決算月はいつがいい?設定の際に考慮すべきポイントを徹底伝授

会社をはじめるときに悩むのが決算月。「どういった時期を避けるべきなのか」と疑問に思っている方も多いかもしれません。今回は、決算月を設定をするにおいてのポイントを伝授。会社にとってメリットが大きくなるように設定しましょう。

目次

会社の決算月を決める際に考慮する点

業務の繁忙期を避ける

会社の決算月として避けるべきなのが「業務の繁忙期」繁忙期というのは、事業において売上がもっとも高くなる時期。「繁忙期に売上が高くなるのであれば、この時期が一番決算月として適しているのでは?」と考える方も多いかもしれませんが、実はそうではありません。

というのも、繁忙期は売上が急上昇する分「利益の予測がしにくい」のです。たとえ例年が平均して同じくらいの利益だったとしても、その年が必ず平均的な売上になるとは限りません。場合によっては、例年より高くなったり反対に低くなることがあるのです。

売上が高くなった場合には「利益が多くて納税額が増えてしまった」売上が低かった場合には「赤字決算になってしまった」というケースも。また、繁忙期は通常と比べて仕事量が多く「決算に必要な事務作業まで行う時間がない」という事態にもなりかねません。こういった事態を回避するためにも、決算月は繁忙期とある程度空けておくのが無難です。

資金の支出が重なる時期を避ける

資金の支出が重なる時期も、決算月には適していません。決算をしてから2ヶ月以内に「法人税」「事業税」などのさまざまな税金を支払う必要があるのです。会社に余裕がある場合は、問題ありませんが「短期間に多額の支出を避ける」には、資金の支出が多くなる時期を避けたほうがよいでしょう。

会社として資金の支出が多くなる時期としては「夏季・冬季の賞与」「労働保険料の納付」「源泉所得税の納付」といったタイミングが挙げられます。この前に決算をし、納税が発生してしまうと場合によっては資金繰りが困難になってしまう可能性も。

会社として、しっかりとした資金のやりくりをしたい場合はこれらの時期を避けるべき。そのほかにも、会社それぞれに支出が多くなる時期があるでしょう。しっかりと納税・資金繰りをするためにも「多額の支出が重ならないように」配慮してください。

会計事務所の繁忙期を避ける

決算をするために必要な業務を、会計事務所に依頼することもあるでしょう。この場合に避けるべきなのは「会計事務所の繁忙期」依頼する会計事務慮が忙しい時期だと対応に時間がかかってしまったり、場合によっては依頼自体を断られてしまうことも。

会計事務所の繁忙期として挙げられるのが3月と12月。決算月を3月に設定している会社が多いため、3月は法人決済の依頼が多くなります。また、12月は個人事業主の確定申告の依頼が多くなる時期。どの会計事務所も3月と12月は忙しくなるため、どうしても親身な対応ができなくなってしまうケースが多いのです。

中には「繁忙期だから報酬代金がいつもよりも高く設定している」という会計事務所もあるようです。丁寧に決算の相談にのってもらい、迅速な対応をしてもらいたいのであれば3月と12月の繁忙期は避けるべき。それ以外の月に決算日を設定し、会計事務所へ依頼をしましょう。

社内イベントのピークを避ける

会社によって十色ですが、年間にさまざまな社内イベントを行っているところも多いでしょう。この社内イベントがある月も、決算月としては避けるべきです。社内イベントとして挙げられるのは「周年式典」「キックオフ」「社内総会」など。

大規模な社内イベントを計画している場合、どうしても社員が準備で忙しくなってしまうのです。そのためこの時期に決算を設定すると「イベント準備と通常業務で決算にまで手が回らない…」という事態に陥ってしまう可能性が。社員の負担を考えると、イベントと決算時期は避けるべきです。もちろん、準備があまり必要ない小規模なイベントであれば決算時期と重複しても問題はないでしょう。

また、もう一つ気を付けるべきポイントが「人事異動のタイミング」異動があると、引継ぎや整理などで通常以外の業務が増加します。この時期も決算月としては適しません。

消費税の免除期間に配慮する

中小事業者に対する特例として「納税義務の免除」が定められています。2年前の課税売上高が1,000万円以下の事業者には消費税免除期間があるのです。

つまり、会社を設立してからの1期・2期の2年間は、2年前の売上がないので消費税が免除されるということに。できるだけ節税するためには、この免除期間を考慮して決算月を決定する必要があります。

ただ「第2期開始時点での資本金が1,000万円を超えている」「設立の2年以内の間に売上・給与の支払額がともに1,000万円を超えている」などの場合は2年間の免除が受けられなくなります。免除にはさまざまな条件が設けられており、例外もあるため「自分の会社が条件を満たしているのか」「2期目以降は免除を受けられるのか」よく考えることも大切です。

設立日からなるべく離れた月にする

さきほど解説した消費税の免除期間をもっとも長くするためには、会社の設立年月から一番遠い月を決算月として設定するのがベスト。7月1日に設立した会社であれば、翌年6月に決算月を設定することで、1期・2期とまるまる2年間消費税が免除されることに。

