでも注意事項があるので確認しましょう。
1.本店所在地
本店所在地の記載は省略せず、正確に記入する必要があります。注意しましょう。以下例です。
〇 東京都千代田区九段南1丁目2番〇号
× 東京都千代田区九段南1-2-〇
2.商号
商号についても同様で略字を使用せず、正確に記入してください。
〇 株式会社 〇〇不動産
× (株)〇〇不動産
設立時の代表取締役の氏名と法人印
次に代表者の氏名を記入します。代表取締役などの役職名の記載も忘れないようにしてください。
最後に法人印を捺印(実印)します。ここでの印鑑はあくまで法人印ですので、代表者の実印を間違えて押印しないようにしましょう。捨印の押印も忘れないように。
資本金の額の計上に関する証明書を作成してみよう
以上「資本金の額の計上に関する証明書」について確認してきました。資本準備金を検討している場合や、金銭出資以外に現物出資などを行った場合に必要となる書類ですが、決して自身で作成できない書類ではありません。
ただし、現物出資については金額によっては複雑になる可能性があるため、自身で対応できないケースも考えられます。その場合、急いでいる方は、最寄りの行政書士や司法書士事務所へ依頼することをおすすめします。