社会保険料の会社負担と個人負担の割合。社会保険の4つの柱とは

給与明細に書いてある社会保険料の負担は会社員だけではなく、雇用している会社もある程度負担することになります。その負担率は会社と会社員でどの程度違うのか、社会保険を加入していることでどのようなメリットがあるのか詳しくみていきましょう。

目次

社会保険料の会社負担と個人負担率

会社が負担する負担率は15%位

社会保険料は会社、個人、国で負担をすることになります。この負担する金額は負担率が決まっており、給料によって変動します。会社と個人の負担率は大まかに以下のように決まっています。会社が負担する保険料は以下の通りとなります。

☑健康保険4.985%

☑労働保険8.560%

☑雇用保険0.850%

☑労災保険0.300%

この4つの社会保険の合計が約15%ととなります。例としてあげると給料20万円の社員の社会保険料の会社負担は約2万6千円ほどになります。

社員が負担する負担率は14%位

社会保険料は社員も負担することになります。個人負担の社会保険料率は以下のようになっています。

☑健康保険 4.985%

☑厚生年金 8.560%

☑雇用保険 0.500%

☑労災保険 負担なし

この4つの社会保険料の負担率を合計すると約14%ととなります。例としてあげると、給料20万円の社員の社会保険料負担額は約2万5千円となります。

社会保険について

社会保険制度とは、社会保障の中の一つです。病気にかかった時の治療費の一部負担、老齢になった時の保証、何らかの理由で雇用から外され失業してしまった時、仕事中に負った怪我などの保証などの様々なリスクを従業員だけではなく、雇用主とともに負担を分け合っていく保険制度となっています。

社会人なら誰しもが社会保険に加入し、社会保険料の負担をしています。社会保険とは従業員が労働をするうえで、安心して働けるようにする大事な社会保障です。この社会保険料は、会社も負担することになります。

会社も社会保険料を負担している

会社は国の義務によって社会保険料の一部を負担しています。社会保険料を負担することは会社側には何も利点はありませんが、社員の生活を守るために、国の義務として負担しなければなりません。法人であるならば社会保険の加入は義務となっています。例外として雇用する社員が5人以下の小規模の個人事業であれば、社会保険料の負担の義務はなくなります。

会社を設立すると社会保険の加入は義務

法人として登録している会社なら、社会保険料を必ず負担しなければなりません。雇用する従業員がアルバイト、パートの場合は労働時間によっては支払いの義務があります。具体的にはアルバイト、パートの労働時間が週30時間以上であれば社会保険に加入できるため、その際は社会保険料を会社が負担することになります。また、従業員が501人以上の会社であれば、労働時間が週20時間以上で社会保険に加入しなければなりません。

社員の生活を守る為の保険

保険とは予測できないリスクなどに対して、社会を構成する人たちが支出しあい共通財産を作り上げ、個人を助け合う制度です。
社会保険は従業員と雇用主のための保険です。従業員と雇用主達は会社の財産を大きくしていくために協力し合うパートナーです。そのため社会保険は会社だけではなく、従業員個人も社会保険料を負担します。こうして負担を分け合うことで、従業員が怪我や病気などの突然のリスクに怯えず、安心して目的のために働けるようにサポートすることができます。

保険料は社員に支払われている給与額によって変動する

社会保険料は割合で決まっているため、社会保険料の金額は給与によるものとなります。会社の負担率は約15%となり、支払った給料に対して納付書が国から送られてくることになります。また従業員個人の自己負担となる社会保険料の金額は、給与の約14%となります。

会社負担の社会保険料の計算

給料30万円の会社員の社会保険料の会社負担額は、300,000(円)×約0.15(負担保険料率)=約3万9千円となります。

給料40万円の会社員の社会保険料の会社負担額は、400,000(円)×約0.15(負担保険料率)=約5万4千円となります。

従業員が40歳以上の場合は介護保険料も上乗せされます。

従業員個人負担の社会保険料の計算

給料30万円の会社員の社会保険料の個人負担額は、300,000(円)×約0.14(負担保険料率)=約3万8千円となります。

給料40万円の会社員の社会保険料の個人負担額は、400,000(円)×約0.15(負担保険料率)=約5万2千円となります。

社会保険の保険内容について

労働者が失業した場合に支払われる雇用保険

社会保険は大まかに4つの柱があります。

健康保険

従業員が業務とは関係がない病気や怪我をした場合、必要な補助を給付する保険制度です。国民健康保険との大きな違いは扶養している人物がいる場合の支援があるかどうかです。社会健康保険に加入している従業員に扶養されている人物がいれば、その人物も従業員の社会健康保険に加入することができます。その際に従業員の社会保険料が増えることがありません。

労災保険

従業員が業務と関係することや、通勤中に病気や怪我をした場合、必要な補助を給付する保険制度です。従業員が死亡した際でも、残された家族が対象の遺族年金などの補償もされます。

雇用保険

一時的に労働から離れてしまった従業員に対し、再び社会復帰ができるように給付を行う保険制度です。失業してしまった労働者に対しての給付金の支給や、再び働けるようになるための教育なども補償します。