反対に、7月に決算月を設定してしまうと、消費税の免除期間は13ヶ月に減ってしまいます。設立年月すぐに決算月を設定すると、最初の年の第1期が「7月1日〜7月31日」とたった1ヶ月のみとなってしまい、結果的に免除される月数が減少してしまうのです。

決算月を決定する場合には、こういった免除期間も考慮するとよいですね。節税をするのは会社にとっても大切なこと。ご自分の会社の設立年月を考慮し、決算月を考えてみてください。また、免除の条件について詳しくは国税庁のサイトをチェックしましょう。

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事業の業種に応じて決める

事業の業種に応じて決算月を設定するのも一つの手段。業種によっては一定の時期に決算を設定すると、とても大変になってしまうことがあるのです。

たとえば、たくさんの商品を抱える「卸売業」「小売業」これらの事業では、決算月になると「棚卸」を行う必要があります。棚卸というのは、実際に今所持している商品在庫を、目でみて1つずつ数えていくこと。在庫がどれだけあり、どのくらいの金額があるかを数えます。

たくさんの在庫を抱えている時期に決算月を設定しまうと、在庫の数だけ棚卸をするのが大変に。卸売業・小売業であれば、在庫を多く抱える繁忙期に決算月を設定するのは避けるべきでしょう。反対に棚卸の負担を減らすのに適しているのが比較的商品在庫が少ない閑散期。商品の在庫が少なければ少ないほど、棚卸の負担を減らせます。事業によって適した決算月は異なるので、業種にあわせてよく検討してましょう。

決算月設定の基本ルール

自由に設定することができる

「会社の決算は3月…」というイメージをお持ちの方も多いと思いますが、法人の決算月は自由に設定することが可能。個人事業主の場合は確定申告の関係でどうしても12月になってしまうのに対し、法人であればどのタイミングに決算日を設定するのか柔軟に決められるのです。

事業年度で分かりやすく設定したいのであれば、設立年月にあわせて決算月を設定するのもあり。売上や繁忙期を考慮して設定するのもよいでしょう。「決算月をどんな考えで設定するのか」は会社によって異なります。「〇月に決算を設定することによって、どのようなメリット・デメリットが生まれるのか」よく考えてみてください。

もちろん先ほど解説した「会社の決算月を決める際に考慮する点」を踏まえた上で検討するのもよいです。設定が自由であるからこそ、会社にとってメリットが大きい月を選んでくださいね。

あとから変更することも可能

「一度決算月を設定するど二度と変えられないのか」というと、実はそうではありません。一度決算月を設定したあとでも、自由に変更することが可能です。

たとえば「繁忙期に設定して、決算に関わる業務を行う時間がとれない」「ボーナスの前に設定してしまい、資金繰りが難しい」という場合は、会社に都合のよい決算月に変更するとよいでしょう。

ただ、変更する決算月は前回の決算期の1年以内にする必要があります。「7月に決算をしたあと、来年の9月に決算を変更する」ということはできないので注意してください。このケースで9月に決算を変更したい場合は「7月に決算・9月までに定款変更の手続きを行い、その年の9月(前回の決算から2ヶ月)に再度決算をする」ことになります。前回の決算から1年をこえての変更はできないことを覚えておきましょう。

大決算月を変更のやり方

株主総会で変更を決議する

決算月はあとからでも変更することができますが、社長の一存で変えることは不可能。決算月を変えるには「株主総会を開く」必要があるのです。

定款を変更する必要があるため、通常の決議とは異なる「特別決議」にて変更を決定します。この場合は、議決権株式総数の3分の2以上の賛成を得ることでようやく「決算月の変更が成立」となります。

また、このときの株主総会の議事録は提出が必須。忘れずに議事録をとっておく必要があるので注意してください。「決算月を変えたい」ときは、株主総会を開くことを考慮し余裕をもって変更を検討しましょう。

税務署に異動に関する書類を提出する

株主総会で決算月の変更が成立したあとは、必要書類を「管轄の税務署」「各都道府県の税事務所」「役所」に提出します。

必要となるのが「異動届出書」変更事項を記載の上、関係官庁へ提出してください。また、このときに「株主総会での議事録のコピー」も添付します。すべての届出を提出して、手続きは完了です。

決算月を変更するのは特別難しいことではありません。会社の不都合となる決算月を変更することでメリットが得られるのであれば、もちろんそのほうがよいでしょう。「今の決算月ではデメリットが多い」と考えている方は、変更を視野に入れてみてはいかがでしょうか。

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メリットを考えて決算月を設定しよう

会社を設立する際「決算月はどうしたらいいか」というのは大きな悩み。「できるだけ会社にとってよい選択をしたい」と考える方が多いでしょう。

決算月を設定する場合の考え方はさまざま。繁忙期と間をあけたり、支出が重なる時期から離したり。会社を運営するにあたって「一番メリットが大きい月」を決算月に設定するとよいでしょう。今回解説した「会社の決算月を決める際に考慮する点」をぜひ参考にし、決算月を考えてみてくださいね。

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