年金保険

厚生年金のことを指します。高齢になったとき労働することが難しい場合、体に何らかの障害を負う事になった場合に給付を行う保険制度です。

従業員が失業した場合は雇用保険によって、失業保険による失業等給付が支給されます。支給される条件は雇用されてからの2年間のうち、雇用保険に加入していた期間が1年以上ある場合です。しかし、会社都合で失業した場合は雇用保険の加入期間が6ヶ月で給付が可能となります。また本人に就労の意思と能力、求職活動を行っていることも条件となります。

離職した際はハローワークに離職表を提出し、求職の申込みをしましょう。失業保険を申請した後に雇用保険受給説明会が行われるため、受給される方は必ず出席し失業保険の説明を受けましょう。この説明会のあとに一回目の失業認定日が決定されます。決定されれば離職から1年間失業等給付を受け取ることができます。

失業保険は次の就職が決まるまでの支援となりますので、再び雇用されると失業保険は支給されなくなりますので注意が必要です。

業務時間帯のけがや病気の為に支払われる労災保険

業務時間や通勤途中にけがや病気を負ってしまった場合は、労災保険から療養補償給付が支給されます。療養補償給付は、労災病院などの労災指定病院など決められた病院でけがや病気などが快復するまで自己負担無しで治療することができます。

療養補償の給付の領域

☑診察

☑薬、治療中の材料の支給

☑治療や手術の処置をした時の治療

☑自宅療養で治療中の管理、治療に関係する世話などのその他看護

☑病院やなどへの入院の費用。また、治療に関係する世話などのその他看護

☑治療のための移送費用

業務外の治療費を補填してくれる健康保険

業務中以外でけがや病気を負ってしまった場合は、健康保険により低負担で保険医療機関で療養することができます。社会保険の健康保険は2種類あり、「協会けんぽ」と「組合健保」があります。「協会けんぽ」と「組合健保」では保険料率が違い、「組合健保」のほうが保険料率が安価に設定されています。付加給付などが優秀な「組合健保」ですが現在は制度改正により、後期高齢者医療に保険料が流れるようになってしまったため赤字の状態が続いてしまい減少傾向にあります。そのため、今は中小企業などが加入している「協会けんぽ」が主流となっています。

国民年金と合わせて老齢年金を支給してくれる厚生年金保険

厚生年金は定年退職等をして、老後に働くことができなくなった場合に老齢年金が支給されます。老齢年金の受給は男性61歳、女性60歳以上からとなっていますが、厚生年金保険は70歳まで加入することができます。支給額は厚生年金保険を払っていた時の加入期間と平均給与によって違います。

☑平均給与30万円の人が40年厚生年金保険に加入していた場合、年間支給額は約103万円

☑平均給与40万円の人が40年厚生年金保険に加入していた場合、年間支給額は約137万円

65歳以上になると、これに国民年金の支給が乗ることになります。つまり社会保険に加入している時期が長い人ほど老後の年金金額が増えるという仕組みとなっています。

高齢者の医療費の自己負担の割合

高齢になると健康保険の自己負担額が変わります。後期高齢者医療制度により70歳以上になると健康保険料は減額されるため、自己負担額は大幅に軽くなります。

75歳以上の人は1割負担

75歳以上の方は医療費の自己負担割合が1割負担になります。ただし課税所得額が145万円以上あると3割負担になってしまいます。収入で言うと1人の被保険者の場合は約380万円以上、2人より多ければ約520万円以上の方が3割負担になります。医療費の自己負担割合の再計算は8月1日に行われますので前年3割負担だった方も、収入次第では1割負担に変わることがあります。

70歳から74歳までの人は2割負担

70歳〜74歳の方は医療費の自己負担額が2割負担になります。75歳以上の方よりも負担率は上がりますが、病院や診療所での外来の自己負担額は12,000円、入院は44,400円をが自己負担限度額になりますので、負担は現役の時よりも軽くなります。70歳になると各自治体から高齢受給者証を送付されるので、必ず窓口で提示するようにしましょう。間違えて3割で支払った場合でも後ほど差額分が支払われる可能性がありますので各自治体の窓口に問い合わせてください。

70歳未満の人は3割負担

69歳以下の方は前期高齢者医療制度に加入することになりますが、保険の負担は変わらず通常の3割負担となります。しかし65歳以上であれば障害などを理由に後期高齢者医療制度に加入が可能です。

65歳以上でも後期高齢者医療制度に加入できる障がいの範囲

☑身体障害者手帳(肢体不自由や内臓、免疫機能に生活するうえで支障がある人が対象) 1〜3級と4級の一部

☑愛の手帳(東京都に在住する知的障がいのある人が対象)1、2級

☑障害年金(病気や怪我などで働くことが困難な人が対象)1、2級

☑精神障害者福祉手帳(精神障害により生活が困難な方が対象)1、2級

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社会保険に加入しているおかげで従業員は安心して働ける

社会保険料は給料の額面の中でも負担が大きいものになっています。初めての給与明細を見てため息をついた方も多いのではないでしょうか。しかし、社会保険のおかげで業務中に何かがあっても安心して治療にあたれますし、老後も国民年金以外にも厚生年金などを受け取ることができます。

会社にいないその時間にも、健康保険で安心して病院に通うことができます。そして、その負担は従業員だけではなく、雇用している会社も分け合ってくれています。社会保険は会社と従業員をつなぐ大切な制度であり、社会保険料の金額以上に生活と心に安心をくれる制度でもあるのです。

今社会保険料を払っている人も、これから加入している人も社会保険で支援してくれる範囲をきちんと把握して、有効的に活用していきましょう。

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